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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第27回

パナソニックの最先端技術を知る

スマホ時代に真価を発揮する、多層基板技術ALIVHとは?

2011年10月17日 09時00分更新

文● 大河原克行

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14層・16層の多層化も近く実現

ケータイの薄型化・小型化に貢献した技術が、スマートフォン時代に花開くという

 現在、高機能携帯電話やスマートフォン向けに採用されているのは、2002年から生産している高密度、多層化、薄型化を実現したALIVH-Gと、2007年から生産を開始した強度を高め、堅牢性に優れたALIVH-Cの2つの製品。そのほか、半導体パッケージやカメラモジュール、RFモジュールで採用されている40/40μm(配線幅/配線間隔)を実現するALIVH-B、凹構造により部品実装の低背化に貢献するALIVH-3Dを製品化している。

 ALIVH-Gでは10層の製品を量産しており、12層を開発中。また、ALIVH-Cでは12層を量産しており、今後は14層、16層の製品開発にも取り組むことになるという。

 現在AV機器やカーナヒゲーションシステムに採用されている多層基板が4~10層、PCやデジカメに採用されているビルドアップ基板が6~12層である。これに対して、スマートフォンでの採用を前提としたALIVHでは6~14層となっており、今後さらに多層化が進むことになる。

 パナソニックエレトクロニックデバイス(PED)の回路基板ビジネスユニットの坂本和徳ビジネスユニット長は以下のように話す。

坂本氏 「もともとは高機能化で先行する日本の携帯電話での採用が多かったが、高機能化したスマートフォンに対する需要が拡大するのに伴い、これまで以上に多層基板に注目が集まり、ALIVHのビジネスを世界規模でさらに拡大できる地盤が整ってきたともいえる。ALIVHは、10層以上の多層化が必要とされるような端末での利用に適しており、スマートフォンの需要拡大は、ALIVHにとっても大きな追い風になる」

海外での生産体制の強化にも取り組む

 パナソニックでは、スマートフォンにおける需要拡大を想定し、新たな工場の建設にも踏み出した。

 現在、ALIHVは、三重県・松坂および大阪府門真の生産拠点で、月産850万台(スマートフォン換算)の生産体制を確立しているほか、パナソニック台湾でも生産。パナソニック台湾においては、同工場の生産能力を月産150万台から300万台体制に増強し、さらに、2011年10月には同工場近郊の桃園県に、月産300万台体制の新生産工場を稼働。これにより、生産能力を前年比4倍の月産600万台にまで引き上げることになる。

ベトナム・ハノイに建設予定の新工場。左はモバイルスピーカーなどの生産棟

 パナソニック台湾では、主にALIVH-Gを生産することになるが、同社ではさらに、ALIVH-Cの量産工場として、ベトナム・ハノイに新工場を建設し、2012年8月から月産350万台体制で稼働させる計画も明らかにした。

 これにより、2012年度末には国内外あわせて月産1800万台の体制となる。

 日本での生産能力は据え置きながら、海外での生産体制を拡張。2012年度時点での海外での生産規模は、月産950万台体制と、2010年度実績の約6倍へと急拡大させることになる。この背景には、やはり海外におけるスマートフォン需要の急拡大を視野に入れている点が見逃せない。

 15年の歴史を持つALIVHが、スマートフォンの需要拡大を追い風に世界戦略を加速することになる。

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