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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 最終回

アンサイクロペディア“中の人”が語る、ユーモアの難しさ

2011年11月02日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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辞めたくなったことはなし。入れ込みすぎるのは怖い

―― では、管理者の仕事の実際を教えてください。アンサイクロペディア日本語版には現在13人の管理者がいますが、それぞれの人が自由に動いている感じですか? それとも組織だった感じで?

Muttley それぞれが自分のペースでやっている感じだと思います。仕事やプライベートの兼ね合いもあるんでしょうけど、ブロックや記事の保護みたいな管理者権限をほとんど行使していない管理者も多い印象ですしね。13人といっても、実働は数名くらいじゃないかな……。私が管理者になった頃は日本語版が誕生して1年以上経っていましたが、投稿ブロックを実施した履歴さえ見当たらなかったですから。ルールや方針も、本当に皆無に近かったんですよ。

 まあ、管理者というのは、もめ事をよく起こす人の対応をしたり、荒れているページの編集をブロックをしたりと、面倒なところに首を突っ込まないといけないんですよ。面倒だし、別に給料が出るわけでもないですし、感謝されないことも多々……。それが嫌だといって、一般のユーザーと同じように各ページの編集や執筆行為に逃げちゃうというパターンもありますしね。

日本語版に常駐している運営責任者はいないが、削除依頼などの要請は幅広く受け付けている。Muttley氏によると、日本語版が訴訟された例はないが、企業から苦情が来て記事を削除したケースはあるという


―― でも、「運営関連文書」のカテゴリページからは、割としっかりしたルールが作られている印象を受けます。

Muttley 最近はなかなか活きのいい管理者がいくらかいて、いい方向に機能している部分はありますね。だから私も、昔みたいに3~4時間もサイトに張り付いてることはなくなりましたね。「後進に任そう」みたいな感じで(笑)。

 昔はもう、「ないなら自分が方針やルールの枠組みを作ってやろう」と、アンサイクロペディア英語版を参考にしたり、サイトオーナーのカナダ人の方でカール・オースティン・ベネット氏という方に連絡とって色々聞いたりしました。それで「こういう枠組みが必要じゃない?」とか「こういう場合は、こう対応すると決めない?」とか……まあ、鬱陶しく感じる人もいたと思うんですけど、他の管理者に説いて回りながら整備していったんですよ。


―― その押し引きは難しいところですよね。「必ずしも負わなくていい」責任を果たそうとすると、圧倒的な結果が出るまでは出しゃばりという嫌われ役になってしまう。

Muttley Wikiサイトみたいなところの管理者なら、みんなそういう葛藤はあると思います。でも私の場合は「じゃあやめようか」とはならないんですよ。周囲から何か言われるのが気にならないわけではないですけど、不思議と。

 逆に怖いのは、入れ込みすぎるところですかね。アンサイクロペディア日本語版に関していえば、そんな必死に管理しなくてもいいけど、やろうとしたら際限なく責任が背負えてしまうんです。だから歯止めをかけないと、精神を病むところまで行ってしまう。だから、熱中しすぎたと思ったら、パソコンの前に座らないようにしています。


―― ちなみに、管理の時間配分はどうやっているんですか? 本職の合間に、アンサイクロペディアとChakuwikiを管理しているんですよね。

Muttley 仕事の時間とは分けていますね。もっとも活発だった頃は、終電くらいまで会社で仕事して、帰宅したら午前3~4時くらいまでずっとサイトに張り付いて、2~3時間寝て、6時半に起きて出勤……という感じでした。睡眠不足になりましたけど、その分休日にガッツリ寝て。

 ただ、管理に時間を割いているのは、ほとんどアンサイクロペディアですね。Chakuwikiのほうは随分前から、古参の管理者の人がしっかり回しているので、私しか持っていない権限が求められるときだけ動く感じです。

Muttleyさんしか持っていない権限 : チェックユーザーの権限。荒らしの疑いのあるユーザーのIPアドレスなどが調べられる。集団での荒らしを装っている場合も、この権限によってある程度実態がつかめる

同じような体制で運営しているWikiサイトでも、管理者間の雰囲気は大きく異なるそうだ。「Chakuwikiはアットホームな雰囲気で、何度かオフ会も開いていますね。アンサイクロペディアは横のつながりはあまりなくて、各人がバラバラに活動している感じですね。でも、不仲というわけでなく、心地良いくらいのドライさですね。だからオフ会も開くという話題になったことすらありませんし、誰も開きたいと思っていないんじゃないかな」という

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