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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ 第76回

ジョブズの否定した7インチタブレットこそが、クラウドのリモコンになる

2011年12月23日 09時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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Kindle Fire

週刊アスキー編集部から「Kindle Fire」を借りて触っているが、本体は思いのほかスマートで、アプリの動作も軽やかといえる。電子書籍の表紙をサラサラと送る感覚は、いままでのモノクロ電子ペーパーの端末になかった気持ちよさだ。


ちょうどいいサイズは
それでも7インチ

 ということで、iPhoneは3.5インチ、iPadは9.7インチ以上というジョブズ氏の意見に、わたしはとても同調している。どうせなら、アップルが今後考えるべきはiPhoneやiPadの外形すらも変更しないことだと、真剣に思っている。だがその一方で、電子機器の画面に関する議論はこれからどうなるのかというと、実は、ジョブズの否定した7インチ付近の画面サイズのあたりがとても興味深いと思っている。

 いま便宜的に、3.5インチ、7インチ、10インチの3つのカテゴリに分けてみる。たとえば、3.5インチの端末は片手でも使えるが、7インチ以上は両手がフリーの状態でないと使えない。歩いているときや、信号などで立ち止まっているときには、7インチはリュックやショルダーバッグで両手が空いている人しか使えない。持っているカバンを置けば両手がフリーになる場合もあるが、逆に電車の吊り革につかまらなければならないときは、片手がふさがってしまう。

 一方、これらの情報端末を、「すぐに出せる」、「カバンから出る」、「家に置いてある」など、すぐに使えるかという意味でのアベイラビリティとでもいうべきものも、需要なファクターだろう。そこで、男性を例に、カバンに端末を入れている場合やカバンの外側のポケット(カバンを開けなくとも取り出せる場所)に入れている場合、ジャケットのポケットに入れている場合、そしてYシャツやズボンのポケットの中にある場合に、それぞれすぐに出して使えるかを考えてみることにする(女性の場合はカバンから取り出すことが多いだろうが)。


 図1は、そうした関係を表にしてみたものだが、移動中に使いものになるのは、3.5インチだという結論になりそうな案配である。7インチも、電子書籍の閲覧などに関しては、片手で操作できるような機能が欲しいこともわかる。要するに、7インチを便利に感じるのは、ジャケットにリュックという都市型ビジネスマンのイメージだろう。あるいは、スマートフォンの画面でも情報に触れる量が足りないと感じているような、インフォメーションジャンキー(情報オタク)である。

 しかし、それでも7インチの端末が次々とリリースされているのは、より大きな市場を予感させているからだと思う。それは、以前書いた『「iPhone 4S」と「Kindle Fire」、どっちがスゴい?』で触れた領域とも関連することである。

 それは、これらのどの端末が、自宅のソファの上に置かれている『TIME』誌や『Sports Illustrated』誌のような存在になるのかというようなことだ。これは確かに、10インチが有利に見える。10インチよりも7インチのほうが一般的な書籍の大きさに近いのだが、それでも端末が十分に軽くなれば、ジョブズ氏が言う10インチがゴールなのかもしれない。しかし、問題は、クラウド上のさまざまなサービスやコマースなどに使う道具としてのスマートデバイスになるのはどれか? というような話なのだ。

 その場合、この領域のいちばん近くにいるのは、Kindle Fireだと市場は答える可能性がある。噂どおり、iPadの7.85インチ版が出てくるとしたら、この領域をねらっているのだろう。先日、楽天が買収したカナダのKoboも、電子ペーパー端末のほかに、7インチのAndroitタブレットを展開している。そこでは、コンピュータやメディアマシンの延長ではなく、「クラウドを使うリモコン」くらいの気軽さが求められているのではないか? そのときに、片手で手に取れる7インチという数字がやはりマジックになると私は思っている。

 電子機器についての議論が「画面サイズ」だけになってきているのは、タッチインターフェイスと無線通信とクラウドという要素をどの端末も備えるようなり、争点が次の領域へ進んだことを表している。それは、タブレットの領域が業界の予想以上に、これから急速に広がっていくことを予想させる。この領域に、日本はどのように取り組むのか?

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