ついに龍勢祭を間近で体験!
10月9日日曜日、椋神社例大祭(龍勢祭)の当日。空は気持ちのいい秋晴れとなっていた。会場となる椋神社は、秩父の市街地から国道299号線を、車で北西にたどって30分ほどの吉田地区にある。徒歩移動の人なら、西武秩父駅、秩父鉄道秩父駅のいずれかから出ているバスを利用することになるだろう。
吉田の郷は山間の農村で、平成17年(2005年)の市町村合併で秩父市に編入された町だ。祭の当日は、龍勢を打ち上げる櫓を中心に半径500mほどのエリアが車両進入禁止になっており、地元の消防団を中心に物々しい警戒態勢が敷かれていた。駐車場に車を止めて会場への道を急ぐが、封鎖線の内側はなかなか先へ進めないほどの混雑だった。例年3~5万人ほどの見物客を集めるという龍勢祭だが、今年は「あの花」効果もあってか、なんと11万人もの人出を記録したそうだ。
やがて、龍勢祭の会場へと到着。椋神社の境内にはたくさんの露店が立ち並び、さらに境内といわず歩道といわず、ありとあらゆるところに畳やブルーシートで桟敷席が設けられていて、ものすごい数の観客がその上に座って正面の一点を見つめている。人々が見つめる先、ここから200mほど向こうの山の麓には龍勢が打ち上げられる櫓が立っていて、今しも1本の龍勢が空へと打ち上げられようとするところだった。
なんと、点火されて空へ飛び出していくはずの龍勢が櫓で爆発した! いきなり、とんでもない洗礼である。しかし、見物客からは拍手が沸き起こるのだ。たしかに残念無念だが、その拍手は挑戦者の健闘を称えるようにも感じられた。そう、龍勢祭とは一年に一度、この地に語り伝えられた技術を駆使して大空へと果敢に挑戦する人々のお祭りだったのだ!
龍勢は、別名「農民ロケット」とも言われている。椋神社縁起によると、日本武尊(ヤマトタケル)が持っていた鉾の輝きを尊んだ神社の氏子が、焚火の燃えさしを空に投げ上げて日本武尊を偲んだことがこの祭の起こりとされている。そして鎌倉時代に日本にもたらされた火薬が、戦国時代に入って狼煙や鉄砲などに利用されるようになり、これが椋神社の神事と結びついて現在の龍勢へと発展したのだという。
そして、実は龍勢祭が行なわれる椋神社は、前述の秩父事件の際に秩父困民党の決起集会が行なわれた場所。吉田の郷からも多くの人々が秩父困民党に参加したが、もともとこの地方の人々は、龍勢のような猛々しいお祭りを好む血気盛んな人が多かったのかもしれない。
龍勢は松の丸太を真っ二つに割って内部をくりぬき、竹のタガで締め上げた筒に黒色火薬を詰め込んだ構造をしている。底には錐で穴を開けた噴射口があり、長い導火線で点火するとそこから猛烈な炎と煙を噴き出しながら飛び上がるわけだ。火薬筒には長い竹の矢柄が付けられていて、そこに落下傘や煙幕薬などの背負い物をくくりつけ、飛び出した後に空高くで花開くようになっている。現在、吉田の郷には27の流派があり、それぞれが昔から伝えられてきた製法を用いて独自の龍勢を作り上げている。
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