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ARM TechCon 2011レポート Vol.1

省電力型と性能追求型、2つのコアでスマホを進化させるARM

2011年10月29日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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A15とA7の最大の違いはパイプライン
性質がまったく異なる2つのコア

 Cortex-A15、Cortex-A7ともにARMv7のプロセッサであり、ソフトウェアは互換性がある。しかし大きな違いは、そのパイプラインだ。Cortex-A15はアウトオブオーダー、3命令以上の同時発行が可能なプロセッサだ。また、仮想化支援機能を持ち、システム仮想化に対応できる。

Cortex-A7はインオーダー実行で制限のある2命令同時実行、Cortex-A15はアウトオブオーダー実行で3命令以上の同時発行が可能。パイプラインが大きく違うが、ソフトウェア的な互換性が保たれており、Cortex-A7はCortex-A15が実行していたスレッドを引き継ぐことができる

 これに対して、Cortex-A7は、インオーダーで制限付きの2命令同時発行であり、そのパイプラインはシンプルなもの。ただし、仮想化支援機能を備えており、OSを含むソフトウェアからみるとほぼ同一となっている(一部違いがある)。最大4GBの2次キャッシュが利用可能なほか、Cortex-A15と同様に高速な内部バスが利用でき、メモリコントローラーとの接続帯域も広い。

 このCortex-A15とCortex-A7の性能比、電力効率比を示したのが下の写真だ。Cortex-A15とCortex-A7では2~3倍程度の性能比になるが、電力効率でみるとCortex-A7は、Cortex-A15の2.3~3.8倍もある。たとえば、整数演算(Dhrystone)であれば、Cortex-A7はCortex-A15の半分程度の性能しかないものの、同じ処理をおこなった場合には28%(電力効率の逆数から)の電力しか消費しないのだ。

Cortex-A15とA7の性能比(Performance)と、電力効率比(Effciency。Cortex-A15を基準)などの比較

 この差を利用して、それほど性能を必要としない場合には、CPUをCortex-A15からCortex-A7に切り替えることで、電力消費を3割以下に下げることが可能になるわけだ。

横軸が性能(Performance)で縦軸が消費電力。左側の緑の領域では、Cortex-A7で処理したほうが消費電力が小さい

 ARMで、実際の利用環境を調べてみたところ、一日の利用のうちCortex-A15を必要とする処理時間はわずか12%程度しかなかったという。また、アプリケーションの種類別に必要な処理速度を見た場合でも、処理時間の多くはあまり高い性能を要求しないものだったという。

統計を取ると、Cortex-A15が必要な時間は12%程度だったという。9割近くの時間はCortex-A7で実行できることになり、消費電力を大幅に削減できる

アプリケーションごとに必要な処理性能(クロック周波数)をグラフ化したもの。ブラウザーは高い処理が必要だが、多くのアプリケーションではアイドル時間が長く、900MHzを超える性能が必要な時間は多くない。

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