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Veritas Storage Foundationの描くストレージの理想郷

インフラ側の制限を取り払うビッグデータ戦略とは?

2011年09月22日 09時00分更新

文● 渡邊利和

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9月21日、シマンテックはビッグデータ時代に向けたストレージソフトウェアへの取り組みに関する説明会を開催した。同社のストレージ管理ソフトウェアの新バージョン「Veritas Storage Foundation 6.0」が年内にリリース予定となっていることを踏まえ、いわば予告編的に背景情報の説明が行なわれた。

 

データ量増大とシステムの多様化

 説明を行なった同社のシステムエンジニアリング本部 ストレージ&クラスター製品担当 技術部長の星野 隆義氏は、まず市場とユーザーの動向に関する予測データの紹介から話を始めた。データ量の爆発的な増大はすでに繰り返し紹介されている通りで、中でも非構造化データの伸びが顕著だと予測されている点も周知のことではあるが、併せて同氏は“複製データ”の伸びも大きくなる予測であることを指摘している。

 

システムエンジニアリング本部 ストレージ&クラスター製品担当 技術部長の星野 隆義氏

 また、ストレージシステムに関しては、DASが減少傾向にあり、FC-SANはほぼ横ばいといえる微減の予測となっている一方、大きく伸びると予測されているのがiSCSI(IP-SAN)で、NASも堅調に伸び、さらにFCoEも2012~2013年にかけて市場が立ち上がるという。これを受けて、企業ユーザーのストレージシステムはDASかFC-SANという状況から「多様化の時代」へと移っていくと予測される。つまり、今後のストレージシステムを考える上では、データ量の急増に備えるのはもちろん、システムが多様化することで複雑化する運用管理をどう効率化できるかという点も重要になってくる。

 

市場とユーザーの動向と対応策

 ここに、ストレージやハードウェアを扱わず、ソフトウェア専業ベンダーとしてこの分野に取り組む同社の立場が有利に働く部分があるということにもなるだろう。同社では、こうした市場認識を踏まえた上で重点的に取り組むべきテーマとして「ストレージ利用率の向上」「データの最適な配置」「ハードウェアロックインの回避」「管理の標準化」を挙げる。

 

ストレージ最適化の分野でシマンテックが提供する各種機能/特徴

銀行の例に見るシステム制限

 同社は、「ビジネスの成長を加速させる“Data Center Transformation”(データセンター改革)」というメッセージを掲げている。この意味について星野氏は、「従来のシステムは、インフラ側の事情で業務のやり方を制限していた」のだと説明する。同氏は銀行を例に挙げ、かつて銀行では午後3時に窓口が閉まってしまい、預金の引き出し等ができなくなっていたが、これは全口座に対して日々利息計算を行なうための計算時間の確保や、当時のバックアップのやり方がバックアップ中にデータが更新されることを許さなかったことなどが理由であったと指摘。利息計算等をすべて完了してデータを確定したのち、データの変更を禁止した状態で日次バックアップを取るというシステム側の事情によって午後3時以降の預金取り扱いができないという制限が課せられていたのだという。

 

 現在は、オンラインバンキングシステムによって24時間の口座アクセスが実現し、コンビニATMでは深夜でも現金引き出しが可能になっているが、これはシステムの処理能力が向上し、かつバックアップ作業中でもデータの更新が可能になったことでユーザーが望む業務サービスの提供が可能になったということだ。同様の制限はきっと現状のデータセンター上で実行されているさまざまな業務についても存在していると考えられ、こうした制限をデータセンターの変革によって取り除いていく、というのが同社の“Data Center Transformation”が目指すとところだということになる。

 

 Data Center Transformationでは、「徹底したストレージの最適化」「インフラ提供機能、管理の標準化」「ビジネス要求に応じた可用性の確保」「Linux以降、サーバー仮想化の促進」という4つの柱からなる“Service Oriented Storage Architecture(SOSA)”が提案されており、同社の旧ベリタスのソフトウェア群が対応する。中でもストレージソフトウェアの中核となるStorage Foundationが担う役割は大きい。

 

Storage FoundationおよびCluster Serverによって、多様な環境で使われる多彩な製品/技術を統合できる

 ストレージの最適化では、「シンプロビジョニングの利用」「ストレージの階層化」「OS非依存の機能と管理性」といったテーマに重点的に取り組んでいるが、これらはストレージハードウェアから独立したサーバー上で動作するストレージソフトウェアであるStorage Foundationだからこそ実現できる、あるいはより優れた実装が可能になる部分がある。特に、さまざまなベンダーのさまざまな接続形態のストレージシステムを仮想的な単一の巨大なストレージプールとして見せ、統一された運用管理インターフェイスで管理できる点は最大の強みと言えるだろう。

 

 最後に同氏は、年内にリリース予定の「Veritas Storage Foundation 6.0」で予定されている機能強化ポイントとして、「ファイルシステムに圧縮・重複排除機能を業界で初めて実装予定」「複数システムにまたがるアプリケーション群を同時にリカバーする機能を実装予定」「リアルタイムにアプリを監視する機能を実装予定」「物理・仮想、各種OS、各種ストレージに共通な操作性を提供する管理基盤を実装予定」の4点だ。

 

Veritas Storage Foundation 6.0で予定される新機能の例

 いずれも魅力的な機能だが、中でもデータの発生時点で重複排除を行ない、プライマリのオンラインストレージの容量消費を抑制できるファイルシステムでの重複排除はメリットが分かりやすい機能だと言える。いずれも現時点ではまだ慎重に「実装予定」とされている段階だが、予定通りに実現されることに期待したい。

 

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