デスクトップはこの対策でもいいとして、Xeonはどうするか? 特に問題なのがメモリー帯域の拡張性だが、これは一朝一夕にどうにかなる問題ではない。そこでせめてもの対策として、Northwoodベースのコアに大容量3次キャッシュを組み合わせることで、少しでもメモリー帯域の少なさをカバーすることを目論んだ。これが、後に「Gallatin」というコード名で知られる「Xeon MP」、あるいは「Pentium 4 Extreme Edition」である。
この時期に、インテルは持てるカードを全部切ってPentium 4ベース製品の性能の引き上げを図り、SledgeHammerの来襲に備えたわけだ。結果としてインテルはその後の製品展開が面倒なことになり、おまけにPrescottの発熱問題でさらに足をすくわれた結果として、数年間デスクトップ向け製品の迷走が始まる。それだけのインパクトがSledgeHammerにあったと考えてよいだろう。ここまでのHammerは、黒歴史と言うよりもむしろ“輝かしい歴史”と言って差し支えない。
Hammerの前に立ちこめ始めた暗雲
問題はここからだ。2002年のMPFが開催される少し前の2002年7月、AMDは都内でAMD Developer Forumを開催した。この時期には日本だけではなく各国で同様のイベントが開催されたのだが、その中でHammerベースの製品の登場時期について、デスクトップ向けは2002年第4四半期、サーバー向けは2003年第1四半期と予告した。
このとおりに実現していれば、それはインテルがパニックになるのもわかろうというものである。このDeveloper ForumではAMD以外にも、VIA/ALi/SiS/ATI/NVIDIAといった各チップセットベンダーがK8対応チップセットを紹介。また「メカニカルサンプル」とは言いながら、主要なマザーボードベンダーがSledgeHammer対応マザーボードを展示するほどに準備が進んでいた。このあたりは、準備が遅れた「K7」(Athlon)のときとは、だいぶ様子が異なっている。
この展示があった2ヵ月後に、MPFで前述のような性能の開示があった。「これは年末に出る製品が楽しみだ」と誰もが期待したわけである。ところがMPF 2002のタイミングでAMDはまずロードマップを変更した。次に掲載したスライドはMPFで開かれたラウンドテーブルで公開されたロードマップだが、ClawHammerが2003年前半に後退しているのがわかる。
変更の影響がより大きいのは、「Barton」コアの「Athlon XP」である。元々Bartonは、0.13μmプロセスの「Thoroughbred」をベースとしたコアのまま、K8と同じ0.13μm SOIを利用することで高速動作するコアということになっていた。
それがこの時点で計画は破棄され、代わりにThoroughbredと同じ0.13μmプロセスを使いながら、2次キャッシュを512KBに増量することで性能の底上げを図るものに切り替わった。ついでに当初は予定に無かった400MHz FSBもサポートするなど、やってることはNorthwoodコアのPentium 4とあまり変わらない。
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