金門島に興味を持ち始める中国人
しかし台湾人の対中意識はあまり変わらず
厦門と金門島は近いが、金門島にやってくる中国人観光客は近さとは裏腹に非常に少ない。金門島を検索キーにいろいろ調べてみると詳細が見えてくるが、中国大陸の目と鼻の先の台湾領であることから、金門島は軍事的に最前線となるキナくさい島なのである。
したがい軍事抗戦記念施設が点在し、今も軍人をよく見かける。日本人だからこそ厦門にしろ金門島にしろビザ不要で気軽に行けるが、中国人はいまだ島に入るのに手間がかかるのだという。
もちろん広い中国、金門島に興味を抱く中国人もいる。中国のネットでは金門島に関するニュースだけでなく、ブログや掲示板でのやりとりなどを見ることができる。
今でこそ中国のインターネット人口は5億人を超えたが、6年前の2005年の段階では1億人しかいなかった。その2005年の時点では、中国のサイトでの金門島記事では、雑感とはいえかなり気性の荒さを感じる愛国系コメントが多かった。
ところが最近の金門島関係の記事の反応を見ると、いくら愛国系サイトの投稿記事でもその反応は「金門島、行ってみたいねえ」的なほのぼのとした反応が多くなり、狼から羊へとすっかりおとなしくなったように感じる。
その理由のひとつに2008年に台湾が対中国政策を大幅に転換し、中国人観光客を受け入れる姿勢を見せたことをはじめ関係改善があったこともあるだろう。日本絡みでは、こと最近の中国のネットユーザーの日本記事への反応は反日的なコメントが随分と減り、むしろ憤青の反日的なコメントを叩く雰囲気になっているが、これが対台湾に対しても同じようになっているのではないか。
むしろ当時1億人に満たないネット利用者が現在5億人まで増えているため、昔ながらの愛国者が少数派となったのか、自然消滅しているのではないかと思うのだ。
一方で金門島台湾人のほうの対中意識はあまり変わっていないようで、目と鼻の先の厦門には行きたくない、ないしは厦門で品質の悪い中国製品を買いたくないという声は地元の人と話していて良く聞いた。中国製品を持っている人に限って持っているのは、中国製品の中でも下のクラスの山寨機だったりする。
厦門は中国の雰囲気があり、金門島は台湾の雰囲気があり、近接し中国語が通じながらもまったく異なる両地域の雰囲気を堪能できるのだ。
厦門も親日な雰囲気になってきているし、台湾本島から遠く離れた金門島でも本島同様に親日の若者が非常に多くて旅をしていて気持ちがいい。年末の予定が決まっていなくて、マイレージが貯まってて使い道がない人などは、一度厦門(アモイ)に向かい数日間で中国と台湾を両方体験してみてはいかがだろうか。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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