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第2回メディア横断企画「グローバルICT討論会」の楽しみ方 第7回

グローバル化・クラウド化へ ICTベンダーの反応は?

グローバル展開を加速する企業を高品質・高信頼のクラウドで支える

2011年11月28日 10時00分更新

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日本企業の海外進出が加速している。新しい拠点を素早く立ち上げるためには、そのためのICT環境を用意する必要がある。また、生産性向上や営業力強化といった観点でも、ICTに求められることは多い。こうした課題に対する解決策として、クラウドへの関心が高まっている。こうした企業の要望に対して、NTTコミュニケーションズは「グローバルクラウドビジョン」を策定。顧客企業に最適なソリューションを提供するための体制整備を推進している。その取り組みの具体的な内容について、ITRのシニア・アナリスト 舘野真人氏が聞いた。

グローバルクラウドビジョンを推進し
顧客の多様な経営課題に対応

舘野 コスト削減だけでなく、ビジネスを変革し加速するための手段としてクラウドが注目されています。そんな期待やニーズに対して、NTTコミュニケーションズはどう対応しているのでしょうか。

金井 当社は2011年10月に、「グローバルクラウドビジョン」を策定しました。その骨子は、当社の強みであるネットワークやデータセンター、サーバー、アプリケーションまでをワンストップ、エンド・ツー・エンドで「グローバルシームレス」に提供することです。さらに付加価値の高いサービスを世界に先がけ展開するために、ITリソースの仮想化だけでなく最新技術を積極的に取り込み、データセンター内とデータセンター間のネットワーク仮想化にも取り組みます。

舘野 「グローバルシームレス」については、どのようなサービスを通じて実現するのでしょうか。

NTTコミュニケーションズ 経営企画部 サービス戦略担当 担当部長 金井俊夫氏

金井 クラウド対応のデータネットワークサービス「Arcstar Universal One」は、その代表的なものです。Arcstar Universal Oneの対象エリアは世界159カ国。国内外をシームレスにつなぐICTインフラを提供することで、お客様の海外展開に伴うニーズに迅速に対応することができます。Arcstar Universal Oneの特長はグローバルで高信頼、広帯域のデータネットワークサービスを提供できること。それを支えているのが、日米間やアジア地域に敷設した高速・大容量の通信ケーブルと世界に126拠点を展開するデータセンターです。これらの強固な物理インフラの上で、シームレスなネットワークサービスを実現します。Arcstar Universal Oneは、弊社のグローバルクラウド基盤にあらかじめ直結されており、クラウドサービスへのアクセス料金はかかりません。また、バックアップ回線を標準装備している点も、特長の一つ。回線の二重化により、お客様の安心感も高まります。

舘野 ネットワーク仮想化の話もありましたが、これについては、どのようなサービスを提供するのでしょうか。

金井 仮想ネットワークは、データセンター内への導入だけでなく、データセンター間へも組み込んでいきます。仮想ネットワークを活用したサービスは、2012年夏をめどにリリースする予定です。これは従来から提供している「Bizホスティング」を更に発展させたイメージです。仮想ネットワークで複数のデータセンターをつなぐことで、あたかも1つの大きなデータセンターとして機能させることができます。つまり、お客様のビジネス拡張に対して、スケーラブルで柔軟なリソースの手当てが可能になるということです(図1)。

図1 NTTコミュニケーションズの仮想データセンター。データセンター内、データセンター間を仮想ネットワークで結ぶことで、ユーザー企業はあたかも1つのデータセンターとして活用することが可能。これにより、高度な拡張性を実現することができる

舘野 同時に、BCP対策としても有効ですね。どこかのデータセンターから別のデータセンターに、システムやデータの移行が容易になるということでしょうか。

金井 特に日本では、BCP対策のニーズが大きいと思います。例えば、災害やパンデミックが東京に発生した場合、グローバルでのネットワークやサーバーの稼働状況やサービスの運用状況を一元的に見える化し、現場に出向くことなく遠隔から対応できれば便利です。そこで、当社は「見える化」や統合的な管理や制御を行うためのカスタマーポータルを整備しています。

舘野 ユーザー企業から、クラウドは目に見えないから不安という声を聞くことがよくあります。クラウド内部の情報を提供するポータルがあれば、見えないという不安を払拭できるでしょう。その意味でも、有効なサービスですね。

グローバルで低コスト・セキュアな
コミュニケーション環境を提供

ITR シニア・アナリスト 舘野真人氏

舘野 日本企業のグローバル化に対するニーズも最近は様変わりしています。特にローカル市場で素早くビジネスを展開したいと考えている企業にとっては、インフラだけでなくその上で提供されるアプリケーションにも、大きな関心を寄せていると思います。

金井 先ほど触れたように当社では、ICTインフラからアプリケーションまでをワンストップで提供することを目指しています。その中で、アプリケーションは重要な部分を占めています。その際、汎用的なものは当社が用意し、業界や企業の状況によって必要とされる業務アプリケーションは、パートナー企業との協業も含めて提供する考えです。

舘野 汎用的なアプリケーションとしては、どのようなものがありますか。

金井 代表的な分野がコミュニケーションです。当社は「Arcstar ユニファイド・コミュニケーション・サービス」において、2011年8月にグローバルな内線通話を実現する「UCaaS(ユーキャス)プラン」の提供をスタートしました。ここにはIP電話に加えてボイスメールなどのメッセージング、電話・ビデオ・Webを用いた会議機能などを搭載。しかも、固定電話やPC、スマートフォンなどの多様なデバイスを使うことができます。今後は、グローバルなコールセンター向けのサービスも提供する予定です(図2)。

図2 Arcstar ユニファイド・コミュニケーション。グローバルなコミュニケーション環境を提供するユニファイド・コミュニケーション・サービス。「SIP Trunkingプラン」と「UCaaSプラン」が加わり大幅に利便性が向上。国内外のシームレスなコミュニケーションをサポートする

舘野 企業が新しい地域に拠点をつくる際、まっさきに必要とされるのがコミュニケーション機能でしょう。Arcstar ユニファイド・コミュニケーション・サービスは、そんなとき、最初に利用されるサービスになるかもしれません。

金井 ぜひとも、そうありたいと思っています。また、Arcstar ユニファイド・コミュニケーション・サービスの中では、海外において低廉な価格で外線の発着信を行うサービス「SIP Trunking(シップトランキング)プラン」の提供エリアも拡大しました。UCaaSプランとSIP Trunkingプランを併用することで、より利便性の高いサービスを提供できる。これは通信事業者ならではの付加価値です。コミュニケーションコストを削減できるだけでなく、業務の生産性の向上などにも役立つと考えています。

舘野 国内外のコミュニケーション環境が改善すれば、本社と現地法人の間、あるいは現地法人間のやり取りも増えるでしょう。ビジネススピードの向上やワークスタイル変革などにも、効果が期待できそうですね。

金井 ワークスタイル変革という観点では、2011年10月にリリースした「リモートオフィスソリューション」も有効です。ユーザーは自宅や外出先から社内システムに接続し、オフィスと同様に業務を行うことができます。また、モバイルネットワークとスマートフォン端末、050発信のIP電話アプリをまとめて提供。これにより、グローバルでセキュアなリモートオフィス環境を実現します。

舘野 今後のサービス強化の方向についてうかがいます。

金井 現在、クラウドを核としてネットワークからアプリケーションまでのラインアップを増やしていますが、特にコミュニケーション分野では積極的にサービスの強化を推進していきます。また、クラウドを安心して使ってもらうためには、セキュリティの確保も欠かせません。今後ますますスマートフォンやタブレットPC等、端末は多様化し、外出先などからのアクセスが増えるでしょう。こうしたユーザー環境の変化に対応し、クラウド環境そのものをセキュアに保つ必要があります。

舘野 今後、クラウド上のビジネス活動はますます活発化します。それを支えるICTインフラの重要性も高まりそうですね。

金井 物理インフラの品質と信頼性については、お客様の当社への期待の高さを感じます。強固な物理インフラがなければ、クラウドがビジネスに浸透することもないでしょう。そこで、当社は海底ケーブルやデータセンターに対する投資を増強中です。それは通信事業者としての責務であり、また、通信事業者ならではのクラウドサービスを提供するための基盤であると確信しています。

※2011年11月現在

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