コイツも加速度センサーでパワーを調べてみる
EVの独特なスタートの加速性能は、数値で見るとどのぐらいなのだろうか? 前回同様に加速度センサーを設置して計測したのが次のグラフだ。比較対象としているのは、ウチのカローラ・フィールダー(排気量1500cc)だ。
i-MiEVの加速はトラクションコントロールが効いているのか(?)、コンピュータが徐々に加速させているのかは不明だが、アクセルを踏み込んでも最初は穏やかな加速を見せるが、アクセルがベタ踏みに近くなると0.52Gをマークした。ここで少し説明しておかなければならないのは、テスト時の運転だ。i-MiEVのアクセルは、だるい設定になっているようで、「加速したい!」とベタ踏みにすると本領を発揮するようだ。したがって、60kmに到達する直前はベタ踏みになっていた。一方カローラの場合は、アクセルに余裕があるので60km手前からアクセルを少し緩めているので、時速60kmに到達までの秒数は少し長めになっている。ベタ踏みとはいえ、60kmまで10秒で加速できるi-MiEVは、カローラよりパワフルと言えるだろう。
また、時速60kmに到達した瞬間にアクセルから足を離しているが、さほど回生ブレーキが効かず、ガソリン車同様に滑らかに走れるのもこのグラフから読み取れるだろう。
さて今度は、高速運転時の加速についても調べてみよう。法改正で軽自動車でも時速100kmで走れるようになったので、ここでは時速80km~100kmに加速したときの性能を調べてみた。
こちらも先と同様に、少しアクセル操作が異なっている。カローラはアクセルに余裕があるので時速100kmに近づいたときに少しアクセルを緩めているが、i-MiEVはベタ踏み状態のデータだ。それを考慮すると、高速時の加速性能はほぼ互角といえる。ただし、i-MiEVはかなりパワーの限界に近づいていることも書き添えておこう。
パワーユニットはコレだ!
i-MiEVのパワーユニットは、フロントボンネットの中ではなく、リアトランク下にある。フロアマットを取り、4本のネジを緩めるとインバータをはじめとしたユニットが顔を出す。
向かって左側は、フロントのボンネット内にある12Vの鉛蓄電池を補助するDC-DCコンバーターだ。駆動用のバッテリー(330V)から12V系の電力をアシストするために搭載されており、330Vを12Vに降圧するユニット。右側のオレンジ色の高電圧ケーブルが繋がっているユニットは、モーターを駆動したり、回生ブレーキ中の電力をバッテリーに戻すインバーターユニットだ。インバーターの制御方式は、パルス幅変調(PWM)方式で極めて省エネ制御が可能。モーターの制御方式としては極めて王道を行っているといっていいだろう。
コラム:PWM方式
模型用のモーターを遅く回したい場合は、モーターに1.5Vの乾電池1本をつなげばいい。さらに早く回したいなら、電池を2本、3本と直列で繋げて電圧を上げればモーターはより早く回転する。しかし、エネルギー効率から見るとこれは極めて不経済だ。なぜなら電池がつながりっぱなしで、常にモーターに電気が流れているからだ。
PWM方式は、ASCII.jp読者ならご存知の通り、PCの冷却ファンなどでも回転数の制御に使われている方式。モーターをゆっくり回したい場合は、幅の短いパルス状の電流をモーターに供給する。高速にモーターを回転させたい場合は、幅の広いパルス状の電流を流せばいい。ただしこれは、話を簡単にするために電池で動く模型のモーターなどの場合だ。EVの場合はこの原理を応用して、交流の電気を作り出している。
記事中に一部誤りがございましたので、訂正してお詫びいたします。
この方式は電圧を変える複雑な回路を必要とせず、高速にスイッチをON・OFFするだけでいい。つまり、ゆっくりとモーターを回転させているときは、短いパルス状の電流(一瞬だけスイッチONを頻繁に繰り返す)がモーターに流れ、残りの時間は電池がモーターに繋がっていないので、電池を長持ちできるというワケだ。
モーターはこられのユニットの下に完全に隠れてしまっているが、下回りをリアから覗くとコンパクトなモーターが確認できる。このモーターは「永久磁石式同期モーター」と呼ばれるもの。車軸とつながっているモーターの回転部分(回転子)には、おそらくネオジム磁石が使われ、その周りをコイルで包み込んでいるタイプだ。インバーターはこのコイルにパルス状の電気を流し回転軸の磁石が引き付けあったり、反発することで軸を回転させる。諸元によれば、最大トルクは0~2000rpmで180N・m、最高出力は3000~6000rpmで47kW(64PS)となっている。街乗りから近県へのドライブには十分なパワーを備えていると言っていい。
パワーの源となっているバッテリーは、キャビンの前後シートに下に敷き詰められている。お借りしたGグレードの場合は、リチウムエナジー ジャパン(鉛蓄電池で有名なGSユアサのグループ会社)のEV専用バッテリーを88個(セル)搭載し電圧330V、バッテリー容量16kWhとなっている。リチウムイオン電池の電圧は3.75Vなので88セルをすべて直列につないでいるようだ。Mグレードより高エネルギー密度で高出力密度なのでGグレードの航続距離を伸ばすのに一役買っている。
ちなみに、この車載バッテリーをモバイルバッテリーとして使うと、充電ロス率(おおむね43%)を差し引いても、スマートフォンのGALAXY S IIが5527回充電できる計算だ。あまり意味を持たない数字だが、自分の持っているモバイルバッテリーよりどれだけ凄いかが分かるだろう。
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