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VMware vForum2011基調講演で見えた仮想化技術

一度設定すればOKなインテリジェントなインフラとは?

2011年11月15日 06時00分更新

文● 渡邊利和

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11月8~9日の2日間、ヴイエムウェアはプライベートイベント「vForum 2011」を開催した。9日の午前に行なわれた基調講演では、米本社の上級副社長のラグー・ラグラム氏が新製品や新機能の紹介などを行なった。ここでは基調講演の内容から新製品や技術の概要を振り返ろう。

クラウドに求められる技術を着実に実装

 米ヴイエムウェアの仮想化/クラウドプラットフォーム事業担当 上級副社長のラグー・ラグラム氏は、講演の冒頭でまず同社がこれまで達成してきた技術的な進化を振り返った。

米ヴイエムウェアの仮想化/クラウドプラットフォーム事業担当 上級副社長のラグー・ラグラム氏

 初期にはごく限られたコンピューティングリソースしか活用できなかった仮想サーバーも、現在では最大で32仮想CPUと1000GBのメモリを割り当てることが可能になり、ホスト当たりのI/O性能は100万IOPSに達している。こうした技術面での進化が達成された背景にある目標を同氏は「すべてのアプリケーションの仮想化」だと明かした。同氏は「仮想化プラットフォームはすべてのアプリケーションに対応する必要がある」とし、負荷が重くプロセッサーの処理能力を大量に消費するアプリケーションや大量のメモリを必要とするアプリケーションに対応していくために、ハイパーバイザが扱えるリソース量を拡大し続ける必要があるわけだ。この結果、現状で想定されるほぼすべてのアプリケーションに対応することができるまでに至ったと同氏はいう。

 つづいて同氏がヴイエムウェアが次に目指す方向としてまず挙げたのが「インテリジェントなインフラの実現」だ。同氏は“インテリジェント”の意味を「一度設定すれば操作の必要なし」と表現した。具体的には、「VMがつねに必要なキャパシティを有している」ということだという。つまり、仮想サーバーの処理能力が不足した場合にはインフラが自動的に処理能力を増強してくれる、といった意味になる。このために、最新のvSphere5では“Auto Deploy”や“DRS”(Distributed Resource Scheduler)といった機能が実装/強化されている。

 また、適切なパフォーマンスの保証(QoS)も重要だ。プロセッサーの処理能力に関しては、当初からVMごとに仮想CPUの割当量を調整することでアプリケーションの重要度に応じた優先度を設定できていたが、同様の機能がネットワークI/O(Network I/O Control)やストレージI/O(Storage I/O Control)に関しても実現された。これにより、優先度はさほど高くはないものの大量のネットワークI/O/ストレージI/Oを発生させるVMが優先度の高いアプリケーションの処理をブロックしてしまうことがなくなる。

 同社では、サーバーハードウェアの仮想化レベルをより高めることに注力しており、現在は特にネットワークとストレージの仮想化に関して積極的な開発を続けていることも紹介された。ストレージの分野では、ストレージプールを作成し、ポリシーに応じて自動的に配置を変更したり、動的なリソース再配置を実現する“Storage DRS”も利用できるようになった。Storage DRSは、内部的にはStorage vMotionによるデータコピーの機能を利用しており、その上位にストレージのパフォーマンスのモニタリングなどの機能を加えた形になっている。

 また、ストレージベンダーとの協業により、ストレージ側でその特性をハイパーバイザーに通知し、vSphereはその情報に基づいた制御を行なう、という仕組みも用意された。こうした機能を活かすために、VMに対してストレージを割り当てる際に従来のようにストレージの空き領域を直接指定するのではなく、ポリシーを指定すればそのポリシーに応じて自動的に適切なストレージ領域が割り当てられる抽象化されたインターフェイスも提供されるようになった。この結果、システムの設定を行なう運用管理担当者は具体的なストレージの割り当てについて詳細を把握しておく必要もなくなり、高速なストレージが必要なのか、さほど高速である必要はないのか、といった要件を指定するだけで、具体的な割り当てに関しては“インテリジェントなインフラ”に任せてしまえるようになった。

 ネットワークに関する新たな取り組みとしては“VXLAN”(Virtual eXtensible Local Area Network)という新規格がIETF(Internet Engineering Task Force)に提案されていることも紹介された。たとえば、固定電話はどこの交換機に接続されているかで使える電話番号が規定されてしまうので、引っ越しなどの際には電話番号が変わってしまうが、携帯電話なら世界中どこに移動しても同じ番号のままで通話が可能だ。同様に、VXLANは単純にいってしまうとVLANの拡張ということで、従来のVLANを異なるデータセンター間をまたがって拡張できるようにしようというものだ。

VXLANのコンセプト。仮想マシンを他のデータセンター等に移動した場合でも従来と全く同様に使えることを目指す。

 基調講演の中では、共同で開発に取り組んでいる企業としてアリスタ、ブロードコム、シスコ、エミュレックス、インテルの5社の名前が公表されたが、IETFのサイトで公開されているドラフト版の仕様書を見ると、執筆者の所属企業としてシトリックスやレッドハットの名前も挙がっている。

VXLANに協力する企業のロゴ

 仮想化環境では、ライブマイグレーション等を実行する際にIPアドレスを付け直すわけには行かないという事情もあってインフラ全体をL2ネットワークとして構成しておく必要があった。このため、L2ネットワークの大規模化がおこり、“Ethernetファブリック”と呼ばれる新しいアーキテクチャがネットワークベンダー各社によってそれぞれ提案されているという状況だ。VXLANの提案メンバーに名前を連ねているシスコもこの分野で独自の取り組みを行なっているが、市場ではこのほかブロケードやアバイアの取り組みがよく知られている。これまでは、仮想化の普及に対応するためのネットワークベンダー側の取り組み、という形で推進されてきたEthernetファブリックだが、ここにきてVMwareが主導する形で標準化に向けた動きが出てきたわけだ。

仮想化技術の進化は止まっていない

 さまざまな新製品も発表され、デモも公開されたが、まず印象に残ったのは、仮想化インフラの技術的な進化のペースはまだまったく落ちておらず、ヴイエムウェアはこの分野でのリーダーのポジションを守り続けているという点だ。ハイパーバイザーのコモディティ化は数年前からいわれていることで、現実にハイパーバイザーそのものを有償製品として販売することは難しくなりつつあるが、それは「ハイパーバイザーの技術的な進化が止まった」ことや「ハイパーバイザーはもはやどこの製品でもほぼ同じ」ということを意味するわけではない。

 これまでもハイパーバイザーの進化はまずヴイエムウェアが先行し、ヴイエムウェアが実現した機能を他社が追いかけるという構図だったが、ここにきてヴイエムウェアが再びリードを拡げた形だ。ネットワークの仮想化やストレージの仮想化に着いての機能強化は、ハイパーバイザの進化という観点からも興味深いところだが、それがどのような場面で役立つのかと考えると、やはり大規模なクラウド環境であろう。今回のvForumでは、クラウドを実現するために仮想化インフラが備えておくべき機能を着実に他社に先んじて実装し続けるのだ、という同社の確固たる姿勢が明確になったのではないだろうか。

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