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最新技術の実験場「石狩データセンター」のすべて第5回

NECのHVDC対応へのいち早い取り組みを高く評価

さくら田中社長が語る石狩データセンターの省エネとサーバー

2011年12月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元
記事協力●NEC

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2011年11月に、いよいよオープンしたさくらインターネットの石狩データセンター。外気冷却や高電圧直流給電システム(以下、HVDC)など最新技術を導入した石狩データセンターの省エネ施策とその根幹をなすサーバーについて、さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏に語ってもらった。

省エネからコスト削減を導く「石狩モデル」の誕生

 石狩データセンターのさまざまな省エネ施策は、すべてコスト削減につながっていると言って過言ではない。首都圏からはるかに離れた北海道という立地、冷涼な気候を活かした外気冷却の本格導入、そして電力効率を向上させるHVDCなどさまざまな省エネ施策を組み合わせたコスト削減のための方程式が、田中氏が開所式で言及した「石狩モデル」にほかならない。では、この石狩モデルはどのようにして生まれたのだろうか? 

さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏

 もともとさくらインターネットは、都市型データセンターを志向していた。「弊社の創業は京都の舞鶴だったのですが、都市部の方が回線が調達しやすかったので、大阪にデータセンターを借りていました。ところがデータセンターは大阪から少し離れた吹田市にあったんです。そこで、メンテナンスのしやすい大阪の中心部に移した経緯があります」(田中氏)とのこと。しかし、やはり都市部は土地代が高く、空いているラックの分までコスト負担するのは厳しかった。そこで、まずはラックへの集積密度を上げる施策を実施した。「集積密度を上げるために、自作サーバーを作ったり、当時NECから提案のあったラック前後からマウントできるサーバーを調達したりしました」(田中氏)。それとともにデータセンターの土地代自体を下げるべく、郊外型データセンターの研究も始まったという。

 研究を始めた2007年当時は資材が高く実現しなかったが、リーマンショック以降、金利が下がり、工事費や資材費も下落した。これにより、郊外型データセンター建設の機運はにわかに高まったという。その一方で、消費電力の増大も無視できなくなってきた。「Pentium4やXeonはすごい消費電力でしたが、Core 2 Duoなどに移行し、小型化が進んだことでラックあたりの電力消費が大きくなってきたんです」(田中氏)。この「地代と消費電力の削減」という命題が郊外型データセンターの計画を後押しし、さらに当時海外でも話題になっていた外気冷却と組み合わさった。これが石狩モデル誕生のバックグランドである。

 その後、郊外型データセンターの検討を重ねる中で、かねてからデータセンターの誘致を受けていた北海道の要請の元、田中氏は2009年12月に石狩の工業用地を視察する。「石狩の広大な土地を見たら、平面に近い建物で、ラックも電力もスケーラブルに増やせるという完成形がイメージできました。実際、数字もきちんとついてきましたので、ここに作ろうと思いました」(田中氏)とのことで、2010年6月に石狩データセンターの建設を発表し、2011年3月に着工。そして7ヶ月で竣工し、2011年11月の開所にこぎつけている。

HVDCのシンプルさは石狩データセンターのイメージに合う

 見学レポートの記事で紹介したとおり、石狩データセンターでは、省エネを実現するための施策がいくつも盛り込まれている。同データセンターの目玉でもある外気冷却のほか、受電した電力を変換するトランスを減らすためにサーバーラックへの送電方法を改良したり、送電ロスを減らし、段階的な投資での増設を可能にするため、UPSをラックに横付けするといった施策だ。そして、田中氏が「一言でいうと、僕が理想としているモノ『そのもの』」とまで言い切るHVDCの実証実験のインパクトは大きい。今回開所された石狩データセンターの敷地ではコンテナ型の設備が用意され、HVDCの実証実験が行なわれている。直流給電の効果や安全性はもちろんのこと、信頼性やメンテナンスまで検証するのがねらいだという。

石狩データセンターの敷地に作られたHVDCプロジェクトのコンテナ

 田中氏は、最初にHVDCのデモを見たときの印象について、「シンプルさというのか、機能美というのを感じました」と述べる。電力効率の向上はもちろんのこと、なにより田中氏を魅了したのが、UPSが不要になり、停電時のバッテリへの切り替えもスムースなHVDCでは信頼性を確保できるという点。「石狩データセンターについてはずっとコスト削減という面を強調してきましたが、信頼性についてはむしろ上がっている部分が多い。外気冷却を導入していても、ターボ冷凍機は入れているし、非常用発電機も、UPSも、生体認証などもすべて導入して、しかも安い。そのコンセプトからすると、シンプルで信頼性の高いHVDCはイメージに合いました」(田中氏)という。

 とはいえ、田中氏が理想として描いたHVDCでは、対応サーバーが大きな課題となった。電源設備をゾーン単位で変えられるモジュール構造になっているとはいえ、コスト的に見合わないと導入はおぼつかない。今回はPSラックという設備からDC380Vを集中電源で受け、それをDC12Vで各サーバーに給電している。このDC12Vに対応するサーバーを提供する数少ないベンダーの1つとして手を挙げたのが、データセンター向けサーバーでも高い実績を誇るNECである。

HVDCの実証実験で採用されているDC12V対応「Express5800/E120b-1」(ラック最上部)

集中電源でも安定して動くNECサーバーのレベルの高さ

 さくらインターネットは、以前からNEC製のサーバーをレンタルサーバーのメニューで導入していた。ただ、従来はコストと集積密度に優れた自社開発サーバーがほとんどで、メーカー製のサーバーは少数派だったという。しかし、仮想化対応のホスティングの割合が高くなり、省エネ効率の高いサーバーが増えてきたことで、メーカー製サーバー導入も増えているとのこと。サーバーの開発や調達を担当しているさくらインターネット 開発部 開発第一チーム マネージャー 加藤直人氏は、「NECさんは早い段階から省エネに対して非常に積極的でした。他社が追いついてきた現在でも、技術面でリードしていると思います」と話す。

さくらインターネット 開発部 開発第一チーム マネージャー 加藤直人氏

 田中氏も、NECのExpress5800サーバーについて「同じスペックなのに、NECのサーバーの消費電力はなぜか低く抑えられているんです。あと、ハーフサーバーをはじめとする小型化に関しても、NECさんは本気で取り組んでいましたね。スライドレールのなめらかな動き1つとっても、精度の高さを実感します」と絶賛する。

 今回のHVDCの実験では、DC12Vに対応したExpress5800/E120b-1を用いているが、もっとも評価が高いのは、集中電源でも安定して動くという点だ。加藤氏は、「12Vは電圧が低いので、電圧降下が無視できないし、複数台のサーバーで電源を共有すると『横流』という問題も起こります。その点、NECのExpress5800は台数を増やしても、安定して動いており、レベルが高いと思いました」とDC対応サーバーについてこう評価する。

 「今回の実証実験は、HVDC普及への花火を打ち上げたいという意義もあるんです」(田中氏)というチャレンジ精神に、結果を出してきたNECのExpress5800サーバー。今後も「最新技術の実験場」としての石狩データセンターで、田中氏の期待に応え続けて行くはずだ。

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