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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第99回

マスコミが報じない“カルト”を記事に 「やや日刊カルト新聞」

2011年10月07日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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抗議があったら謝ります。でも、また書きますよ

―― そのスタンスの本気ぶりは、2011年6月に掲載した「謝罪記事」に現れていますね。あれは、相当な覚悟と反響のシミュレーションができていないと書けない文章だと思います。

藤倉 ありがとうございます。あれは仕事の経験から得た考えなんですけど、「(正当な抗議が来たら)もう土下座して謝ります。でも、間違ってないと考えている部分に限っては、また書く」というスタンスでやっているんです。

 一部を抜粋すると、サイトに載せたマンガの中で、団体の代表が漫画のキャラに似ていると、まあ嘲笑的なニュアンスで書いたわけです。それを団体が見たら、誹謗中傷と感じるのは僕もよく分かる。だから、クレームが来たらそこは謝罪すると。でも、世間一般から見て、代表がそのキャラに似ているのは確かだから、また機会があったら「似ている」とは書くでしょうね。それでまた抗議があったら、謝るべき部分は謝ると。

「クレームがあれば謝罪する。でも、間違ってないと考えている部分限っては書きつづける」というスタンスという


―― 「すいません、もうしません」ではなく、「すいません」オンリー。

藤倉 そうなんです。あの……先ほどカルトか否かを教義によって判断しないと言いましたが、それはそれとしてトンデモな教義の宗教というのは実際あるわけですよ。

 宇宙人とか坂本龍馬とかの霊が降臨してきて何か指図したり、オバマ大統領や他の宗教の教祖など生きている人の霊どころか、教祖の嫁の霊まで降りてきて、教祖や教団幹部と罵り合いを繰り広げたり。それは、やっぱり明らかに変じゃないですか。僕らには、変なものを見て変だと笑う権利があると思うんです。それはどんなに文句を言われてもやめるつもりはないですね。でも、それを変だと笑っていたら彼らが怒るのも当然。だから、「すいません」とは伝えるという感じです。

 このスタンスを表現するためにも、新聞ぶったニュースブログという体裁は便利なんです。主筆である自分を道化に、謝罪をある意味ネタにできるというところが(笑)。


―― あー、なるほど。謝罪文は「仕方なく」ではなく、ねらって書いているんですね。確かに、隙をついてカウンターを打ち込もうという攻撃的な意欲ががひしひしと伝わります。件の謝罪記事でも、教団と代表への誹謗中傷だけ抗議して、信者に対する表現を素通りしているところを突いて、「教えを信じお布施をしたにも関わらず、教団に守ってもらえないのでは、信者が気の毒です」と書いていますし。

藤倉 相手は、面倒くせえなーと思っているでしょうね(笑)。ただ、僕も相手を困らせたり、読者を笑わせたりするためだけに書いているわけではないんですよ。ああいう謝罪文を通して、カルト的な集団の本音を一般の人に知らせたいという思いが結構まじめにありまして。

 これまで様々なカルト団体を取材してきて思うんですが、やっぱり信者がないがしろにされている場合が多いんですよ。せっかく一生懸命お布施や奉仕活動で組織に尽くしても、教団やセミナー側はその人のことを全然考えてくれていないという。そういう「カルトのカルトたる所以」みたいなものが伝えられれば、してやったりなんですよね。


―― そういう高度な仕掛けを成功させるには、一言一句に神経を尖らせる必要がありますよね。たとえば「○○社は、悪いことしてそうだからカルト」と「もし悪いことしているなら、○○社はカルト」という表現は、防御力が段違いじゃないですか。そして、カルト新聞はまず前者の書き方をしない。このあたりのテクニックはどうやって身につけたんですか?

藤倉 そこはサイトをやっている間に身についていった感じですね、学生時代から。最初はとにかく分かりやすい文章、誤解を生まない文章を書くように心がけました。訴えられても裁判で負けないような書き方をしようとすると、自然とそうなる。あと、もうひとつ大きかったのは、最初から当事者の視点ではなかったことだと思います。被害者自身による告発サイトみたいに、「こんな団体がある。けしからんバカヤロー」みたいなテンションになったことがないので、根拠の切り分けが難しい感情的な表現に悩まされないで済んでいますからね。いや、本当本業に生きています。いい経験させてもらっていますね。

前身ブログの頃から、強いクレームを受けたらサイトに全文掲載するスタンスをとっているという。「抗議のやりとりをガラス張りにして、あちらが嫌がるような騒ぎ方をしてやる。それが彼らのストッパーになるんです。理不尽なクレームなら、お前らが痛い目遭うぞっていう(笑)」とのこと

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