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アップル フィル・シラー上級副社長インタビュー

アップルは顧客の信頼のおかげで大胆に進化できる

2011年12月09日 12時00分更新

文● 林 信行

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顧客の信頼が未来への大胆な挑戦を可能にする

 最後に、Macについても聞いてみた。

 「アップルは2007年、電話を再発明すると言ってiPhoneを発表したが、今年そこで発明した成果が、それまでの主力製品だったMacに取り込まれるようになった」。

 OS X "Lion"のことだ。

 同OSでは、トラックパッドにマルチタッチの操作を加えることで全画面動作のアプリを切り替えたり、ピンチインやピンチアウトの操作ができる。

マルチタッチジェスチャーにも対応する、MacBook Air/Proのトラックパッド。iOS機器のように軽くタップするだけで、従来のクリック同様の操作が行なえる

OS X Lionから、全画面表示で利用できる「フルスクリーンアプリケーション」が取り入れられた

iOSを彷彿とさせる、新たなアプリケーションランチャー「Launchpad」

 「アップルでは、iPhoneやiPadの未来にも大きな可能性を感じているが、パソコンにもまだ別の用途があると思っている。ただ、これらの機器の間でまったく別の操作を提供するのではなく、それぞれの特徴を生かしながらも、必要な部分では、操作を統一する。これによって、ユーザーはiPadとMacの両方の機器の間を違和感を感じることなく行き来できる。

 どちらを使っていても、操作がユーザーの動作に自然になじみ、期待を裏切らないことから、ユーザーはそれを直感的だと思い、快適に使うことができる。これは、断片化をなくすためのアップルらしい工夫で、同様な操作の統一をWindowsとAndroid、あるいはWindowsとBlackberryの組み合わせに期待することはできない」。

 一方で、これまでのMac OS Xと、あまりにも大きく変わりすぎてしまったことで、仕事に使えないと敬遠するユーザーもいるが……。

 「そうした人も、いずれ時間が経てばOS X "Lion"を使い始めてくれるだろう。アップルは、時々、未来に向かって前進するために非常に大胆な変更を行なうことがある。そうした変化を受け入れられないユーザーもいるが、我々は顧客との間に良好な信頼関係を築けており、最近ではだんだんと信頼してもらえるようになった。

 たとえばMacBook Airでは、光学式ドライブをなくしてしまった。最初はそれを受け入れられないと思っていた顧客たちも、最近では光学式ドライブがなくともさほど問題にならないと理解し始めている。こうした大胆な変更はアップルしか行なえない。

MacBook Airは、光学式ドライブを搭載していない。敬遠されるどころか、その大胆な薄型デザインのファンは多い

 なぜなら、他のメーカーは、購入者が減ることを恐れるあまり、あえてその原因となりえる大胆な変更を飲めないし、実際にそうした大胆な変更をしてもユーザーがついてきてくれず失敗に終わってしまうことが多い。

 ところが、アップルでは我々を信じてくれる多くの優良な顧客に恵まれている。『アップルがこうだと言っているから、きっとそうに違いない』、『とりあえず試してみよう』。こうした非常に優良な顧客たちがいてくれるおかげで、我々は他社と比べても、大胆な挑戦が可能になっている。

 実際、この信頼関係のおかげで、我々が大胆なイノベーションに乗り出すペースは、かつてないほど加速している。iPadのような、これまでになかった新しい機器を出すことは非常に勇気があることだ。だが、我々はそれをやってのけた。MacBook Airのような新しい形のパソコンを出すことは非常に勇気がいることだ。しかし、我々はそれもやってのけた。そしてiCloudのような大掛かりなクラウドサービスを立ち上げること、これも非常に勇気がいることだった。しかし、我々は、それすらもやってのけた。

 こうして挑戦を続けてきた結果が、今、我々が出している最新製品のラインアップだ。これらの製品は、きっと日本の多くの人々にも、新しい一歩を踏み出すいいきっかけを与えてくれると思う」。


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