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仕事と生き方を変える、著名人の意見第11回

失敗の数々が強い共感に。

“ダメダメ”シーンのオンパレード。これって広告?!

2011年12月05日 09時00分更新

文● 佐藤達郎

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ビールで酔って、楽しく“ダメ”になる。そんな“ダメ”への共感を全面に押し出した。

 では、このテレビCMで、このビール会社は何が言いたかったのだろう? もちろん、ビールのシズル感は、超スローモーションでたっぷり見せられてはいる。だが、ビールのシズルを美しく見せたいのであれば、その大事な商品を“こぼす”シーンを描いたりはしないだろう。さらに、その大事な商品が、女性にかかってしまうシーンなど、まず描くことはないだろう。

 では、何が伝えたいのか?普通、こういう場合、タグラインと呼ばれる締めのコピーを読むと「あー、なるほど」と謎が解けるケースが多い。しかし、このテレビCMのタグライン(コピー)は、このカールトンドラフトが長年使っているMADE FROM BEER というもの。このコピーの意味は、ビールから造られたビール。意訳すれば、「ビールそのもの!」とか「ビールを越えたビール!」とかだろうか。いずれにしろ、何故、ダメダメ・シーンを集めたのか?の謎を解いては、くれない。

 このカールトンドラフトは、オーストラリアではかなりメジャーなビール。ボクもオーストラリアのビール事情に詳しいわけではないので想像の域を出ないが、たぶんかなり庶民的で親しみ感を売りにしているビールだと考えられる。

 そう考えると、この“ダメダメ”シーンの積み重ねは、「人は皆ダメな部分を持っている。我々はそんな“ダメ”な皆さんを愛している。そんな“ダメ”な普通の人にこそ、このビールを飲んでほしい。」というメッセージと考えることが出来る。普通の人の、ビールを飲んで楽しんでいる時の“ダメダメさ加減”に対する強い共感を、伝えたいことの根幹においた広告だと、考えることが出来る。

失敗が醸し出す、人間に対する深い愛情

 ボクはこのテレビCMが相当好きなのだけど、それは、人間に対する深い愛情を感じるからだ。もちろん、「スタイリッシュに飲むビール」であればこの表現は成立しないが、しかし庶民的なビールであれば、ブランディングとしても大成功なのではないか、と思う。

 人は失敗をいっぱいする。ビールをこぼすことだって日常茶飯事だし、ちょっと太めになってしまいTシャツから贅肉がはみ出してしまっている人だって、たくさんいる。実は、庶民的なビールが相手にしている人はそういう人たちだし、またビールが飲まれる時間、ビールが楽しまれる時間というのも、人々が特に、楽しく“ダメダメ”になる時間だろう。

 であれば、ビール・ブランドからのメッセージが、そういった人々に対する強い共感、そういったダメさへの強い共感を示すモノでも、なんら不思議はない。ボク自身かなりのビール好きだが、この広告はビール好きとしてのボクの感性に、怖ろしくフィットする。

自分の“ダメ”な部分も時に見せる。格好つけてばかりより、意外と好評かも。

 これって、あなた自身の生活にも、かなり参考になると思う。 いつも格好をつけ、あるいは常に真面目で、もしくはずっと堅苦しくて、ホンネを見せない人は、周囲からも距離を置かれる。自分を守るキモチの強い人は弱みを見せまいとしがちだが、時に弱みを上手に見せられる人の方が、周囲には評判が良かったりする。

 恋愛だって、良いところばかりを見せようと気負わない方が良い。もちろん、程度問題だったり、バランスだったりタイミングだったりはするものの、時にはダメなところを見せた方が、二人の仲は進む。周囲に城壁を巡らさず、弱い部分やダメな自分を見せるということは、相手に対して心を開いている、ということであり、相手も心を開き返してくれるきっかけにもなり得る。

 心を開いて欲しかったら、まずこちらから心を開くことだ。そして、心を開いていることのサインとして有効なものの一つが、自分の中の“ダメな部分”を、上手にさらけ出すことかもしれない。

【筆者プロフィール】 佐藤 達郎

 多くの国際広告賞審査員を経験した国際派クリエイター。海外広告に関する知見は日本でもトップクラス。長年の広告会社勤務を経て、2011年4月に多摩美術大学教授に就任した。

 Twitter( @hinasoyo )の4000人超のフォロワーには、恋愛論や仕事論など柔らかいツブヤキも人気。 ビジスパではメルマガ「“謎の広告”探偵団 - 世界の広告スキルを学んで、仕事を私生活を充実させよう! -」を執筆中。

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