最後のフロンティア「データセンター」へ向かうネットワーク市場
40GbE、ファブリック、OpenFlowを軸に進んだネットワーク革新
2011年12月22日 06時00分更新
2011年のネットワーク機器の市場は、40/100GbE製品の登場やファブリックという概念の浸透、さらにネットワーク制御技術のOpenFlowなどに大きな注目が集まった。いずれにせよ、最新技術はデータセンター向け製品に集中している。エンタープライズやSMB向け製品はコモディティ化の道をひた走っているため、データセンター向け製品は唯一お金になるネットワーク機器といえる。8月にデルがフォーステンネットワークスを買収した背景もこうしたところにありそうだ。
データセンターでは、ポート密度や省電力などエンタープライズと違ったニーズが存在しているが、なかでも重要なのは仮想化への対応だ。サーバー集約においては仮想化が一般的に用いられているため、仮想マシンの移動や通信など、データセンター内で閉じる通信が増えている。こうしたインターネットとエンドユーザー間で縦方向に発生する南北(ノース-サウス)トラフィックに対し、こうした仮想マシン間トラフィックを東西(イースト-エンド)トラフィックと呼ぶ。現在、データセンターのトラフィックの8割はこうした東西トラフィックと言われている。こうした東西トラフィックをさばくためのスイッチとして、前述した40GbE対応やファブリック、OpenFlowなどの技術がもてはやされてきたのだ。
40GbE対応のToRスイッチが続々投入
データセンターでの利用を見越して10GbEの後継として作られた40GbEは、2011年に入って対応製品が続々と登場してきた。今となっては、40GbEスイッチは珍しい存在ではない。
今までと異なるのは、40GbE対応の製品形態だ。従来、新規格の高速ネットワークインターフェイスは、通信事業者などで用いられるシャーシ型スイッチのモジュールとして実装され、その後エンタープライズ向けのボックス型スイッチに落ちていくというのがパターンであった。これに対して40GbEはシャーシ型よりもToR(Top of Rack)と呼ばれるボックス型スイッチでの実装が先に進んだ。
ToRスイッチはデータセンターでの利用を前提にした1/2Uの高集積型スイッチで、ラックの上部で物理サーバーを集約し、アップリンクに接続するという役割を持つ。ToRスイッチに40GbEがいち早く実装されてきたのは、ポスト10GbEの新規格がデータセンター向けの40GbEと、通信事業者向けの100GbEに分かれたという事情と密接に関わっている。データセンターの大容量伝送の需要が急速に拡大したことで、こうした40GbEの製品が矢継ぎ早に繰り出されてきたわけだ。
ファブリックとOpenFlowが知名度を得たこの1年
また、サーバーを集約したToRスイッチをメッシュ状に結んでレイヤ2のフラットなネットワークを目指す「ファブリック」という概念も急速に進展した。ファブリックの目的は仮想化やクラウドにネットワークを最適化することだ。複数ネットワークをIPレベルでつなぐレイヤ3のネットワークは仮想マシンが動き回るには不自由だし、制約が多い。設定も面倒だし、拡張性も信頼性も低い。こうした課題を解決するのが、いわゆるファブリックの概念だ。
シスコやジュニパーが独自のファブリック技術を投入したほか、SPBやTRILLなどの標準技術をベースにするブロケードやアバイア、HPなどのベンダーも存在する。特にVDXシリーズを展開するブロケードは、SANファブリックでの実績があるため、鼻息も荒い。すでに、さくらインターネットやアイネットなどの導入事例を作っているが、今後はより多くの事例が見られるかもしれない。
もう1つの大きなウェイブとなってきたのが、ネットワーク制御技術「OpenFlow」である。スタンフォード大学で生れたOpenFlowのコンセプトは、今まで単一ハードウェアに同居させていた経路制御とパケット転送という2つの役割を分離するというもの。コントローラーに対して管理者がルールを定義しておくと、OpenFlow対応のスイッチがコントローラーの指示に従ってパケットを転送するという仕組みになる。
担当も、INTEROPのときはあまりピンと来なかったのだが、仮想化対応や障害対策、保守にまで活用したNTTデータのデモを見て、そのメリットを納得した。また、OpenFlowを使えば、高価なデータセンタースイッチの代わりに、サーバーと安価なスイッチで仮想化対応のネットワークを構築できる可能性もある。データセンターのコスト構造にインパクトを与えることになるかもしれない。
OpenFlowへの取り組みは、NECが特に力を入れており、省エネサーバーなどの取り組みとあわせ、データセンターへの意気込みが伝わる。また、アリスタやエクストリーム、IBM(ブレードネットワークス)、デル(フォーステン)など必ずしもネットワーク機器大手とはいえないベンダーが、(大手に対抗すべく)積極的に肩入れしている点にも面白い。2012年も引き続き注目していきたい。

この連載の記事
-
第7回
ソフトウェア・仮想化
「ビッグデータ」が実現するビジネスの形とは? -
第6回
データセンター
外資系製品が当たり前の日本のIT市場は変わるか? -
第5回
TECH
標的型攻撃には敗北宣言?「出口対策」がキーワードに -
第4回
ソフトウェア・仮想化
クラウドは中小企業を見捨てないと思う -
第3回
データセンター
省エネとロケーションに焦点が当たったデータセンター -
第1回
サーバー・ストレージ
クラウドに溶解していくITのハードウェア -
ソフトウェア・仮想化
2012年、日本のITはどうなる? - この連載の一覧へ