なぜ日産/ドコモ/NECの3社は手を組むのか
スマートシティ構想の仕組みはこうだ。
(1) 家庭/企業/市区町村が再生エネルギーで自家発電する
(2) 電気を蓄電池にためて「何kWhあるか」の情報を管理/共有する
(3) 電気が必要な時間/場所に優先的に送電する(販売する)
これを現在の電力会社にプラスアルファするもの。IT技術により電力を管理する、このような技術は「スマートグリッド」とも呼ばれており、必要になる技術は、大きく「通信技術/情報処理技術/蓄電技術」の3つ。それを今回の3社で分担しようという試みだ。
ドコモが提供するのは、3G回線とLTE(Long Term Evolution)による4Gの通信環境と、HEMSのような電力管理端末。NECが提供するのは、蓄電池の技術と、蓄電のためのシステムおよびインフラ。そしてシステムを使うデバイスが、日産の電気自動車だ。
3社はこれを東日本の“復興基盤”にしたいと考えている。
たとえばドコモには地震発生時、電話がつながらなくなったという苦い経験がある。大規模な停電が発生し、各地の基地局に電力が足りなくなったためだ。基地局のバッテリーは3時間で切れてしまう。1ヵ所の発電施設だけには頼れないという意識を強めた。
実証実験も進んでいる。総務省主導の「スマート・ネットワークプロジェクト」の一環だ。
日産は積水ハウスと協力し、昨年11月に「観環居」を開始した。HEMS+電気自動車用コンセント+日産PCSを導入したモデルハウスだ。総務省はこのほかにも、横浜みなとみらい21地区でスマートグリッドの様々な実証実験をしている。
アメリカを選んだトヨタ、日本を選んだ日産
今春、スマートグリッドの先鞭をつけたのはトヨタだった。
トヨタはスマートグリッドシステム「トヨタスマートセンター」を開発、世界展開をねらっている。鍵はマイクロソフトの「Windows Azure」だ。トヨタは今年4月、自動車向け情報通信(テレマティクス)分野でマイクロソフトと提携している。年間10億円(約1200万ドル)を投資し、2015年に世界規模の通信サービスを開始する予定だ。
トヨタスマートセンターは実証実験も進んでいる。トヨタは昨年9月から、独自に「六ヶ所村スマートグリッド実証実験」を開始。住宅にはグループ会社のトヨタホームを使い、スマートグリッドモデルの自社開発をねらう。
一方で今回の3社は、すべての技術が“共同”そして“日本産”だ。
3社には電気自動車およびスマートシティ構想を鍵に、日本の技術を世界市場に向けて展開していきたいという願いがある。日産自動車 常務の篠原 稔氏は、それを“輸出ではなく、適用”という言葉であらわした。
「クルマは海外現地で作るもの。部品メーカーをパートナーに、日本の技術を“適用”する。旧態依然とした『日本でものを作って輸出しましょう』では立ち行かない」
単に現地のメーカーにモノを作ってもらうのではなく、技術そのものを伝えていく。つまり、“モノ”ではなく“ものづくり”そのものを輸出していくという考えが近い。日本人がいかにも苦手そうなこの考えが、これからの“輸出”の鍵になる。
ともあれ篠原氏はスマートシティについて、「まずは日本で作れるかが第一。それをオープンにすれば海外が参加したいと言ってきてくれるだろう」とも語る。
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