消費電力は6000W、“ヤシマ作戦”状態に
―― いちばん難しいところはどこでした?
Aono 大変な順番に言うと、まず場所を見つけることです。次が荷物を搬入すること。搬入から映像を映すまで、トラブルがなければ10時間くらいでいけます。その次に大変なのが、プロジェクターをちゃんと認識させることですね。
―― 配線が既にとんでもないことになってますもんね。
Aono ATXのマザーボードにグラボ(グラフィックボード)4枚差しで13画面を出しているんですが、それがなかなかうまく認識してくれないことがあるんです。今朝も1台認識してくれなくて。
―― それだけやっていると消費電力もすごそうです。
Aono 大体6000Wくらいですね。
―― 6000W! それはバッテリーで?
Aono いや、すべてコンセントから供給してます。
―― なんだかヤシマ作戦※みたいですね。
Aono たしかに。この状態もヤシマ作戦を彷彿とさせるような感じです、1系統15アンペアしかないので、それを5系統のコンセントから引っ張ってますから。
※ ヤシマ作戦 : アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する作戦名。大量の電気が必要な武器「ポジトロンライフル」を使うため、日本中の電力を集めてくるというもの
―― 透明スクリーンの素材はアクリルですか?
Aono このくらいのサイズのもので、透明で、手軽に手に入りそうなもの、と考えたらアクリル板しかないんです。縦方向に光を拡散させるため、表面にこまかい横方向の線の線を入れる必要もあって。ガラスとかだと加工も難しいでしょうし。
―― レコードみたいに細い溝が彫ってあるイメージですかね。
Aono 今の表面処理の方法に行きつくまでも大変で……スクリーンを透明にしたまま、光を縦に拡散させるのが難しくて。
―― 最初はこうじゃなかったんですか?
Aono 「レンチキュラーレンズ」という、お菓子のオマケにある立体シールなんかで使われているものを使ってみようかなと思ったところもあったんです。が、「いや、やっぱ透明じゃないとダメだ」と思い直して。
―― 本物の立体映像を見せて、ギャフンと言わせてやりたいと。
Aono それもあるんですが、透明じゃないなら、心のライバル・NICTさんの方式でいいじゃんというところもありまして。後はひたすら表面処理との戦いでした。あの面積をひたすら自分で加工したので……。
―― 人力!
Aono しっくり来る大型の機械もなかったので、ひたすら自力で加工してました。
―― ものすごく手動ですね。
Aono 手動です、完全に。丸一日かかりますよ。やってることはホントにローテクなんです。頭の中ではすごいハイテクなことをやってるんですけど。
プロジェクター23台を制御しているマシン3台
■ メインマシン(愛称:Luce)
CPU:Core i7 980X (3.33GHz→OC4.0GHz)
GPU:Radeon HD5770×3、NVIDIA GeForce 9600GT
・USBグラフィックアダプタ×2と合わせて13画面出力
・グラフィック周りはFVP用の特別編成
(平常時はNVIDIA GeForce 470GTX)
メモリ:4GB×6
ストレージ:SSD(128GB)、HDD(2TB)×5(RAID1×2+1台)
マザーボード:ASUS RAMPAGE III Extreme
CPUクーラー:Noctua NH-D14
ケース:NZXT PHANTOM-W
電源:SCYTHE SPCR2-1000P(1000W)
構成価格:約35万円
■ サブマシン1(愛称:Ombra)
CPU:Core i7 2600K(3.4GHz→OC4.2GHz)
GPU:NVIDIA GeForce 470GTX、Radeon HD6750、HD5670
・オンボードDVI,VGAと合わせて9画面出力
メモリ:4GB×2
ストレージ:HDD 2TB
マザーボード:ASUS P8Z68-V PRO
CPUクーラー:SCYTHE KABUTO SCKBT-1000
ケース:NZXT PHANTOM-B
電源:SCYTHE SPCR2-1000P(1000W)
構成価格:約15万円
■ サブマシン2(愛称:前の)
パソコン工房BTO品
CPU:Core 2 duo E8500
GPU:Radeon HD6750
・USBグラフィックアダプタ×2と合わせて4画面出力
メモリ:1GB×4
ストレージ:HDD 320GB
構成価格:購入当時の価格も合わせて約10万円