新時代への突入をソフトランディングさせる、
「iPhone 4S」のデザイン
もちろん、それだけではない。私は、今回のiPhone 4Sでは、デザインを変えてはいけない理由があったのではないかと勘ぐっている。その理由は、同機の登場を境にiPhoneが新しい時代に突入するから、というものだ。
iPhone 4Sが採用するOSは「iOS 5」。10進数が基本の世界では「5」と言えばかなり意味がある大きい数字だ。実際、このiOS 5から、ついにiPhoneはPCフリー、つまりパソコンなしで単体で使えるようになる。
そう、iPhone 4Sは、iOS 5と新クラウドサービス「iCloud」を前提とした初めてのiPhoneなのだ。単体利用で懸念されるデータや写真のバックアップの問題も、iCloudの登場によってほぼ解決される。
こうした地殻変動のような大きな変化を起こす時、ユーザーが戸惑わないように、アップルはあえて奇をてらわず、同じデザインのまま新機種を出すことが多い。
たとえば、スティーブ・ジョブズがアップルに復活する前の時代であれば、CPUがモトローラのものからPowerPCに変わった最初のMacが、それまであったCentris、Quadraと同じデザインを採用していた。ジョブズの復帰以降であれば、PowerPCからインテルCPUに切り替わったときに最初に発売されたiMacが、やはり見た目を変えることなく、従来のiMacとそっくりなままだった。Mac OS Xを初めて搭載したMacもしかりだ。
同様にiPhone 4Sも、あらゆる意味でiPhone 4と変わらない形状である必然性があったのだ。
