3G回線普及の壁になっているもの
さて、ベトナムの最新の情報通信白書によれば、2010年末での携帯電話契約件数は1億1570万件で人口に対する普及率は127.68%。うち、3G回線契約件数は6.6%にあたる767万件となっている。
ベトナム人は特に大都市部において、10代の頃から携帯電話を持つようだ。中国のような一人っ子政策はベトナムにはないため、甘やかされることなく育てられる。このため、買ってもらえる携帯電話は高いものではなく、また収入が入るようになっても中国人に比べて給料比で無理ない価格の携帯電話を購入しがちだ。値段にして1万円前後(250万~300万ベトナムドン)の携帯電話が人気なようだ。
ベトナムで注目されるのが若年人口の比率で、15歳未満が26%、15~24歳までが20%、つまり24歳までで全人口の46%を占める。直近のインターネット市場を引っ張る15~24歳のうち、携帯電話によるインターネット利用者は、ニールセンが48%、ベトナムのリサーチ会社「Cimigo」が38%と試算している。またニールセンはさらに35%が近いうちに利用すると予想する。
Cimigoによれば、携帯でのインターネットの利用用途は「ニュース(76%)」「検索(66%)」「チャット(43%)」「SNS(34%)」「アプリのダウンロード(32%)」「Eメール(27%)」「音楽視聴(26%)」「画像の転送(26%)」「オンラインショッピングサイト訪問(12%)」「動画視聴(9%)」「オンラインゲーム(8%)」となった。
音楽やゲームをはじめとして、さまざまなコンテンツを母艦となるPCや携帯電話でダウンロードしようとするから、microSDカード搭載で音楽プレーヤーやカメラやゲームやWebブラウジングの各機能が搭載された携帯電話が人気だ。
3G携帯電話の価格が高いことが3G回線普及の壁とは言われているが、前述のようにカフェなどにバイクをピットインしたときにWi-Fi経由で使えることから、2Gのスマートフォンが普及するのではないか。
バイク文化でない中国ですら3G対応のスマートフォンに2GのSIMカードを挿し、Wi-Fiを利用しているのだ。さらにベトナムではアクセスできない「Facebook」の代わりに「Zing Me」などの国産SNSサービスが人気となり、アプリ化もされている。
その状況は中国におけるネット検閲の芽が出始めた段階とよく似ているが、とにかくスマートフォンを利用したくなる環境にはなっている。
一方でベトナムは中国的文化が残っているとはいえ、ベトナム人は中国人の若者ほどお金を散財する習慣がないように感じる。スマートフォンで通話時に2G、データ通信時にWi-Fiを利用する方法か、通話に割り切って白黒ケータイを使うか、ベトナム人の携帯電話の利用用途は2分化するのではないか。
中国ではIT音痴な中高年向けの簡単ケータイが売れている。ベトナムでも時期が来ればそうした携帯電話もブームとなるかもしれない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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