Webサイトを訪れるユーザーは、必ずしもWeb制作者と同じような能力や環境を持っているとは限りません。PCの操作に習熟し、日常的にインターネットを利用している人もいれば、基本的な操作に不安を持つ人もいますし、高齢者や視覚障がい者のように視力が弱い人や、肢体不自由者など、マウスよる細かい操作が難しい人もいます。
アクセシビリティとは、年齢や障害の有無、能力、利用環境などに関係なく、すべてのユーザーがWebサイトの情報にアクセスできることを指します。Webサイトの制作にあたっては、アクセシビリティに配慮し、誰もが目的の情報を得られるようにする必要があります。特に社会的役割が大きい官公庁・公共機関や、企業のWebサイトでは、アクセシビリティへの対応が強く求められています。
アクセシビリティ対応の具体例
アクセシビリティ対応の典型的な例としては、問い合わせフォームが挙げられます。たとえば、入力が必須の項目に対して赤色を使い、「赤は必須項目です」と示すフォームをよく見かけますが、色覚障がいを持つユーザーに情報が伝わらない可能性があります。この場合は、入力が必須の項目には色だけでなく、テキストでも「必須」と明記する、といった対応が考えられます。
ほかにも、視力が弱いユーザーが情報を得られるように、音声ブラウザーやスクリーンリーダーの利用を想定して、動画や画像に対してテキストによる代替情報を提供したり、読み上げ順に配慮してテキストを記述するといった対応が挙げられます。
アクセシビリティのガイドライン
アクセシビリティを向上させるために、いくつかのガイドラインや規格が定められています。国内では日本工業規格が定める「JIS X 8341-3」※1、海外ではW3Cの内部組織である「WAI」※2による「ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)」※3があり、広く利用されています。
2008年12月には、世界各国との協調が図られた新しいガイドライン「WCAG 2.0」がW3Cにより勧告され、これを受けて国内でもWCAG 2.0の基本的な概念や内容を踏襲した規格「JIS X 8341-3:2010」が2010年8月に公示されました。
WCAGやJIS X 8341-3および関連文書には、アクセシビリティ対応の考え方から具体例、HTMLでの正しい文書構造でのマークアップなど、Webサイト制作の基本的な部分が多く含まれています。Webサイト制作にあたってはあらかじめこうしたガイドラインを参照し、アクセシビリティに対応するよう心がけましょう。
※1 正式には「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器・ソフトウェア・サービス-第3部:ウェブコンテンツ」といいます。通称「ウェブコンテンツJIS」とも呼ばれています。
※2 Web Accessibility Initiative(WAI)
※3 Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.0 / ・日本語訳
著者:アンティー・ファクトリー
アンティー・ファクトリーはWeb戦略だけでなく、タッチパネルやスマートフォンなどの各種インターフェイス・アプリケーション開発、次世代広告コミュニケーションの設計や開発を行っています。ワールドワイドなクリエイティブを展開し、発展しつづける会社です。