※この記事は高城幸司氏のメールマガジン「トップ営業の「稼ぐ」発想法」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
キャリアアップしたいのなら自分を売り込む力は絶対に必要な時代――周囲から頭一つ抜ける存在になるには、やりたい仕事に近づくには、自分をどうアピールすれば良いのか。「伝説の営業マン」として知られ、『できる人の 超★仕事術』『トップ営業のフレームワーク』ほか多数の著書を持つ高城幸司氏がその方法を伝授する。
棚卸して「自分の強み」を整理
仕事でキャリアアップしたいのなら自分を売り込む力は絶対に必要な時代になりました。このことは絶対に覚えておいてください。ゴマをするのではなく、仕事の能力、やる気などを伝えることで期待値を高めるのです。結果として「あいつに任せてみよう」と同期で頭一つ抜ける存在になれたり、やりたい仕事に近づくのは間違いありません。
さて、そんな自分を売り込むには、まず自分を知る必要があります。特に「自分の強み」は何なのか、一度、棚卸ししてきちんと整理しておきましょう。人間は、意外と自分のことがわからないものです。しかし、自分を知らなければ、当然ですが、自分の得意な部分をキラリと光らせて周囲の人に見せることはできません。
強みは、自分のやりたい仕事に結び付けられるように示す
「あなたの強みは何ですか」と聞かれたら、あなたはどう答えますか。
- 「私は真面目です」
- 「私は英語ができます」
これらは、「強み」と受け取ってもらうにはまだ曖昧な表現です。強みは、自分のやりたい仕事に結び付けられるように示さなければなりません。
プロ野球のピッチャーを例に考えてみます。強みを聞かれて、
- 「僕は球が速いです」
と答えたピッチャーがいるとします。
これは一見、強みのようですが、実は不十分です。「球が速い」というだけでは、どういう場面で使えるピッチャーなのかがわかりにくいからです。
- 「僕は疲労回復が早いです」
これはわかりやすい強みです。監督は、「こいつは連投させても大丈夫だな」と、具体的にどういうふうに使えるかがイメージできるからです。
自分はどういう場面で使える人間か
監督は、ピッチャーが10人いたら、どのピッチャーを「先発」「中継ぎ」「抑え」として使うかを考えています。ですから、自分はどういう場面で使えるのか、どういう役割に向いているのかを自らしっかり把握し、それを強みとして伝えなければいけません。
- 「僕は切れのいい変化球を投げられます」
では、やはりどういう場面で使えるかわかりにくいのでダメです。
「先発」は、勝利投手になる権利を得るために、5イニング以上投げなければなりません。したがって、「球が速い」や「変化球の切れがいい」よりも、「100球以上、投げ続けることができる」ということが強みになります。
「中継ぎ」は、試合の途中で急に呼び出されるので、「すぐに投げられる」ことが強みになります。「僕は3球ぐらい投げたら、すぐに体が温まって、本番で全力投球できます」となれば、監督は「こいつは中継ぎにピッタリだな」とイメージできます。
つい最近まで日本を代表する投手であった松坂大輔選手(早く怪我から回復して、活躍することを願っています)は「絶対に先発しか向かない」と言われています。なぜなら、試合が始まる前に100球ぐらい投げないと体が温まらないからだそうです。そういうピッチャーは、試合の途中で突然呼ばれて投げる「中継ぎ」の役割は果たせません。
もう一つ、「中継ぎ」に求められる強みは、「目先を変えられる」ことです。一般的に、「先発」のピッチャーは、オーソドックスに上からオーバースローで投げる人が多いのですが、「中継ぎ」のピッチャーには、横からサイドスローで投げたり、斜めからスリークォーターで投げる人がよくいます。これは、相手の目先を変える効果があります。「サイドスローで、投球練習は3球で大丈夫」というピッチャーは、「中継ぎ」の最有力候補になるでしょう。
「抑え」のピッチャーは、9回という、最後の一番緊張する場面で登板するので、「コントロールが良い」のが必須条件です。「先発」であれば、1回の最初にフォアボールを出しても取り返しがきくので、わりと平気ですが、9回のツーアウト満塁というピンチで出てくる「抑え」は、絶対にコントロールが良くなければいけません。
「僕はコントロールがいい」、または「ピッチングではストライクが先行する」「フォアボールを絶対に出さない」といった強みをアピールすると、監督は「こいつは抑えで行けるかもしれない」と考えます。
ピッチャーなら、「先発」「中継ぎ」「抑え」のどれに適するかをアピール
このように、ピッチャーというのは、自分の強みが「先発」「中継ぎ」「抑え」のどれに当てはまるのかをしっかり考えて、監督にアピールしていく必要があるのです。
監督にとって困るのは、「そこそこ球が速くて、20球ぐらい投げたら体が温まって、3回までならだいたい相手打線を抑えられて、コントロールは良くも悪くもないピッチャー」です。「先発」「中継ぎ」「抑え」のどれにも中途半端で、使えないからです。
自分が使われる場面を相手がイメージできる強み
会社の仕事でも、ピッチャーが監督に強みをアピールするのとまったく同じ努力をする必要があります。上司というのは、いつも部下のことを「こいつは何に使えるのか」「どういう場面で使えるのか」「何の仕事に向いているのか」と考えているものです。
そういうとき、部下から「僕は真面目です」とアピールされても、それが非常にわかりにくい強みであることは理解していただけるでしょう。ただ「真面目」なだけでは、それがいったい何に使えるのか、どういう場面で生きるのか、何の仕事に向いているのかが、すぐにイメージしにくいのです。
つまり、ピッチャーにとっての先発、中継ぎ、抑えのように、自分が会社の業務のどういう場面で使える人間なのか、上司がイメージできるような強みを見つけることが重要です。
たとえば、「私は年上の人にも気兼ねなく、仕事を任せることができます」と言うと、「こいつは年上の部下がいても平気なんだ。じゃあ、年配者の多い部署でも大丈夫かな」と上司は考えます。私は3日間ぐらいの徹夜はできます」となると、「短期間の仕事でかなり無茶をさせても平気かもしれない」と思われます。
「私は知らない土地に行っても、すぐ慣れるタイプです」と言うと、「だったら、海外に転勤させても平気かな」と判断されるでしょう。
クライアントに記憶されるアピールで依頼増
私が手がけている人事コンサルティングの仕事でいうと、一般的に同業他社の多くは、「他の会社が担当した仕事を、途中で受け継ぐこと」を嫌います。しかし実際には、一度はある会社に任せた仕事を、別の会社に転換させたがるクライアントは少なくありません。
そこで私は、自社の強みとして、「ウチは他の会社がいったん受けた仕事を途中で受け付けます」とアピールしています。企業の人事担当者と話す際には、
- 「他の人事コンサルティング会社が担当していた仕事に、ウチが途中から入ってやらせていただくケースが結構多いんですよ。お客様にはとても喜んでいただいています」
と説明するので、「そういう仕事でも大丈夫な会社なのか」と覚えていただくことができ、途中からの仕事の依頼をどんどんいただいています。これも、相手がどのような場面で自分を使うのかを具体的にイメージしながら、それが伝わるようにアピールしていることの効果なのです。
【筆者プロフィール】高城 幸司
1987年同志社大学文学部卒、同年、株式会社リクルート入社。社内の売り上げ記録を数々打ち立て、6年連続トップセールスに輝く「伝説の営業マン」新規事業を数多く立ち上げ、営業現場で活躍。起業・独立情報誌『アントレ』を創刊。編集長も務める。2005年にリクルート社を卒業。現在は人と組織のサポートを年間100社以上実践している。著書は50冊以上。「営業マンは心理学者」「トップセールスのフレームワーク」など多数。
「ビジスパ」にてメルマガ「トップ営業の「稼ぐ」発想法」を執筆中。
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