※この記事は佐藤達郎氏のメールマガジン「"謎の広告"探偵団 - 世界の広告スキルを学んで、仕事を私生活を充実させよう! -」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
「これは広告なの?」と疑問を感じずにいられない“謎の広告”。しかしその手法には、最先端のアイデアが活きている――「教えて! カンヌ国際広告祭」著者で、「広告界で培った知見、広告の持つ技やスキルは、畑違いの仕事や私生活にも活かせる」というのが持論の佐藤達郎氏が、最先端の優秀広告を紹介し、そこから学ぶポイントを解く。
超スローモーション映像。ダーツやダンスや乾杯。描かれるのは“ダメ”シーンばかり?!
今回は、この6月に開催されたカンヌ・ライオンズ(旧称:カンヌ国際広告祭)のフィルム部門でゴールドを受賞したこんな広告を紹介しよう。
90秒のテレビCM。映像は全編、超スローモーション。流れている音楽は、勇壮なオペラ曲。描かれているのは、揺れる生ビールの超スローと、さまざまな“ダメダメ”シーンのオンパレードだ。
舞台は、大人数の集まっているビアパブのような酒場。ダーツをやっている若者の狙いは大きく大きくはずれて、的の真ん中どころか、脇の壁にドンッ!次は、ビリヤードの玉とキューのアップ。カメラが捉えるのは、なにげなくビリヤード台に置いた別の男の指が玉に当たりギャッと叫ぶシーン。
さらには、別の男が大きくジャンプして椅子に腰掛けるのだが、カラダがたるみ切って、Tシャツからはみ出た背中の贅肉がタプタプ揺れるシーン。今度は、女の子にモテようと奇天烈なダンスを一生懸命にクネクネ踊る男。
そして、3人分の生ビールを運んで来たのに、酔って躓いて、ガシャーンと落としてしまう男。ビールが自分にこぼれて来ているのに、楽しそうに笑っている女性。10人ほどで酔って飛び上がる出来上がっちゃってる男女。イエーッ!という嬌声が聞こえて来そう。だが、相変わらず、聞こえてくる音は、荘厳な歌曲。
合間に挟まれるのは、ビールグラスが乾杯されるクローズアップ。中のビールは美味しそうに揺れている。
こちらで見られます。英語はほとんど出てこないので、分かりやすいよ!
オーストラリアのビールのCM。バックに流れるのは荘厳なオペラ。逆にユーモラスに。
このテレビCMは、オーストラリアのビール「カールトン・ドラフト」のもの。 ビールを飲んでるごく普通の人たちの、“ダメダメ”でなおかつ楽しそうなシーンを、これでもかというほど超スローモーションで積み重ねていく。
バックに流れるのは、荘厳で勇壮なオペラの独唱。超スローモーションという映像手法自体が、スタイリッシュだったりアーティスティックだったり感動を呼ぶような内容のものに使われる傾向が強いと思うが、その場合その感動を盛り上げるように、これまた感動的な音楽が流れているわけだ。
だが、描かれているシーンそのものは、失敗の数々。いわば、“勇壮な失敗”の数々である。ビール酒場での“ダメダメ”シーン・コレクションとでも言えそうな構成になっている。音楽や超スローモーションという手法との落差によって、逆にユーモラス具合や微笑ましさが増している。
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