Ivy Bridge世代で導入されるもうひとつの省電力化技術が、「Panel Self Refresh Technology」(PSR)である。ディスプレーに画面を表示する際には、例え画面に一切変化がなくても、メモリーから画面を読み出してGPUのディスプレーコントローラーからディスプレー側に出力し、画面を書き換えるという処理が毎秒何十回も行なわれている。これに要する消費電力を削減しようというのが、PSRである。
やることは単純で、画面の変化がない場合はディスプレー側だけで画面を書き換える。これにより、メモリーからの読み出しやGPUの動作に必要な電力が削減される。インテルの試算によれば、ゲームや動画再生のようなアプリケーションでなければ、動作時間の80%弱から95%程度は、画面の書き換えがないという。PSRを細かく制御できれば、バッテリー駆動時間の延長に効果が期待できそうだ。
薄型軽量だけじゃない!
Ultrabookは快適さも違う
Ultrabookと言えば、薄型軽量とバッテリー駆動時間といったモバイルノートの重要ポイントに注目が集まるが、快適さの向上も重要な改良点である。Ivy BridgeベースのUltrabookには、以下のような快適さを高める技術が導入される。
まず「Intel Smart Connect Technology」と呼ばれる、ネットワーク接続技術がある。これはスマートフォンの待受状態と同様に、パソコンがスタンバイ状態にあるときでも、無線LANや3G通信機能を使って定期的にインターネットに接続して、メールやソーシャルメディアの更新情報を取得するという技術である。
同様の技術は、マイクロソフトもWindows 8で「Connected Standby」として導入する予定だ。Smart Connect Technologyはこれと対立する技術ではなく、インテルプラットフォームを使うWindows 8搭載パソコンであれば、この技術を利用してデータの同期や更新を可能とするようになるだろう。
両者の違いといえば、インテルの技術はWindows 8以外のOS(例えばWindows 7やAndroid)もサポートする必要がある一方で、マイクロソフトの技術はインテルプラットフォーム以外の無線LANモジュールもサポートする必要がある、という点だろう。
「Intel Rapid Start Technology」は、低消費電力化とパソコンの復帰高速化を兼ねた技術である。Rapid Start Technologyでのスリープ状態は、OSからは既存のスリープ状態(S3)と同様に見えるが、内部ではメインメモリーの内容を不揮発性メモリー(例えば内蔵フラッシュメモリー)に書き出しておく。不揮発メモリーからの読み出しはHDDより高速なので、復帰時にかかる時間も短くて済むというわけだ。
もうひとつは、すでにSandy Bridge CPU+Intel Z68チップセット搭載マザーボードで実現されている、「Intel Smart Response Technology」である。SSDや別の内蔵フラッシュメモリーをHDDのキャッシュとして利用することで、HDDアクセスの遅さをカバーするという技術で、これもUltrabookに適用される。内蔵フラッシュメモリーは、Rapid Start Technologyの書き出し領域にも利用できるだろう。
Ivy Bridge採用のUltrabookが登場するのは、早くても2012年初頭になる。来年のモバイルノートにどんな製品が登場するのか。今から楽しみだ。