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週刊 PC&周辺機器レビュー 第118回

一回り大きくなった一体型 新VALUESTAR Nの実力は?

2011年09月30日 12時00分更新

文● 池田圭一

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 テレビ機能としては、3波対応のダブルチューナーを搭載。再生や録画は「ひかりTV」サービスにも対応するなど定評のある、同社のTV視聴・録画ソフト「SmartVision」で行なう。出荷時のHDD空き容量には、デジタルハイビジョン放送を約178時間分録画できる。

「sound by YAMAHA」のロゴが珍しい。本体下部のパンチングメタル部分は、ステレオスピーカーユニットが収納されている

 本体機能として特に記しておきたいのが、本体内蔵のスピーカーだ。ディスプレー下部のパンチングパネルの奥は、ほぼすべてがスピーカーの共鳴空間ユニットで占められている。このユニットには、ヤマハが小型音響装置向けに新たに開発した「Flat Radial Port」(FR-Port)と呼ばれる無風バスレフポートが設けられていて、スピーカー口径3cm(3W)とは思えないほどの中低音が出るのだ。音量を上げても音割れやビビリ音がなく、さすがに重低音とはいかないものの、素直な音が出ている。

偏光板方式の3Dステレオ表示
その見ごたえは?

 VALUESTAR Nの中でも、VN790/FSだけが搭載する機能が3Dステレオ表示機能である。パソコンの3Dステレオ表示で一般的なのは、120Hzの高速表示液晶パネルを用いて、右目用と左目用の映像を交互に表示する「フレームシーケンシャル方式」だ。VN790/FSの3Dステレオ表示はこれとは異なり、「Micro-polarizer LCD」(微細偏光板液晶)を用いた「偏光フィルタ方式」である。

付属の軽量3Dメガネ。偏光方向が直交するように偏光板が入っている

3Dステレオ表示中の画面を拡大してみた。もともと1個のひし形の物体が、1ライン置きに左右用の映像として表示されている

 「偏光フィルタ方式」で使うメガネは、偏光方向が直交するように偏光板が入った軽量のメガネだ。上下方向に1ライン単位で、偏光方向を90度回転させる微細な偏光板を貼り、右目用の映像と左目用の映像を1ライン置きに表示する。映像の解像度は低下するものの、ディスプレーやグラフィックス機能に対する3Dステレオ表示の負荷が軽いので、性能の低いCPU内蔵グラフィックスでも3Dステレオ表示を実現できるというわけだ。

3Dステレオ表示に対応する「CyberLink PowerDVD 3D」、3DディスプレーにはMicro-polarizer LCDを選択

 VN790/FSでは、付属ソフト「CyberLink PowerDVD 3D」がBD 3Dの3Dステレオ表示機能を持つ。サイドバイサイド、オーバーアンダー(トップボトム)方式で記録された3D映像のほか、既存の2D映像の3D変換も可能だ。テレビ視聴ソフトのSmartVisionも、3Dステレオ表示に対応する。

 いくつかのコンテンツを試してみたところ、2DのBDソフトを始め、デジタルカメラで撮影したHD動画や、ネット動画(キャッシュから抜き出した動画ファイル)の3Dステレオ表示を楽しむことができた。3Dメガネも軽量で、長時間の3D視聴もそれほど疲れない。

3Dシーンの深度(奥行き感など)は、リアルタイムに調整できる

 しかし、擬似3D化アルゴリズムの関係か、あるいは偏光板方式のせいなのか、筆者の目では時折、左右にブレた映像となってしまいPowerDVDでの3D効果は、それほど感じられなかった。フレームシーケンシャル方式と比べると、奥行き感や飛び出して見えるという印象がなく、言い方は悪いが「厚みのある紙芝居」といったように見えた。

 生物学的にも、偏光の見え方には個人差が大きいことが知られている。3Dステレオ表示を期待するなら、店頭デモなどで自分に合うかどうかを事前に確認した方がいいだろう。

 3波対応ダブルチューナーに大容量HDDとBDドライブ、フルHD表示のIPS液晶パネルとくれば、主たるターゲットは「テレビパソコン」を求める層で間違いないだろう。そこに高速CPUと多めのメモリーを搭載して、同社直販サイトでは同等の製品である「VALUESTAR G タイプN」が21万円から、実売の最安値なら17万円前後となっている。

 これだけのスペックを揃えて17万円ならば、確かにお買い得だ。3Dゲームには不向きだが、普通に家族で使うのなら十分過ぎる性能を有している。

 3Dステレオ表示に関しては、最適な視聴ポジションが限られることからも個人利用を想定しているはず。3Dステレオ表示が不要というなら、同スペックで3Dステレオ表示機能のない「VN770/FS」でもよいだろう(こちらはカラーバリエーションも3色から選べる)。こちらなら、実売最安価で2万5000円ほど安く手に入る。

VALUESTAR N VN790/FS の主な仕様
CPU Core i7-2670QM(2.20GHz)
メモリー 8GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 21.5型 1920×1080ドット 3D対応
ストレージ HDD 2TB
光学ドライブ 記録型BDドライブ(BDXL対応)
テレビ機能 地上/BS/110度CSデジタル放送×2
無線通信機能 IEEE 802.11 b/g/n
インターフェース USB 3.0×2、USB 2.0×5、デュアルメモリースロット、HDMI入力、10/100/1000Base-T LANなど
サイズ 幅534×奥行き193×高さ428mm(最小傾斜時)
質量 約8.9kg
OS Windows 7 Home Premium SP1 64bit版
予想実売価格 22万円前後

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筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


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