Mac版「Microsoft Office」のアップデートを表明
両社の提携は、この和解を前提として考えるとわかりやすい。例えば、マイクロソフトがMac用のビジネス統合ソフト「Microsoft Office」を開発し、今後もWindows 版と同様にアップデートを続けていくと表明したこと。しばらくアップデートが止まっていたOfficeだが、マイクロソフトはすでに昨年末からMac用のOfficeを開発中であると発表しており、開発チームを補強して人員を大幅に追加している。現状を再確認し、将来を保証したのだ。
新聞の一面を飾った大スクリーンのビル・ゲイツ氏も実際に中継で語ったのはこのOfficeに関する話だ。ニューズウィーク日本版などではこの写真の横に「マイクロソフトの世界へようこそ」と書いているが、これがゲイツ氏の言葉だとはひと言も書いていない点に注意してほしい。実際にゲイツ氏はそんなことを言ってはいないのだ。
さらに両社は、注目を集めている言語「Java」に関して技術提携を実施し、両社の技術に互換性を持たせることを発表している。ただし、これもすでに今年5月のWWDCでアップルがほのめかしていたことだ。アップルは米サン・マイクロシステムズ社が開発したJavaの積極的な支持者だが、マイクロソフト独自のJavaもサポートすることを示唆していた。
提携内容の中で、一般メディアに最も大きく取り上げられたのは、マイクロソフトによる1億5000万ドルのアップル株式取得だ。これはアップルの全株式の5%ほどに相当するが、マイクロソフトは議決権を放棄しており、アップルの戦略や運営などに干渉はしない。
今回の提携で重要なのは、最近、業界標準の技術を後追いする姿の目立ったアップルがマイクロソフトと手を組んだことで、今後、積極的に新しい業界標準を作る──いわば主導権を握ったことだ。
この点についてジョブズは、「アップルとマイクロソフトを合わせればデスクトップ(パソコン用OS)の100%を掌握したことになる。つまり、今後両社が認めた標準は即業界標準となる」と語った。ジョブズのこの強い態度が今後、マイクロソフト以外のサードパーティーから反感を買う可能性は高く、予断を許さない。
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