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2011年のビジネスプリンター&複合機大集合 第13回

キヤノン、キヤノンITソリューション、オラクルのグローバル協業

複合機とビジネスアプリケーションをつないで生まれるもの

2011年09月27日 09時00分更新

文● 渡邊利和

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9月26日、キヤノン、キヤノンITソリューションズ、米オラクル、日本オラクルは、両社グループの強みを活かした「イメージング技術」と「ビジネスアプリケーション」の融合による新しい価値創造を目指し、オフィス向けソリューション分野で協業することに合意したと発表した。

紙データをビジネスに直接取り込む

 両社が掲げる「イメージング技術とビジネスアプリケーションの融合」というメッセージは、具体的にはキヤノンのオフィス向け複合機をビジネスアプリケーションによるワークフローの中に組み込み、密接な連携を実現するという意味だと理解してよいだろう。

 まず概要説明を行なったキヤノンの常務取締役 映像事務機事業本部長の中岡 正喜氏は、同社の複合機のユーザーからの要望として「業務システム連携」「クラウドサービス」「マネージドサービス」の3点が特に目立つという。これらを提供していくために必要な要素として同氏が挙げたのが「ソフトウェアのコア技術拡充」と「グローバルトッププレイヤーとの協業」だ。その結果がオラクルとの協業であり、同氏は「映像系技術に強みを持つキヤノンとビジネスアプリケーションに強いオラクルの協業によって、お互いの強みを活かした新しい価値を顧客に提供する」ことが狙いだと語った。

キヤノンの常務取締役 映像事務機事業本部長の中岡 正喜氏

事務機事業戦略におけるオラクルとの協業のねらい 

 一方、日本オラクルの代表執行役社長 最高経営責任者の遠藤 隆雄氏は、同社が展開するExadata/Exalogicといった「Engineered Systems」に言及し、IT環境が複雑化してコストの増大を招いていることから、「より最適化されたシステムをメーカー自身が提供し、SIに責任を押しつけない」ことが求められるとした上で、今回の提携を「企業の枠を越えた最適化を横の連携で実現する」例だと位置づけた。もっとも、今回の協業の具体的な成果となる「SOAベースのイメージングプラットフォーム」は、SIやユーザー自身によるアプリケーション開発を前提とした開発プラットフォームなので、これをEngineered Sysmtesと同列に置くのはさすがに言い過ぎだとは思うが。

日本オラクルの代表執行役社長 最高経営責任者の遠藤 隆雄氏

オラクルのコーポレート戦略「Engeenred Systems」

 最後に、実際に開発を担当したキヤノンITソリューションズの取締役 常務執行役員 事業企画本部長の郷 慶蔵氏が、協業の具体的な成果物として発売予定の「SOAベースのイメージングプラットフォーム」(仮称)についての説明を行なった。名称からも分かるとおり、基本はSOAによる相互連携技術に基づいたコンポーネント群で、オラクルのミドルウェアとキヤノンの複合機を接続するために必要な「デバイス連携アダプター」と「イメージング処理アダプター」を開発した上で、オラクルのBPELエンジンやディレクトリサービス、コンテンツリポジトリなど関連するソフトウェアのライセンスなどが組み合わされた開発プラットフォームとなる。あらかじめ必要なアダプタが用意されていることで、業務アプリケーションの開発が低コスト/短納期で行なえることがメリットだ。

キヤノンITソリューションズの取締役 常務執行役員 事業企画本部長 郷 慶蔵氏

新製品とSIの位置づけ

 なお、キヤノンITソリューションズはキヤノングループの企業の大半がキヤノン向けのビジネスをしている中で唯一の外販主体の企業としてSI開発やパッケージ開発、ITソリューション提供に取り組んでいるグループ内でもユニークな企業だという。それと、SOAによる連携ということからも想像できるが、「SOAベースのイメージングプラットフォーム」は汎用的な接続性を提供するものであり、キヤノン/オラクルに限定されず「ゼロックスやリコーの複合機とSAP ERPを接続するためにも使える」とのことだ。

Javaが結ぶ両社の関係

 デジタル化された情報であれば、ITシステムの内部でいかようにも処理できるが、紙ベースの書類が介在したとたんにITシステム側からは手出しができなくなるのが現状だ。しかしながら、現実の業務においては完全なペーパーレスが実現されていることはむしろ希で、通常は何らかの紙ベースのドキュメントが併存しているだろう。たとえば、企業間の取引で発注/注文が紙ベースで届くことは現在においても珍しいこととは言えまい。こうした取引の情報は、現状であれば誰かがERPやSFAなどのビジネスアプリケーションに入力することでデジタル化し、それ以後の処理はITシステム内部で進んでいく、という手段を採る例が大半だと思われるが、人手による入力の負担を減らしたいという要望が出るのも当然だ。オフィスで広く普及している複合機は、コピー機、プリンター、FAX、スキャナーといった機能を備えており、いわば紙ベースの情報の総合的な入出力デバイスとなっている。そこで、このデバイスを活用してビジネスアプリケーションと直接連携できるようにすることで効率化を図れないか、という発想が両社の発想の根本部分だ。

 一方、オラクルとキヤノンという組み合わせは、実はそれに先立つサン・マイクロシステムズとキヤノンの協力関係の延長だと考えれば理解しやすいだろう。キヤノンの複合機では、内部でJava技術を活用しており、サンとは2003年からJavaの改善/進化を共同で推進してきた歴史があるという。サンがオラクルに買収されたことでこの協力関係もオラクルに引き継がれた、ということになるのだが、単なる関係の継続から一歩踏み出し、サン時代にはあまり前面に出ることはなかったビジネスアプリケーションとの連携を積極的に実現していくというところまで視野に入れたのが今回の協業発表だということになる。

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