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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第120回

謎のプラットフォームが加わったXeon最新ロードマップ

2011年10月03日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Sandy Bridge-ENとSandy Bridge EPを
混在させるCrystal Forest Server

 不可解なのが、図4に示した2プロセッサー構成の「Crystal Forest Server」である。Sandy Bridge-ENとSandy Bridge EP、つまりLGA1356とLGA2011が混在するという、非常に不思議な構成になっている。

図4 Crystal Forest Serverのシステム構成。左右でCPUが異なる

 そもそも2種類のCPUを混在させる意味が謎だ。当然ながらメモリーチャンネル数が異なるから、Sandy Bridge-ENはDDR3×3チャンネル、Sandy Bridge-EPはDDR3×4チャンネルという非対称構成になる。一応ブロック図を見る限り、プライマリーCPUはLGA2011のSandy Bridge-EPになるようで、Sandy Bridge-ENの側はオプション扱いらしい。それにしても、こうした構成になる必然性がいまいち見えてこないのは事実だ。インテルはすでに、この構成のリファレンスとして「Shumway」というコード名のボードを完成させており、OEMへの提供などを開始しているもようだ。

 「何ぜこんなものを?」という疑問は、正式発表前の現時点では聞くわけにもいかないのだが、可能性は2つほど思い浮かぶ。ひとつはSandy Bridge-ENとSandy Bridge-EPで、ややPCI Express周りの構成が異なるらしい点。例えば図4の場合、Sandy Bridge-EN側の外部向けのPCI Express x8レーンは、(別途外部にホットプラグコントローラーを用意したうえで)ホットプラグ/アンプラグの動作をサポートしているが、Sandy Bridge-EP側にはこうした配慮がない。

 純粋に技術的な観点で言えば、PCI Express Gen3の「Base Specification」(基本仕様)を“完璧に”満たしていれば、あとはホットプラグ/アンプラグのコントローラーを外付けで用意するだけで実現できるはずだが、このあたりは実装にも関わってくる部分でもある。Base Specificationではホットプラグ/アンプラグそのものがオプション扱いなので、実装の必要は必ずしもないからだ。

 そのためこのあたりが異なってしまい、本当ならSandy Bridge-EPだけで構成したいところに、Sandy Bridge-ENを入れないとホットプラグ/アンプラグに対応できないという可能性が考えられる。

 もうひとつの可能性が、FPGAアクセラレーターへの対応だ。2006年のIDFで、当時Digital Enterprise Groupを率いていたパット・ゲルシンガー氏が発表したのが、FPGAベースのアクセラレーターであった。この仕組みを使うことで、例えば金融向けシミュレーションが数十倍高速化された、なんて話もあった。

当時のXeonのソケットに、そのままFPGAを装着できるという仕組み。インテルはFSBそのものを特許で守って他社にライセンスしていなかったが、アルテラやザイリンクスといったFPGAベンダーにこのFSBをライセンス供与。両社はこれを自社の製品に組み込めるようになった

 「GPGPUを使えばいいじゃない?」と思われる方もいるだろうが、今のPCI Express経由のGPGPUの場合は以下のような問題がある。FSB経由ならば、こうした問題が解決できる。

  • PCI Expressを経由するため、メモリーアクセスのための帯域が狭く、また遅延が多い。
  • キャッシュコヒーレンシ性がないため、CPUと協調して処理するようなケースで、著しく性能が劣化しやすい。

 ただその一方で、この当時ですらXeonのFSBはすでに800MHzに達しているにも関わらず、FPGAを使う場合は533MHzに動作が制限されるなどいろいろ使いにくい面もあった。しかもこの後インテルはNehalem世代で、従来のFSB方式からQPIに接続方式を変更してしまっている。

 そのため、「折角のFPGAライセンスが無駄になってしまうな」と思ったのだが、9月に開かれたIDF 2011でのザイリンクスブースでは、QPIのバスライセンスを取得したFPGAの動作デモが行なわれていた。問題は、まだこのFPGAライセンスがLGA2011には対応していないことで、今のところは(Nehalem/Westmere同様の)6.4GT/秒の速度で、QPI Linkも1本だけに限られるようだ。

QPIで接続するザイリンクス製FPGAのデモ。現状はNehalemベースのLGA1366対応のみという

 この構成は、図4と非常にマッチする。Sandy Bridge-ENの代わりにFPGAを入れれば、Sandy Bridge-EP+FPGAという、かなり現実的な構成になるからだ。PCI Express Gen2のレーンは業界標準のもの(=ライセンスには制限されない)だからそのまま利用できるし、メモリーを使わないなら何も挿さなければいい。DMIはもともとオプション扱いだから問題ない。

 厳密に言えばパッケージは異なるが、LGA1356はLGA1366と同じパッケージ(誤挿入防止用に切り欠きの位置は異なる)でピンの配置が異なるだけだから、ライセンスに抵触しない可能性が高い。つまりCrystal Forest Serverは「FPGAアクセラレーターを使うことを考慮した構成」という可能性もある。

 実際のところ、この構成にどんな意味があるのか? というのはもう少しすれば製品発表という形でわかりそうだ。とりあえず2011年~2012年のインテルのサーバーマーケットは、(既存のLGA1366と合わせて)3種類のソケットが、しかも複雑に入り乱れる構造になることだけは間違いなさそうだ。

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