P.A.WORKSの社員寮は、現代版トキワ荘だ
―― アニメーション作品が、たとえ分業制で各自の担当分を細切れにしても成り立つものだとしても、個人に達成感を与える上では、自分の担当分が明確になるほうが良いということですね。それで富山に会社を作ったということですが、なぜ地方にスタジオを構えられたのでしょうか。
堀川 僕個人の理由は、家族との約束で富山に戻ることになったからなんですが、ちょうどアニメーション制作もデジタルが主流になって、地方でも作れるような環境ができてきたんですね。地方は土地が安いということもあって、スタジオを構えてから寮も作りました。
社員の子はほとんどが寮に住んでいます。マンガ家のトキワ荘みたいな感じになればいいなと思っているんですけれども、そういう環境が1ヵ所で用意できたのはよかったですね。僕らが何だかんだと言うよりも、彼ら同士で交流を持って、自分たちの将来とか、自分のできないことを話し合いながら、伸びていっているなとは思うんですけれども。
© 花いろ旅館組合
―― 『花いろ』の緒花たちも、旅館で暮らしていたりしますが、寮というひとつの場所で一緒に暮らすことが、“現場熱”を高める要因にもなっているのでしょうか。
堀川 僕はそう思っています。最初は9部屋ぐらいある農家を借りあげて、みんなでルームシェアして暮らしていたんですけど、やっぱり若い子はルームシェアより、狭くても個室がいいということだったので、結局は寮を建てることにしたんです。確かにアニメーターって、会社にいても10時間ぐらいずっと同じ部屋で机を並べて顔を合わせているわけで、家にいるときくらいプライベートが保てたほうがいいかもしれないなと。
みんな仲はいいみたいで、寮に帰ってもどこかの部屋に集まってゲームをやっていたり。あと、東京では考えられないんですけど、動画マンでも車を持っていたりするので、その子に便乗して温泉に出かけるとか、そういうことをやっているみたいですね。
―― 皆さん、出身地は北陸なんですか?
堀川 いえ、全国から来ますよ。意外に思えるかもしれないんですけど、埼玉とかが多いんですよね。埼玉なら東京の会社に通える距離なんですけど、交通費がかかるからでしょうね。安いアパートを借りて一人暮らしをするのなら、東京だろうが富山だろうが変わらないと思って来るんだろうなと僕は見ています。それで、ある程度食えるようになって自立できると思ったら東京に行くことも考えているんじゃないかな。
© 花いろ旅館組合

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