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クラウドにフルスイング!KVHの熱い取り組みとは? 第3回

協力機関とともに血の通ったビジネス支援を模索する

被災地のビジネスに活力を!KVHが手がけるSaaSコンテスト

2011年10月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●KVH

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3・11の東日本大震災で被災した企業をビジネス面で支援すべく、KVHが約半年かけて進めるのが「東北応援アプリケーション開発コンテスト」だ。自らも被災地福島県の出身で、今回のプロジェクトを立案・推進しているKVHの藤田明美氏に、このコンテストにかける意気込みとその背景を聞いた。

 

人やモノだけじゃない継続的な支援とは?

 日本史上例を見ない未曾有の被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災から、すでに半年が経った。この間、多くの個人や企業が被災地に対する支援を行なってきたのは、ご存じのとおりだ。金銭面の支援はもちろん、食料や石油、建築資材といった被災者を直接助ける物資面での支援、あるいは人的なボランティアや精神面でのサポートなどさまざまな支援があった。

 通信サービスとデータセンター、クラウドなどの事業を展開するKVHも、こうした支援を積極的に進めてきた企業の1社だ。「KVH Cares」というプログラムを立ち上げ、日本赤十字を介した寄付や復興支援団体へのサービス無償提供、ボランティア休暇の設定、支援物資のマッチングサイトの運営などの被災地支援活動を行なってきた。

 また、5月からは原発事故の影響で避難区域に指定された福島県楢葉町の生活支援に注力している。KVH マーケティング本部の藤田明美氏は、「会津美里町に避難している住民の方々が、仮設住宅から町の中心まで移動するためのコミュニティバスを運用費用とともに提供したり、避難している児童のために夏服を提供してきました。また、会津美里町で子供たちとバーベキュー大会をやったりしました」と説明してくれた。

KVH マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーショングループ シニアマーケティングエグゼクティブ 藤田明美氏

 しかし、震災から半年経って、社内ではいつまでも「ないものを提供する」という形の支援でよいのか疑問が出てきたという。藤田氏は、「仙台にある企業の役員さんが話していたのは、家を流された社員に対して、地方公共団体、会社などから義援金という形で金銭をもらっても、それだけでは一時しのぎになるだけ。結局会社の継続がなければ、結局は仕事がなくなってしまう。本来であれば仕事や成果の報酬という形でないと、お金を渡すほうのも、もらうほうも心苦しいということでした」と話す。その結果、社内では長期的に地震や津波の被害から立ち直り、安定した収入を得て、生活していくためには、やはりビジネスを生みだし、続けていくための支援が必要ではないかという意見になったという。

 この結果として生まれたのが、「東北応援アプリケーション開発コンテスト」だ。具体的には、被災地のうちの3県(岩手県、宮城県、福島県)の拠点とするシステム開発やSaaS事業者などに開発中のWebアプリケーションを提示してもらい、そのサービス内容やビジネスモデル、システム構成などを比較。優秀な作品に対して表彰を行なうというものだ。KVHだけではなく、公立大学法人会津大学、東北イノベーションキャピタル株式会社、株式会社エクサ、株式会社NSTラボ、学校法人グロービス経営大学院などの地元の企業や団体も審査に参加することになっているほか、表彰式も仙台で行なわれる。コンテスト自体が地元とのキャッチボールとの上で実現されるのが1つの特徴だ。

真にビジネスを支援するアワードを協力企業・団体と共に提供

 こうしたアプリケーションのコンテストに至った経緯を、藤田氏は「弊社はIT企業なので、あくまでその分野でしか支援できません。しかし、われわれにはデータセンターがあって、通信サービスがあって、インターネットさえつなげればどこでも使えるクラウドを持っています。これらを活かせば、被災地のビジネスを支援することができると考えたのです」と説明する。

 情報を扱うITの分野では、被災地に対してできる支援も直接的ではないため、どうしても限界がある。食料や石油、移動手段がなくて困っている現状が目の前にあるのに、われわれには端末や情報、あるいはコンピュータリソースしか提供できない。こうした歯がゆさは、自分たちのようなIT関連媒体でも感じたことだ。しかし、多くのIT企業が知恵を凝らし、自分たちができる形での支援を進めてきた。今回のKVHのアプリケーションコンテストも、こうした歯がゆさから生まれた、同社なりの解答というわけだ。

 ユニークなのは、同社が賞金だけではなく、本格的にビジネス支援を前提にアワードを設定しているという点だ。まず、受賞者には商用SaaSのインフラとしてクラウドサービス「KVH IaaS」を提供する。「サービスを開始するのにインフラの準備が大変だという話もあるので、そこを助けるのが目的です」(藤田氏)とのことで、インターネット接続されたVPSや専用サーバーを3年間無償で利用できる。

 また、「地元のベンチャーの方には東北以外から仕事を取ってくるのは大変なので、やはり世の中に認知してもらえる手助けをしてほしいと強く言われました。コードを書ける人はいますが、PR資料を作るのも大変だという声もいただきました」ということで、KVHが参加するイベントへの出展のほか、サービスを紹介するPR資料やビデオコンテンツの作成も提供するという。今までリーチできなかった顧客に手が届くように、KVH自身が持てるリソースをフル活用して、血の通った支援を行なうのが狙いだ。さらに協力団体の学校法人グロービス経営大学院などからは経営者向けの研修なども提供される。

 コンテストの詳細は同社のサイトに掲出されているとおりで、アスキー・メディアワークスも審査チームに名前を連ねることとなった。参加登録は11月1日からとなっているので、興味のある人はまず応募要項を確認してもらいたい。

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