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痛車乗りは電気自動車の夢を見るか? 第3回

EV界のスーパーウェポン

ジェットコースターの加速! スーパーEV・TESLAを体験

2011年10月25日 12時00分更新

文● 藤山哲人 ●車両協力/TESLAジャパン、高木多佳雄氏

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コレがTESLAのパワーユニットだ!

 その強力なパワーが怖くてトラクションコントロールをOFFにできない、Roadsterのパワーユニットはどうなっているのだろうか?

メンテナンス系のハッチを開いてみると……

 まずはインバーターやバッテリーが載っているリアを調べる。ありゃ! 全部ブラックボックスに! しかも「開けたら保証外よ」のシールも貼ってある……。

 とりあえず分かる範囲で解説すると、手前のボックスがインバーターユニットで、奥がバッテリーユニットだ。

完全にブラックボックスになっちゃってる……

とりあえず手前のユニットには、高電圧のケーブルが見られた

 Roadsterに搭載されているバッテリーは、6831個(セル)のリチウムイオン電池を搭載していて、重さは449kgと車両重量に占める割合はなんと36%。そりゃパワーもありますわ! 電池はノートPCなどで使われている円筒形のものを使い、EV仕様に手を加えているという。まず、円筒形のリチウムイオン電池のセル69個を並列接続して、3.75Vの大容量「バッテリーブリック」を構成。このブリックを今度は99個直列に繋いで、先ほどのバッテリーユニットになっているのだ。このことから、バッテリーの出力電圧は約371Vとなる。

差し込んでいるのが69個の円筒形リチウムイオン電池を繋いだ「バッテリーブリック」 ※写真提供:TESLAジャパン

バッテリーブリックを99個直列に接続してバッテリーユニットになる ※写真提供:TESLAジャパン

バッテリーユニットはキャビン側に迫り出すようになっているらしい。さっき見えていたのは写真の上部だろう ※写真提供:TESLAジャパン

 諸元によれば最大215kWを出力するというから、電流に換算すると580A! えーっ! 電気を食うというエアコンでも、だいたい1.5kW程度なので、同時に143台をつけても電力をまかなえてしまうというスゴさだ。

 バッテリー容量は56kWhなので、例によってコイツをモバイルバッテリー代わりに使って、スマホのGALAXY SIIを充電すると1万9345回もフル充電できるという計算だ。む~、なにもかもケタ違い……。

 さらに内蔵バッテリーの温度は常にコンピューターが監視していて、電池1個1個に対して水冷方式の冷却を行なうようになっている。充電中に「チー」という音が聞こえる件を、エンジニアに聞いてみたところ「おそらくそれは、助手席側にある水冷ポンプの音で、比較的大きな音を出す」ということだ。大きな音とはいえ、耳を澄まさなければ聞こえない音ではあるが……。

 一方モーターの制御を行なうインバーターは、ズバッと○○方式とは記載されいないが、Webの情報を読んでみると、どうやらVVVF方式のようだ。VVVF方式は鉄道などで利用されている制御方式で、電圧を変えつつ、モーターに流す電流のパルス幅(周波数)も変える方式。美しいサイン波を出力するインバーターは、低速では低電圧・低電流をモーターに流し滑らかな加速を実現し、高速では高電圧・高電流でパワフルにモーターを駆動している。

時速36マイル(=58km)時の電圧と電流。青い線が電圧を示し、赤が電流を示す。さらに高速運転すると青い線の振幅が大きくなり、赤い線の山と山の間隔が短くなる(周波数が上がる) ※写真提供:TESLAジャパン

 パワートランジスターには、インバーターエアコンなどでも使われるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が使われ、これが機械式のスイッチに変わって電流をON/OFFするスイッチとなる。どうやら汎用のIGBTを使っているようなので、エアコンだと1つのモジュールしか内蔵していないIGBTを、複数利用していると思われる。

大電流をスイッチングするためのIGBTという半導体。テスラによると、14個をワンセットとして合計6セット搭載しているとのこと。 ※写真提供:TESLAジャパン

 この半導体のスイッチIGBTにON/OFFの指令を出すのは、PCに精通している読者ならよく知ってるDSP(デジタルシグナルプロセッサ)という半導体だ。パソコンのCPUほど汎用的ではないが、決められた計算なら超高速に処理するというもの。そしてDSPは、車載のメインコンピューターからの指示を受け取り、トルクや電池の状態を調べつつIGBTのスイッチを高速にON/OFFするというわけだ。

一部、記事中に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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