従来のBDレコとは異なる価値観を提案
6チャンネル録画の東芝「DBR-M190」
最後に紹介する「REGZAサーバー」こと「DBR-M190」(予想実売価格20万円前後)は、シリーズの最上位モデルにして他社を含めたほかのBDレコーダーとは大きく異なるモデルだ。
薄型テレビ「REGZA ZG2シリーズ」ゆずりの「タイムシフトマシン」を搭載し、合計5TBのHDDと最長4倍相当の長時間録画モードを組み合わせて、最大で地デジ6チャンネル分の全番組を15日間録画できる。もちろん、筆者が住む地域では地デジだけでも10チャンネル受信でき、全チャンネル録画を実現できるわけではない。とはいえ、実用性を考えれば6チャンネルでも十分。今までにないテレビ視聴スタイルを体験できる。
基本的なBDレコーダーの機能としても、タイムシフトマシンとは別に2番組の同時録画(長時間録画は最長4倍)、BDへのダビング、オートチャプター機能やチャプター編集などをきちんと備えている。録画機能付き薄型テレビからのスピンアウト的な製品のため、多彩な動画配信サービスへの対応や、DLNAサーバー/クライアント機能を備えるなど、ネットワーク機能もBDレコのそれとは多少毛色が異なる。
いわゆるBDレコーダーとして、特にRDシリーズの後継機として捉えると編集機能などの面で物足りない部分は多い。その分、選択に悩むようなことはなく、20万円という価格であっても、6チャンネル録画に価値を見いだせるならば「買い」だし、地デジはあまり見ないという人ならば必要のない製品ということになる。
なお、下位モデルの「DBR-M180」(予想実売価格15万円前後)は、HDD容量が2.5TBとなる以外に違いはないので、比較的買いやすいモデルと言える。この場合の録画時間は、地デジ6チャンネル×8日分となる。
タイムシフトマシン以外の特徴としては、「レグザエンジンCEVO」搭載により、ZG2シリーズ相当の高画質機能も備えていることだ。もちろん超解像技術「レゾリューションプラス6」搭載で、「3次元フレーム超解像」も備えている。
機能だけでなく、操作メニューなどもZG2シリーズとほとんど同じなので、本機をチューナー的に使用してテレビ視聴をすると、「我が家のテレビがREGZAになっちゃった!」的なことになる。テレビを買い換えることなく、最新REGZAの高画質を手に入れたいという人にも魅力だろう。個人的には我が家の「プラズマテレビ」でREGZA画質を映すと、きっと凄いことになるんじゃないかと密かに期待している。
さて、ここでパナソニックやソニーと同様にDBR-M190の全貌を赤裸々に紹介。と、いきたいところだが、まだ視聴できる取材機が存在していない。現在も発売日(12月中旬予定)に向けて最終的なチューニングに邁進中のようだ。
これで終わってしまうのはもったいないので、DBR-M190の開発担当者から聞いた情報をお伝えしよう(10月3日段階での情報のため、実際の製品と異なる可能性があります)。
まず、いかにタイムシフトマシン搭載だけで十分に価値があるとはいえ、20万円のハイエンドマシンである。同価格帯のモデルが画質・音質にこだわったモデルだけに、その点でも十分に張り合えるモデルであってほしい。
そのあたりをじっくりと聞かせていただいたのだが、まず「レグザエンジンCEVO」の高画質はほぼそのまま搭載されるので、十分期待していいとのこと。
話を聞いた時点ではとりあえず映像を再生できたレベルだったようだが、可能性は極めて高く、そのうえで、BDドライブから映像処理回路へ信号をやりとりする部分や、BDドライブの制御系などをすべて一新してさらに改善すると言っていた。
続いては音質だ。すでに製品の外観については公開されているので、お気づきの人もいるように、HDMI出力は1系統だ。筆者自身も実感しているが、2系統のHDMI出力を使った映像/音声分離出力は、特に音質の向上が大きく、この点ではライバルには及ばないだろう。また、残念ではあるが、コストを考えれば高音質パーツの投入などにも差が出てしまうと思われる。
しかし、RDシリーズやCELL REGZAを手がけた同社である。制約の範囲内ではあっても最善の仕事をしてくれるはずだ。
筆者がもう一つ注目していたのがBDドライブ部分。今やすっかり姿を消してしまった「センターメカマウント」なのである。しかも、据え置きモデルでは珍しいスロットローディングメカを採用している。これはきっと意味があるに違いない。
こちらの期待に反し、その答えはボディの厚さを80mmに抑えるためというものだった。どうやら、結果的に価格はそれなりのものになってしまうが、CELL REGZAはもちろん、テレビであるZG2への買い換えを躊躇する人にもタイムシフトマシンを提供するということが目標であるため、(HD DVDレコーダー「RD-A1」のような)価格度外視の超ド級マシンではなく、使い勝手のいいサイズに収めることも重要なことだった。
つまり、スロットローディングメカの採用はドライブ部分の厚さを抑えることが理由だ。もちろん、そのドライブメカの性能がトレイローディングの一般的なドライブメカと比較して読み取り性能など同等の実力を持っていることを確認したうえでの採用である。
センターメカマウントの配置もHDDや各種基板のレイアウトなどをしていくと、厚さを80mmに収めるためには、センター配置しか選択肢がなかったようなのだ。
ところが、結果的にはなかなかいいレイアウトになっているようだ。DBR-M190には、3.5インチが2基、2.5インチが1基、合計3基のHDDが内蔵され、3.5インチドライブとBDドライブが中央付近、2.5インチドライブは電源部の反対側に搭載されるという。とてもサイズ優先のレイアウトとは思えない。
そして、HDD3基内蔵のため、電源部は結構強力なものになってしまったという。繰り返すが、強力な電源部は音に効くので音質もなかなか期待できそうだ。もちろん、音質については物量の投入のほうが効果的であり、そういう意味で高望みは禁物だが、今後が楽しみであることには違いない。
タイムシフトマシンや、主な録画機能については、ZG2でおおよそのことは予想できるが、BDレコとしての使い勝手などはやはり実機を使ってみるまでわからない。この点では読者だけでなく、筆者も待ち遠しい気持ちでいっぱいだ。実力の程は未知数ながら、期待値ではNo.1のモデルである。
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