このページの本文へ

痛車乗りは電気自動車の夢を見るか? 第1回

スタートダッシュは3リッター車クラス

エレクトリック・ラグジュアリー! 未来すぎる日産リーフをドライブ

2011年10月20日 12時00分更新

文● 藤山哲人 ●車両協力/日産自動車

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

パワーの原動力「モーターと電池」

 リーフのエンジンレイアウト・駆動方式はFF。ボンネットを開けるとエンジンのヘッドカバーのようなものが見えるが、これはモーターを制御するためのインバータ回路(ユニット)になっている。

ボンネットを開けるとエンジンのようなものが見えるが、これはモーターを制御するためのインバーターユニット

実際は、見えている以上に大きい。後々解説するがインバーターは走行時のモーター制御に使う回路で、回生ブレーキ中に発電機として使う場合のAC・DCコンバータ(整流器)も内蔵している

インバーター回路

 リーフはパワーユニットに交流モーターを採用している。交流モーターは家庭用の掃除機などと同じで、±が1秒間に50~60回入れ替わることを利用してモーターを回転させる方式だ。

 一方車載のバッテリーは、±が入れ替わることのない直流の電池だ。つまり車載のバッテリーにリーフの交流モーターを直接つなげても回転しない。そこで登場するのが、バッテリーの直流をモーター用に交流電気に変換する「インバーター回路」。リーフの場合は、±を入れ替える速度(周波数)を変えて、モーターの回転数をコントロールする可変周波数方式を採用しているようだ。

 それ以外にも周波数は同じだが出力する電圧を変化させる可変電圧型(EVではあまり使われていない様子)や、2つを組み合わせたVVVF(可変電圧・可変周波数)方式などがある。とくにVVVF方式は、低速から高速まで滑らかに加速する必要がある新幹線から通勤電車まで鉄道業界では広く採用されている方式だ。


 インバーター回路はモーターと合わせてEVでは心臓部となっていて、モーターの回転数を少ない電力でいかにパワフルに、安定して駆動させるかを決める重要な部分だ。シフトレバーの状態や速度など各種センサーからの情報を元に、ソフトウェアで細かく制御されているので、EVの性能を大きく左右すると言っても過言ではない。ガソリン車で言うと燃料や混合気、点火タイミングなどを制御するEFIに相当すると思っていいだろう。もし将来EVのチューニングガレージができたなら、今のROM交換と同じように、ソフトウェアをいじることになるはず。

リーフに搭載されている三相交流モーター。おそらく中央の回転する(車軸とつながる)部分にはネオジム磁石などが内蔵され、それを取り囲むように動線を巻いたコイルが配置されている。インバータはこのコイルに±を高速に入れ替えた電気を流し、磁石の吸引・反発力を利用してモーターが回転する

 パワーユニットは、インバーターの下に配置されたモーターだ。トランスミッションがないので非常に小型になっていて、モーターの軸が数段のギアを経由してそのままタイヤに直結されている。日産の説明によれば、永久磁石を利用した三相交流モーターで出力は80kWという。おそらく中央の回転子にはネオジム磁石が使われていると思われる。

 ちなみに、80kWを馬力に換算すると109馬力(PS)となり、パワーバンドは2730~9800rpmと超ワイドでビックリ。最高回転数は1万390rpmまで回るというから、もしタコメーターを付けると、バイクみたいに1万回転まであるものになるだろう。最大トルクは前述したが、0~2730prm時で280N・mなので、2.5リッターのスカイライン(VQ25HRエンジン;258N・m/4800rpm)に相当。ただ、スカイラインのエンジンは4800rpmまで回してクラッチをつないだときの値なので、0rpmから最大トルクをを出力するリーフがどれだけ加速性能がいいかを数値からも読み取れるだろう。アクセルを踏んだ瞬間から最大トルク、それがリーフなのだ。

 これらのパワーユニットを動かすのは、直流360Vのリチウムイオン電池だ。

重量配分を考え、バッテリーはリア側に寄せてレイアウトしている。またこれは予想だが、フロントからクラッシュした際にも高圧の電池を守るためにリアに寄せていると思われる

弁当箱のようなものが、1つあたり15Vのバッテリーモジュール。バッテリーの大敵である雨や水たまりから守るため、防水構造とクラッシュ時にもバッテリーを守る強靭さを備えている

バッテリーモジュールの中には、1つ(セル)辺り3.75Vのリチウムイオン電池がラミネートパックされたものが4つ入っている。リチウムイオン電池は、タダ巨大でEV向けにチューニングされているというだけで基本的には携帯電話の薄いバッテリーと同じだ

 バッテリーユニットは、写真のようにキャビン下に配置されている。弁当箱のようなバッテリーモジュールの中には、ラミネートフィルムで密封されたリチウムイオン電池が4つ入っている。携帯電話のバッテリーが巨大化したものと思っていいだろう。

 1つ(セル)のリチウムイオン電池は携帯と同じ3.75Vなので、バッテリーモジュール1つで15Vという計算。これを48個床下に敷いてあるので、全部を直列にすると15V×48個で720Vになる。しかし諸元では出力360Vとなっているので、バッテリモジュール24個を直列に繋いで360Vとしたものを、2系統並列に繋いで容量を稼いでいるようだ。バッテリー総容量は24kWhというから、もしこれをスマートフォンなどのモバイルバッテリーにすると、ロス率も考慮して「GALAXY S II」なら8291回充電できるっちゅー計算。途方もなく超大容量ってのはお分かりだろう。

 また、バッテリーは1セルごとに密閉されているので、床下が水に付こうが濡れることはない。日産のテストの様子では、床下を完全に浸水させて性能テストもしているようだ。なかなか過激なテスト工程でステキ!

 これだけ大量のバッテリーを積めば、車両重量もそれなりの1520kg。ただ、重量配分は前軸870kg(57%)、後軸650kg(43%)(車検証より)とFF車にしてはバランスがいい。しかも重いバッテリーは床下にあるので安定性もよく、一般道でも高速でも小気味いいコーナリングをしていた要因だ。

 この加速性能とハンドリングを総合すると、こりゃもしかして峠道の登りでブッチギリの性能を見せるかも? ECOレンジで走れば回生ブレーキがかなりかかるので、下りの峠でもアクセル操作だけでいい記録が出せそうだ。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン