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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第128回

AMD FXはVishera、AMD AはTrinityとなる2012年のAMD

2011年11月28日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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AMD Aシリーズの後継は
KomodoがキャンセルされVisheraに

AMD A/Eシリーズの2011~2012年ロードマップ

 そんなわけで、図では暫定的に“2012年3月”と書いているが、特にAMD A/Eシリーズの周波数向上版に関しては、後述の「Trinity」の出荷タイミングが関係してくる。もしプロセスの熟成が思ったように進まなければ、これらの動作周波数向上はキャンセルとなり、むしろTrinityシリーズの導入を急ぐかもしれない。この辺はプロセスの熟成がある程度可能になる時期によるだろう。

 ただAMD FXに関しては、次期製品の「Vishera」がだいぶ後になりそうなので、1回か、場合によってはもう2回くらいは製品のアップデートがありそうだ。ひとつは先に述べたFX-8120の低消費電力版で、もうひとつは現行「FX-8150」の動作周波数向上版である。元々FX-8170というプランは以前から聞こえてきており、今も「登場時期の見直し」という話はあっても、FX-8170自身が消えたという話はない。こちらはプロセスの熟成がある程度進んだ時点で出荷されるだろう。

AMDデスクトップ向けCPUのラインナップ。ただしKomodoはVisheraに変更された

 問題はその先である。AMDは8月頃、Zambeziの後継製品である「Komodo」の開発をキャンセル。新たにVisheraコアの開発をスタートした。といってもCPUコアそのものは、「Piledriver」と呼ばれるBulldozerの後継をそのまま利用する。

 KomodoとVisheraの最大の違いはプラットフォームで、Komodoは「Socket FM2」になる予定だったが、一方Visheraは「Socket AM3+」を継承する点が異なる。Socket FM2は元々、PCI Express 3.0(以下PCIe Gen3)とUSB 3.0をチップセットに内蔵し、CPUとの接続はPCI Express 2.0をベースにした「A-Link III」を予定していた。またPCIe Gen3のコントローラーをCPU側に搭載しており、グラフィック用のPCIe Gen3はCPUから出る構造だった。

 これに対してVisheraは、現在のZambeziと同様にCPU側にはCPUコア(CPUモジュール)と3次キャッシュ、それにメモリーコントローラーだけを搭載して、チップセットとはHyperTransport Linkで接続される。この変更は、ようするにAMDがPCIe Gen3のデスクトップにおけるサポートを中止したことに起因しており、これによってSocket FM2用のチップセットは新規に作り直しになったのを受けて、「ならば別にSocket FM2世代でAMD FXとAMD A/Eシリーズとの統合をしなくてもいいや」と、引き続きSocket AM3+を使い続ける決定をしたことによる。

 そんなわけで、プラットフォームは既存のSocket AM3+を維持したまま、Vishera世代のCPUが利用可能となる。コアそのものはFX系列のTrinityで先行して採用されるし、Komodoからの変更はコア部ではなく周辺回路なので、開発そのものはそう難しくないとは思う。とは言っても一応は作り直しなので、それなりに時間はかかる。ロードマップ図では2012年9月登場と予想したが、もう少し早い7月とか8月にリリースされる可能性もある。AMD自身もまだ、どの程度で出荷できるかの正確な情報を持っていないようだ。GLOBALFOUNDRIESのプロセス次第、という部分が大きいからかもしれない。

 このVishera世代、「AMD FX-8200」シリーズといった名称になるだろうと言われているが、毎度おなじみ直前の方針変更があり得るので、最終的にはふたを開けてみるまでわからない。コア、というかモジュールの性能は、Bulldozer世代と比べると10~15%性能改善しているとしているが、このうちIPCの改善がどの程度実現されるかは、正直さだかではない。

 現在のBulldozerはまだ荒削りな部分が散見されるので、根本的なアーキテクチャー変更をしなくても、細かなチューニングを積み重ねるだけで数%のIPC向上は簡単に実現しそうに思える。そして前述したプロセスの熟成による消費電力削減、もしくは消費電力一定のままの動作周波数向上が実現できれば、10~15%という性能改善はそう難しくないように思える。

 図には描いていないが、このVishera世代でも当然6コア、あるいは4コアの派生型製品が投入されるだろうし、動作周波数を引き下げた廉価版の製品も同時に発売されるのは間違いないだろう。ちなみに、元々のKomodoでは最大10コア/5モジュールの製品が予定されていたので、図もこれを継承しているが、Visheraでこの構成をサポートするかは不明である。8コア/4モジュールのままにして、動作周波数を引き上げる方向に進むのではないか、という気もする。

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