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単一ネームスペースで事実上無限の容量拡張が可能

オブジェクトストレージ「EMC Atmos 2.0」が日本上陸

2011年12月01日 06時00分更新

文● 渡邊利和

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11月29日、EMCジャパンは“クラウドに最適化されたオブジェクト・ベース・ストレージ”として「EMC Atmos 2.0」の販売および出荷開始を発表した。インターネット(HTTP)経由でのアクセスに特化したストレージで、各種サービスプロバイダやクラウド事業者などでの利用が想定される。

スケールアウト型のオブジェクトストレージ

 EMC Atmosは、ワールドワイドではすでに100社以上のユーザー企業で利用されているオブジェクトストレージ製品だが、製品刷新のタイミングで名称を新たに「EMC Atmos 2.0」とした上で日本国内でも投入されることになった。

 従来のファイルシステムによる管理ではなく、従来のファイルの内容に相当する“データ本体”と、ユーザーが付与するさまざまな“付加情報(メタデータ)”を組み合わせた“オブジェクト”という単位でデータを保存する。オブジェクトにはグローバルにユニークなオブジェクトIDが付与されて他のオブジェクトから識別されることになるので、従来の階層ディレクトリ型のファイルシステムによるファイル管理とは異なり、データが格納されているストレージ上の物理的な位置によって識別名(フルパス指定によるファイル名等)が影響を受けることはなく、異なるサイト上に置かれたデータも含めた巨大な単一ネームスペースを実現することも可能だ。

Atmosの概要

 オブジェクトへのアクセスにはHTTP上のRESTやSOAPを利用し、Webサーバー/アプリケーションサーバーを介さずにクライアントから直接アクセスすることも可能。逆に、SANのようなブロックアクセスストレージとして利用することや、NASのようにNFSやCIFSといったネットワークファイルプロトコル経由でのアクセスはサポートしない。同社にはスケールアウト型ストレージとしてすでに「EMC Isilon」があるが、オブジェクトストレージであり、異なるサイト間で単一ネームスペースが実現できる点がIsilonとの違いとなる。

EMCジャパン テクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ部 マネジャー 竹内 博史氏

 技術面からの製品説明を行なった同社のテクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ部 マネジャーの竹内 博史氏は、従来のWebシステムのストレージでの課題として、ストレージを追加する際にはWebサーバやアプリケーションサーバに対してマウントポイントの追加を行なう必要があるなど、サーバーとストレージが密接に結びついてしまうことに起因する問題があることを指摘した上で、Atmosでは「サーバとストレージを疎結合にできる」とした。

Atmosの技術面の概要

サービスプロバイダーやビッグデータ利用に最適

 提供形態としては、ラックマウント型の専用ハードウェアによるものと、“Virtual Edition”としてソフトウェア部分の見もVMware vSphere対応のバーチャルアプライアンスとして提供する形の2種類が用意される。専用ハードウェアではIAサーバ(Xeon 5500)と2TBの低電力SATA HDDを組み合わせており、低コストで大容量のストレージとなっている。拡張に関してはスケールアウト型のアーキテクチャーを採っており、最大容量の制約も理論上は存在しないため、必要に応じて単一ネームスペースのままで無制限の容量拡張が可能となる。ワールドワイドでの実績では数PBのストレージをAtmosで実現している例があるという。

 製品の位置づけについて説明した同社のマーケティング本部 マーケティング・プログラム推進部 ストレージ製品 マーケティング・マネジャーの中野 逸子氏は、Atmosを「ビッグデータ、クラウドに最適化された分散オブジェクト・ベース・ストレージ」だと説明した上で、主なユーザーとして「コンテンツリッチなWebサイトを運営するインターネットビジネスや一般企業・機関」「クラウドストレージサービス(IaaS)を提供するサービス事業者」「大量のデータを保有する企業・機関」を想定しているとした。

EMCジャパン マーケティング本部 マーケティング・プログラム推進部 ストレージ製品 マーケティング・マネジャー 中野 逸子氏

 なお、販売価格は個別見積もりとなっているが、中野氏は実際のユーザー事例では従来型のストレージを利用する場合との比較でシステムコストが30%程度削減できた例があることなどを紹介し、従来型のストレージに比べて低コストでシステムを構築できるとしている。

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