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動画の勢い、“静画”にも――ニコニコ静画(電子書籍)の狙い

2011年11月08日 14時30分更新

文● まつもとあつし

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「漫画雑誌」と「描いてみた」が融合する場に

 話を聞いてきて意外だったのは、今回の電子書籍サービスが「ニコニコ静画」の一環として登場したことだ。どちらかといえばニコニコ静画は「イラスト」のイメージが強く、文字やストーリーをともなうコンテンツとの結びつきを筆者は正直弱く感じていた。

 「『ニコニコで漫画を描いてみた』というのが結構盛り上がっているんです。有名なところでは「5月病マリオ」さんですね。ニコニコ静画のスライドショー機能を使って、紙芝居のように任意のタイミングで次の絵に進めたり、簡単なアニメのような表現もできるんです」

ニコニコ静画で配信されている、5月病マリオさんの「ぶたボット」。単行本として11月27日に発売される

 ニコニコ静画は、わずかこの1年間だけで約4倍にまでPVを拡大し、ニコニコ動画同様に巨大サービスに成長している。今後、いわゆる「絵師」ユーザーの活躍の場を広げるためにはどうすれば良いかを議論しつづけた結果、現在の姿があると伴氏。ニコニコ静画から、角川書店の4コマ漫画誌「4コマなのエース」にデビューしたり、単行本が発売されたりといった動きが出てきている。

 「たとえば『歌ってみた』では、私たちが手を出さなくても、レコード会社がメジャーデビューなどをサポートする流れができています。絵師、つまり『描いてみた』といった方々にもそういった機会を提供したいというねらいがあるんです」

ニコニコ動画配信のアニメで、最後に入る「エンドカード」(次回も見てね)の画像もニコニコ静画で募集した

 こういった『描いてみた』系の人々の活躍の場を更に広げるには、電子書籍がとても重要と伴氏は話す。ニコニコ動画同様、商用コンテンツとユーザーコンテンツが、法的に問題のない形で同じ場所に存在し、相互に盛り上げあうことでユーザーが楽しめる場を目指したのが「ニコニコ静画(電子書籍)」なのだ。

 「ユーザークリエイティブを活かす場として、ニコニコ静画(電子書籍)が成立することは、引いては電子書籍に取り組む出版社のビジネスモデルを新しくすることにも繋がるはずです」と伴氏は期待を示す。雑誌が売れないと言われる中、雑誌がそもそも持っていた「コンテンツのプロモーションの場」としての機能は、ネットで代替できるはずだという。

 現状のサービスは、BOOK☆WALKERで購入・配信されるコンテンツの表示が中心となるが、将来的にはWeb版のニコニコ静画のように、商用・ユーザーコンテンツが同じ場所に表示され、融合するような場になることを目指している。

ニコニコ静画に投稿されている「GOGO!静画ちゃん」(「眼鏡じゃない」さん)

 「ニコニコ静画はいまはイラストサイトという範疇を出ていませんが、動画に対して静画ですから、静止画に関わるものについてはすべて扱いたい、と思っています。その第一歩が今回の電子書籍です。商用だけではなく、ユーザーさんの作品がそこには入ってきます。ほかにも静止画と呼べるものは色々あるはずですから、その領域を拡げていき、いずれニコニコ動画と並び立つ存在にしたいと思いますので、ご期待ください!」

 伴氏が話してくれたような展望に加え、来年にはAndroid版も予定されている。Kindle日本上陸が目前に迫る中、単に電子書籍プラットフォームが1つ増えたということに留まらない、ニコニコ静画の今後の展開から目が離せない。



著者紹介:まつもとあつし

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。『スマートデバイスが生む商機 見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)も好評発売中。Twitterアカウントは@a_matsumoto

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