第2回メディア横断企画「グローバルICT討論会」の楽しみ方 第5回
グローバルICT討論会(後編)レポートその2
利益を生む「ICT」の価値を再認識し、グローバル化に備えよ
2011年11月14日 10時00分更新
グローバル時代の事業者の生き方とパートナー選び
ITR 舘野:ビッグデータの話は大変盛り上がったのですが、最後にグローバル時代になったときのパートナー選定についてお話しいただきたいと思います。
グローバルを前提にパートナー選定で重視するポイントを調査したのですが、やはり「コストが安い」、「財務が健全」ていうあたりが重視されています。その他、上流のコンサルティング力やインフラサービスの提供力も挙がっていますね。ひと言で言うと、安価で、インフラサービスも提供できて、上流のコンサルもできることになるようです。主催者であるNTTコミュニケーションズへの提言も含めて、大谷さん、なにかありますか?
ASCII.jp 大谷:前回議論に挙がったように、グローバルに展開する企業って、いろんな情報や知見が必要ですよね。ネットワークも必要です、データセンターも必要です。現地の法令とか、レギュレーションの知識も必要です。どこから商品やサービスを調達すればいいかも知らなければなりません。こういう情報やノウハウも含め、グローバルICTを提供できるベンダーになるということは、「NTTコミュニケーションズがIBMになれ」と言っているに等しいと思うんです。
確かにそういう部分はあるとは思うんですけど、それって果たしてユーザーのニーズなのかな?という疑問はあります。NTTコミュニケーションズさんは日本の通信事業者として、ネットワークなり、データセンターなり、とにかく落ちないサービスを企業に提供してきたわけですけど、いろいろなものが求められるグローバルICTパートナーとしては、そこの強みっていうのを生かすという方向性が、むしろ正しい道なのかなと思います。「落ちないネットワーク、信頼性のおけるインフラを提供します、以上。」で、いいんじゃないかなと。グローバルICTだからといって、サービスの部門の比率を変えるっていうのは方向性として間違っているような気がしていて、むしろインフラ事業者として腹をくくって欲しいという意見です。
ITR 舘野:NTTコミュニケーションズさんに対しては、むしろ今までの強みを再認識せよというお話だったと思うのですけど、浅井さんはどうですか?
ITmedia 浅井:私は、ビジネスの視点からできるだけ発言させていただきます。やはりIT部門の方から見たパートナーというのは、ITガバナンスに対して、どれだけ貢献してくれるかということなんだろうなと思います。つまり投資したものに対して見合った価値が提供されて、それがビジネスの成果に直結しているかという、ITのガバナンスをサポートしてくれることが重要です。「そのアプリケーションあんまり使われてないからやめてもいいんじゃないですか?」というITマネージャからすると耳の痛い話をきちんとするのがITガバナンスです。あるいはiPhoneやiPadなどを業務で利用するコンシューマライゼーションの波を受けて、どのようなルールやポリシーを構築するかといった話を、しっかりしたデータとともに提示できるのがいいパートナーなんだと思います。
ITR 舘野:なるほど。ちょっと、ここで「うちの会社では当面、海外に出る予定はないのですが、そんな会社にとってもグローバルICTという考え方は必要ですか」という質問がTwitterで来ているようです。星野さん、いかがでしょうか?
日経BP 星野:日本の中小企業は非常に数が多いので、海外に出ない企業も、たくさんいらっしゃると思うんですよ。ただGNPというか、売り上げで見たとき、日本企業の稼ぐお金の大半は、今後は海外になります。調達も海外からというのが、どんどん増えてきます。そうなったときに「自分は海外に出る予定はないから、閉じこもってていいよね」というのは、ちょっと悲しい。自分は出なくてもいいんですが、来るものを、どんと受け止めてやるぐらいのことを考えないといけないと思います。
ITR 舘野:もう市場自体がなくなっていくということですよね。
CNET 別井:今回のアンケートからもわかるとおり、日本で何か仕事をしていても、グローバルな視点を持つことは非常に重要なんだと考えていただきたいですね。
メディアからITマネージャーへのメッセージ
ITR 舘野:今日お集まりの方々は企業のIT部門の方もいらっしゃるし、サービスを提供する事業者側の方もいらっしゃると思いますけども、みなさんにメッセージをいただきたいのですが。
CNET 別井:IT戦略とビジネス戦略ってもう切り離せないところに来ているにも関わらず、IT部門の人たちと経営陣と言語が違うという話が気になります。大谷さんは「プロトコルが違う」とおっしゃってましたが、IT部門の方々が経営陣なり、ビジネス戦略に口を出す際には、この違いを認識して進めてほしいと思います。
ASCII.jp 大谷:私はちょっと違う角度で「日本もいいぞ!」っていうまとめです。先日、イベントで企業誘致をやってる自治体のブースにお邪魔したんですけど、土地や人件費の安さとか、税制的な優遇とか、優秀な人材とか、国内でもメリットはいろいろあるんです。円高だから海外進出っていう話もあるんですけど、特に製造やITサービスの拠点という観点であれば、グローバルの視点の中に、日本という選択肢も入れてほしい。その上で、海外進出がいいか、日本がよいのかを決めてもらいたいです。
ITmedia 浅井:「標準化」という流れに対して、変な固執の仕方をするのは、もうやめないとだめだろうなという意見です。ITも標準化を無視して、ガチガチに作り込んでしまうと、バックアップサイトの立ち上げすら難しくなるのだと思います。どこでも使えるもの、どこでも調達できるものに移行して、整理をしていけば、海外に持っていくのも、すんなりいけるんじゃないかなと思います。今からでも準備をしてほしいですね。
ITR 舘野:では、星野さん。締めで、1つお願いします
日経BP 星野:じゃあ簡単に。ぜひ、皆さんにお願いしたいのは、ITにもっとお金を使ってくださいということです。ここ10年、日本企業はTCOの削減という言葉でITコストをどんどん削ってきました。統計によると売上高に占めるIT投資の割合は1.1%で、10年前の半分ぐらい、欧米に比べて4分の1ぐらいって感じに落ち込んでいます。そこで、何が起きたかっていうと、やっぱり生産性が落ち込んでいるわけなんです。やはり今後はグローバルに出ていくにしろ、新しいビジネスを創造するにしろ、ICTは絶対に使わなきゃいけないんです。ICTは投資で、コストじゃないんです。投資の10倍、20倍の価値を生み出し、利益を生み出す道具なんだ、武器なんだという認識で、果敢に稟議書を書いてアタックしてください。よろしくお願いします。
ITR 舘野:ありがとうございます。今回の議論では、やはり世界で勝負するのが当たり前になってくるこれからのビジネスの世界では、IT部門やITに関わる事業者さんにとっても大きなチャンスがあるのかなという感想を持ちました。最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
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