11月中旬にある開発者が詳細にレポートしたことから、プライバシーを侵害して、データを収集しているのではないかと大きな論争となっている「Carrier IQ」。
これまでの経緯については、本サイトの記事(関連記事)や他メディアを参照いただくとして、実は騒ぎになる前の11月3日にCarrier IQのマーケティング担当副社長、Andrew Coward氏にインタビューしていたので、以下にその内容をまとめる。Carrier IQのサービスの背景に、携帯事業者(オペレーター)や端末メーカー側に、情報収集のニーズがあることは否めなさそうだ。
個人情報ではなく
統計をとることにフォーカスしている
――まずはCarrier IQについて教えてください。
創業は6年前で、モバイルインテリジェンスを主な事業とする。携帯電話などモバイル端末とモバイルネットワークのエクスペリエンスに関する詳細な分析を行ない、これを顧客企業に手供している。
現在社員は約125人で、カリフォルニア州にある本社のほか、ボストン、ロンドン、ソウル、マレーシアに拠点を持っている。
顧客はオペレーターや端末メーカーで、オペレーターが自社で提供する端末に導入すると決定することもあるし、端末メーカーが出荷する自社製品に入れることもある。
――“モバイルインテリジェンス”について、具体的に説明してください。
スマートフォンやフィーチャーフォンなどの端末から直接情報を収集している。具体的には、どのぐらいの頻度で呼び出しが切れたり、通話が途中で切断されているのか、問題を起こしているアプリケーションはどれか、バッテリー持続時間などの情報で、これらは携帯電話とネットワークのエクスペリエンスで非常に重要だ。
背景として、これらの情報はなかなか手に入りにくく貴重という事情がある。ネットワークからもある程度の情報を集められるが、実際のエクスペリエンスがどうなっているのか、これは端末からの情報がもっとも正確といえる。
技術的には、ワイヤレスチップセット上で動くエージェント技術を導入する。さまざまな無線チップメーカーと協業しており、ソフトウェアそのものはユーザーの利用に影響を与えないように設計している。スマートフォンに限らず、ワイヤレスチップが入っているものならタブレットでも何でも対象にできる。
創業当時はスマートフォンはなくフィーチャーフォンだけで、どちらかというとネットワークの性能に関する情報へのニーズが高かった。アメリカでは多数のオペレーターがローミングで提携しており、ネットワークの共有も多いので、自社外のネットワークでのエクスペリエンスについて知りたいという要望があった。
もちろん、プライバシーには配慮しており、個人情報は収集していない。端末上でなにをしているのか、つまりコンテンツそのものではなく、数、つまり統計をとることにフォーカスしている。
繰り返しになるが、目的はどのぐらいの頻度で通話が切断したかなどのパフォーマンスに関する情報を把握することだ。われわれはこれらの情報をアグリゲーションし、携帯電話のエクスペリエンスを診断する。
――顧客名を教えてください。日本市場ではどうですか?
顧客名は公開していないが、Carrier IQのエージェントは世界で約1億6000万台の携帯電話に導入されている。顧客には主要メーカーが入っており、オペレーターもアメリカの主要なオペレーターのほぼすべてがわが社のサービスを利用している。
日本ではオペレーターの顧客はいないが、チャンスはあると思っている。日本は難しい市場なので、展開する際はきちんとオペレーションしていく。