AMD A/Eシリーズの次世代である「Trinity」だが、すでにサンプルも出ているようで、今のところ順調に進んでいる。一応図では2012年6月あたりと書いている。Trinityではプラットフォームの変更が必要で、したがってマザーボードベンダーの対応がある程度進まないと、製品を出しても意味がない。ところが、まだ新プラットフォーム対応製品の情報が、マザーボードベンダー各社から全然出てきていないあたりからの推定である。
早ければ2012年早々の「CES 2012」辺りで、いくつかのベンダーから試作品が並び、3月に開催されるCeBIT 2012では大量に展示されることになるだろう。マザーボードベンダーを急がせれば、4月あるいは5月の出荷も可能だろうが、普通に考えれば6月リリースなのではないかと思われる。
Trinityの内部構造は、基本的にはPiledriverコアベースの4コア/2モジュールに、Radeon HD 7000シリーズのGPUを組み合わせたものとなる。3次キャッシュがあるかどうかは不明で、「ない」という情報もある。これに組み合わせるGPUは、VLIW4構成のRadeon HD 7000シリーズである。基本的には現在のRadeon HD 6900シリーズのコアを継承したものだが、シェーダーの構成や動作周波数などはまだ不明となっている。
このTrinityからSocket FM2が利用される。FM2が利用される最大の理由はグラフィック周りの機能拡張で、HDMI 1.3やマルチディスプレー出力機能「Eyefinity」のサポートが追加される。HDMIはともかく、Eyefinityに関しては物理的に出力の配線を増やす必要があり、既存のSocket FM1では対応できなかったようだ。そのためチップセット自体は、既存のSocket FM1用のものでも利用可能という話である(もちろんUSB 3.0の対応などを別にした話)。
このTrinity、今の話では引き続きA8/A6/A4/E2というグループ分けを引き継ぐもようだ。モデルナンバーは4000番台になると思うが、最終的には蓋をあけてみないと……というのは、AMD FXと同じである。図にはハイエンド製品のみを示したが、こちらも2コア/1モジュールの派生型製品が用意されるだろう。ただ、さすがにA6-3500の3コアに関しては、後継製品は出ないのではないかと思う。
28nm Wichitaはキャンセル?
Radeon HD 7000搭載Zacate 2.0の噂が
最後がローエンドである。現在は「Bobcat」アーキテクチャーを搭載した「Zacate」ベースの「E-350」と「E-450」および、図では省略したが1コアの「E-240」が、Mini-ITXマザーなどの形で出荷されており、それなりに愛用されている。
この後継としてAMDは、28nmプロセスを使った「Wichita」が予定されていたが、「Wichitaがキャンセルされた」という話がここ数日飛び交っている。筆者のソースでは真偽が不明が(どちらとも確認されていない)、ありそうな話だという気はする。
結果として、AMDは急遽「Zacate 2.0」なる新コアを、TSMCの40nmプロセスで開発を開始したとしている(WichitaはGLOBALFOUNDRIESの28nmだった)。このZacate 2.0は、CPUコアは既存のままで、GPUのみRadeon HD 7000シリーズに置き換えたという話だ。しかし問題は、そのRadeon HD 7000シリーズのローエンドが引き続きVLIW5のRadeon HD 6000シリーズを継承している(再ブランディング)という話であり、何のことはない「単なるE-450の動作周波数向上版ではないか?」という疑問がぬぐえない。
少なくとも今の時点では、このZacate 2.0なるものがVLIW4構成になった、という話は確認できていない。そんなわけで、仮にこのZacate 2.0なるコアの製品が登場しても、それほど性能改善にはつながらなさそうだ。またZacate 2.0の次に関しては、今のところ情報がない。

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