全世界のアイデアをビジネスに取り入れる
レノボは現在順調にビジネスの規模を拡大している。国内においては実に8四半期(24ヵ月)連続で市場平均を上回る成長率。2年間で倍のシェアを獲得した。世界市場における数字はそれを上回り、実に7四半期(21ヵ月)業界トップの成長率を維持している。
好調を支える要因としては、大きく以下の3点があると留目氏はコメントする。
- グローバルで通用する価値観を育む社内の文化
- イノベーションとオペレーション効率の両立
- 全社に浸透したシンプルな戦略
1点目はレノボがグローバル企業として、急速に変化していく世の中に柔軟に対応できるという意味だ。本社の所在地は米国。出自でいえば中国(またはIBMのある米国?)、開発拠点は中国、米国、日本の3ヵ所にある。「レノボはどの国に属する企業か」という質問には中々答えにくい。経営陣も多国籍であり、色々な国の人が働き、それぞれの価値観で働きやすい文化や制度作りに取り組んでいる。
留目 「グローバルでオペレーションを展開していれば、グローバル企業かというとそうではないと思います。世界をフラットにとらえるためには、多国籍化=これらを“フェアに判断できる”仕組みが必要です。
今や優秀な人材は先進国だけでなく、新興国からも出ています。新しく革新的なアイデアをフラットに取り込んでいくためには、それぞれの国の事情を公平に眺め、最適な発想を取り入れて行く土壌作りが必要なのではないでしょうか」
こういった土壌づくりのために、レノボでは早くから様々な出身国の幹部がトップマネージメントに従事し、活躍を続けていると留目氏は語る。
ビジネスの効率化と製品の革新を両立する
2つ目のポイントは、コモディティー化が進むPC市場でも常に革新を求めているという意味だ。その象徴がThinkPadブランドである。例えばEE2.0(関連記事)は分かりやすい例のひとつ。大和研究所の開発者が深くかかわり、開発段階からマイクロソフトと打ち合わせながら実現したイノベーションのひとつだ。
スペックには表れにくい良さや、ユーザーのフィードバックを反映した細やかなイノベーションの集大成と言える存在であるのは言うまでもない。
18年間の累計出荷台数が6000万台に達したという発表が昨年あったばかりだが、2011年は1年で1200万台を出荷する見込みで、早々に累計7000万台を超える見込みだ。法人市場でのThinkPadの躍進は好調なレノボを支えている。
一般的にイノベーションとオペレーション効率はトレードオフの関係にあると言われる。
しかしレノボでは、グローバルレベルで最適化した部品調達やサプライチェーンが製造コストを低減。これを革新的な製品を生むための再投資につながるというサイクルが上手く回っている。
また製品単価の下落は、顧客のサポートや製品品質の低下という面に跳ね返ってくることが多いが、その両立には常に配慮している。単純なコスト低減ではなく、ひとりひとりの効率をどうやって上げるかにフォーカスしているのがレノボだと留目氏も話す。
全社に浸透したシンプルなメッセージ
そして最後が、全社に浸透した「Protect and Atack」というシンプルな戦略だ。これは強みは守りつつ、攻めの分野を積極的に取っていくというもので、(一部で考えてそれを落とす)単純なトップダウンではない。
サービスではなく、ハードウェアのビジネスにフォーカスし、その中での強みを追求していく、販売面ではパートナーにフォーカスして、シンプルな販売・マーケティング戦略を練るといった目標を達成するために何が必要かを議論し、各国の担当部署が責任を持って実践していく形だ。
留目 「先進国の市場で言うと、SMB領域のシェアが比較的低いのでここがアタックしていく分野です。コンシューマーも後発なのでまだまだ開拓の余地があります。そのためにパートナーとの関係を重視していきます。IBMのビジネスは大企業が中心でしたが、レノボはハードウェアベンダーとしていい製品作りに集中し、販売面ではパートナーと協力しながら育てていきたいと考えています」