ネットワーク機器や携帯電話なども
市場広がるXScale
XScaleはPDAに採用されたとはいえ、インテルとしてはPDA市場のみを追っていたわけではない。上の写真は2002年にインテルが発表会で披露したプレゼンテーション中の1枚だ。当時インテルはPCとサーバーのみならず、「Internet Personal Client」(インターネット端末)とネットワーク機器向けプロセッサーにも積極的に製品を投入していた。このうち、インターネット端末向けプロセッサーにはPXA2xxシリーズを供給していたのだが、これとは別にネットワークプロセッサー向けには、「IXP」というシリーズを開発していた。
IXPの最初の製品は、2000年に投入された「IXP1200」である。「Micro-engine」という独自構造のパケット処理専用プロセッサーを複数個搭載して、プログラミングにより自由に処理を変えられるというこの製品。元はと言えば1996年からDECで開発されていた製品だった。
IXP1200の場合、6つのMicro-engineとこれを制御するStrongARMを搭載する構造だった。これが2002年には、Micro-engineを12個/8個に増やすとともに、制御プロセッサーをXScaleに置き換えた「IXP2800/2400」シリーズに進化する。ただこのIXP1200/2x00シリーズは、どちらかというとエッジルーター~コアルーター向けを狙ったややハイエンド品であった。
低価格帯の製品向けでは、XScaleコアに簡単なルーティング関連インターフェースと暗号化処理アクセラレーターなどを集積した、「IXP400」シリーズという製品が用意された。日本でもNTT東西のBフレッツ用ルーターに採用されたり、海外でもLinksys(当時、後にシスコに買収)などのベンダーから、多くの搭載製品が出ていた。
また先のスライドにもあるように、携帯電話はインターネット端末に含まれているのだが、これに対応した製品が2003年2月に発表された「PXA800」である。同社の位置付けでは、PXA800は2.5G携帯電話向けのワンチップソリューションであり、これを足がかりに携帯電話の市場にも本格的に参入することを予定していた。
これに加えて、XScaleへのリソース配分の一環として縮小~消滅したIntel i960の代替として、ストレージ製品向けプロセッサーとしてもXScaleは利用された。
2002年2月に発表された「Intel IOP321」(Intel 80321)が、XScaleを最初に搭載したI/Oプロセッサーである。このIOP320シリーズに続いて、「IOP340/320」シリーズも順次登場する。最終的に登場した「IOP348」(80348)は、1.2GHzで動くXScaleコアに、x8のPCI Expressと133MHzのPCI-Xをサポート。メモリーは32/64bit DDR2に対応して、最大4GBまでの利用できるという、ちょっと昔のPC向けCPUに近いレベルまでパワーアップされた。
このIOPシリーズに近いが、異なる用途向けに用意されたのが「IXC1100」である。こちらはXScaleをベースとした「コントロール・バックプレーン・プロセッサー」というもので、Xeonなどを使った大規模な通信向けコントローラーのバックプレーン(サーバーモジュール同士を接続する広帯域なバス)を制御するものである。そのほかに、インテルが家電向けに設計した最初のSoC「Intel CE 2110」にも、XScaleは採用された。

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