四本淑三の「ミュージック・ギークス！」 第72回

知らない動画がザクザク見つかる「JamCloud」が楽しすぎる

タワレコに行ってCDを買いに行く必要はない

――　既にYouTubeからトップミュージシャンが出てきていると。

スティーヴン　とはいえ、彼らのようなYouTubeミュージシャンはまだ出てきたばかりです。重要なのはやっぱり、そういうインディペンデント・ミュージシャンを見つける方法が変わったってこと。今までみたいに、タワレコにCDを買いに行く必要はないわけですよ。その代わりにJamCloudがあるわけですから。

――　おっ、なるほどね。JamCloudはYouTubeで新しい音楽を探すための場所なんだ。

スティーヴン　turntable.fmはそこがなかった。まだデビューしていないインディペンデントなミュージシャンは、ほとんどいなかったわけでしょう？　すばらしいレコーディングをして、動画を編集し、アップロードし、自分で曲を売っているようなミュージシャンが、YouTubeにはたくさんいるのに。

――　確かにそこは不満でした。「曲を使わされている」ような感じがしてね。

スティーヴン　この間、フランスのブロガーがJamCloudでフランスの曲をかけていたんですけど、それが超かっこよかったんですよ。聞いてみると、それもやっぱりYouTubeのインディペンデントミュージシャンだったんですよね。フランスでもアメリカでも、インディペンデントでいい曲って今や世界中にあるわけです。そこで普通に（国内で流通している）音楽を聴いているだけだと、どうしてもミッシング・リンク（関連性がなくなるところ）が出てきてしまう。でも、JamCloudならそれを解消できると思うんですよね。普段からYouTubeで音楽を聴いている音楽好きが集まってくればね。

――　オーケー、よくわかりました。ところでスティーヴン、音楽をやってたことは？

スティーヴン　7才から14才まで7年間、「ピアノのお稽古」を。でも、それ以上にDJの方が長くやってます。20歳くらいから今まで18年間ずーっと。カナダ、メキシコ、ハワイ、いろんなところのレイヴとかクラブミュージックとかをかけてきたわけです。

――　それはすばらしい！

スティーヴン　ぼくも音楽好きってわけですね。新しい曲をディグり（探し）まくるタイプのDJがいるじゃないですか、ぼくがまさにそうだったんです。誰も知らない、かっこいい曲をかけるのがクールだった。実はJamCloudを作ったのもそれが理由だったりするんですけどね。

　あ、そうそう！　1つ重要なことを言い忘れてました！

　それは、「JamCloudは音楽だけじゃない」ってことです。YouTubeには音楽以外にも、たくさんの動画があるわけです。たとえば金融だとか、教育だとか、なんだとか。そういう動画を使って、どんなコミュニティを作るのもユーザーの自由ってわけです。「TED TALKS」の部屋をつくって、TEDについて語ったりしてもいい。MBAの部屋をつくってビジネスアイデアを語ってもいい。音楽はそのいちばん分かりやすい例というだけ。それはturntable.fmみたいにMP3ベースじゃできなかったことだと思うんです。

――　なんてったってJamCloudの画面を開いたとき、「これだ！」って叫びましたからね、ぼくたちは。

スティーヴン　クール！ でしょ？

――　スティーヴン、最後にビジネスモデルのことが気になるんですけど。

スティーヴン　グッド・クエスチョン。だけど、いまは言えない。答えると“コピーされる”可能性があるんです。この業界には似たようなWebサイトがメチャクチャあるんですよ。「chill.com」に、「namesake.com」に、エトセトラ、エトセトラ。ひどいサイトになると、バグも多いし、クラッシュだらけだったりする。サービスの内容も、マーケティング出身の人間が作った“コピー製品”でしかない。新しいものを作ろうっていう気がないんです。でも、こっちは2年間JamCloudだけじっくり続けてきたし、そのしくみにも自信を持ってます。

――　なるほど、切り札はまだ内緒ってことね。

スティーヴン　そう。でも絶対に自信はあるから、期待しててください！

著者紹介――四本淑三

　1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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