日本は“ガラパゴス”を超えられるか
海外展開といわれてつきまとうのは、ガラパゴス化という呪い。
呪いは“規格”に端を発する。ドコモは2G世代のケータイに、世界に先駆けて高品質な「PDC」を採用したが、世界は低品質でも安い「GSM」を選んだ。続く3G(UMTS)世代でも、ドコモはやはり世界に先駆け「FOMA」を採用したが、数年間は揮わなかった。
トヨタがマイクロソフトとの提携を考えたのは、その呪いを避けるためともいわれる。トヨタは2002年に「G-BOOK」という通信端末を独自に開発していたが、世界で展開するにはやはり不安が残る。そしてトヨタは“米国標準”であるマイクロソフトを選んだのだ。
一方のドコモは、LTEで“先行型”の反省を活かそうとしている。
昨年12月にLTE規格の「Xi」(クロッシィ)を打ち出したドコモは、LTEで先行する米ベライゾンを追う形で4G通信に参入している(関連記事)。多少遅れをとっても、ユーザーが“使える”と思えるタイミングで製品化する方向に舵をとった。
ドコモは現在、「電気自動車」「情報端末」間で使われる通信規格を策定しようとしている。実証実験は今年1月に開始した。これは充電器の共通規格「CHAdeMO」をベースにしたものだ。CHAdeMOは日本で開発され、アメリカでも使われ始めている。
課題はやはり「使えるかどうか」
3社が政府に期待しているのは、規制緩和だ。
たとえば、充電器を設置する際には消防法が関わってくる。電気自動車と自治体をつなぎ、電力情報/交通情報を一元管理するなら、道路交通システムを改訂する必要もある。いずれにせよプロジェクトの導入は市区町村レベルの話。規制緩和が不可欠だ。
もとをたどれば2000年、森喜朗内閣時に打ち出された「E-Japan戦略」にも、政府機能をネットワーク化して「災害時の危機管理能力を強化する」という条項があった。ソフトバンクがADSLを普及させたように、やはり産官がうまく連携しなければ話は進まない。
とはいえ、“メーカー大連合”によるプロジェクトと言われると、鳴りもの入りではじまり、失敗に終わってしまうパターンが目に浮かびやすい。そのとき何より重要なのは、私たちユーザーをどのようにとらえ、関わっていくかだ。
もちろん世界展開は重要だ。だが現在、私たちが「必要」とするものは、クラウド上のデータのように、あちらこちらへ分散している。いつ、どこで、なぜ、電力が、自動車が必要なのか? それをマスプロ時代のようにざっくりとまとめるのは難しいだろう。
世界展開しながらも、いつでも個人を見つめていること。そして最適な技術を使うこと。それができるのは日産なのか、トヨタなのか、それともまったく別のメーカーなのか。
戦後日本を支えてきた“クルマ社会”が今、転機を迎えている。
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