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NetAppユーザーの商社AがDRで成功したワケ 第1回

相談してみた!

NetAppプロジェクトチームと商社AとのDR作戦会議

2011年10月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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3・11の大震災以降、多くの企業のIT部門は広域な自然災害や長時間の停電を前提としたDR(Disaster Recovery)の導入や見直しを強いられている。商社Aの情報システムでインフラを担当する石川(仮称)にも、上司からDRの見直し命令が下っている。しかし、そもそも現状の把握もままならず、計画立案や方法、目標、コスト見込みまですべてが手探り……。そんな石川が助けを求めたのが、ネットアップのDRプロジェクトチームだ。さっそくその現場を覗いてみよう。

*本文に登場する人物や団体の一部は架空のものです。

商社Aのシステムはデータセンターにあったが

 DRの見直しを迫られている石川がネットアップに行き着いたのは、そもそも商社A自体が、以前からネットアップのユニファイドストレージ「FAS」のユーザーだったからだ。以前は情報系システムのデータだけだったが、昨年から基幹系システムのデータもデータセンターに設置されたFASに格納されている。商社Aにとって、ネットアップのFASはいつの間にか業務を支える屋台骨となっていたわけだ。

 こうした中、今年の3月に東日本大震災が起こった。東北地方を未曾有の規模の津波が襲い、大きな被害が出た。首都圏の交通は麻痺し、原子力発電所の事故により、計画停電という自体にまで至った。幸い商社Aの人的、物的な被害は軽微であったが、情報システム部ではBCP(Business Continuity Plan = 事業継続計画)の大幅な見直しが必須となった。

 とはいえ、未曾有の災害に対応するための計画だけに、設計が難しい。インフラ系を担当する石川は、藁をもすがる気持ちで、FASを導入した販売代理店を経由して、ネットアップのDRプロジェクトに行き着いたのであった。その第1回目のミーティングが先頃行なわれた。その様子を見ていこう。

石川:わざわざお越し頂き、ありがとうございます。さっそくですが、先頃の震災を受けて、BCPの大きな見直しに入っています。弊社はNetApp FASに基幹系のデータまで移していますので、これらの業務データを遠隔バックアップするとか、システム自体を二重化するといったDR施策が必要かなと考えまして、ご相談させてもらおうと思ったわけです。なにやら販売代理店の方から、ネットアップさんは全社でDRに取り組んでいると聞いたものですから。

NetApp 石渡:まずは弊社の製品をご愛顧いただき、ありがとうございます。弊社も、御社のような会社のDRを支援するため、おもに「データ保護」をテーマにしたサイトを立ち上げています。震災後、FAS用の筐体間レプリケーションソフトウェア「SnapMirror」のライセンス無償提供プログラムを提供すると共に、いくつかの特別対応をしてきました。たとえば、ある金融機関においては、震災直後に40TBのデータを海外サイトに移設するというプロジェクトを実施しました。さて、さっそくですが、まず御社のビジネスや石川さんの所属する情シスについてお聞かせ願えますか?

石川:はい。弊社は海外から建築資材や合板を買い付けて、卸売りを行なう専門商社で、本社のほか、日本全国に営業事務所を抱えています。IT管理の企画担当は私含めて3名で、情報システム子会社に運用担当者が10名程度おります。

NetApp 石渡:なるほど。では、業務システムの規模や構成、ビジネス上重要なデータについても教えてもらえますか?

石川:基幹系は販売や輸入、在庫管理を行なう営業システム、会計システム、そして人事システムの3つで、このほか情報系のグループウェアサーバーがあります。基幹システムは3階層のWebシステムで、アプリケーションサーバーやDBサーバーなどは複数台でクラスタ化したり、ロードバランサーなどで負荷分散しています。これら100台近くのサーバーは、埼玉県秩父のデータセンターに設置されています。あとは本社と各拠点にファイルサーバーがあります(図1)。

図1 商社Aのシステム概要

NetApp 小林:ちなみにデータセンターの立地を決めた理由を教えてもらえますか?

石川:本社が東京都の中央区なので、ここが震度6の地震にあっても影響が受けないという立地条件でした。あとは完全免震構造で、非常用の発電装置で3日間以上の自家発電が可能といった条件があり、それに合致したために今のデータセンターを使っています。

NetApp 石渡:とはいえ、DRサイトはないんですよね。

石川:はい。弊社としては、社内のサーバールームではなく、データセンターに業務システムを設置し、きちんとバックアップするというのがDRだと考えていたのですけど、今回の大震災で一気にちゃぶ台返しをくらった感じですよ。

DRのプランはもともと作ってあったのだが……

NetApp 小林:御社の今までのDRはどんな災害を想定していたのですか?

石川:DRはあくまで各拠点の入居ビルが震災や火事で使用不能になったことを想定したモノで、免震構造のデータセンター内の機器はそもそもダメージを受けないという前提だったんです。ですから、本社や拠点のファイルサーバーが使用不能になり、代替機が来るまでデータセンターのファイルサーバーで代用するというのがメインでした。

NetApp 小林:でしたら、今回の大震災はけっこう想定外が多かったのではないですか?

石川:はい。先ほど「ちゃぶ台返し」といったのはまさにそこです。まずデータセンター自体が安全と言い切れなかったという点です。確かに免震構造の建物なので、本震の際も機器の故障はなかったのですが、計画停電があったので、非常用発電機はかなり回したそうです。あれがもう少し長引いていたら、危なかったですよね。

NetApp 小林:先日、お話しを聞いた北関東の会社は、サーバーがすべて倒れてしまったらしいですからね。

石川:弊社も仙台支店でファイルサーバーが使えなくなったので、先ほどのDRの計画に基づいて、代替機を搬入しようと思ったのですが、そもそも一般貨物の運送に時間がかかり、入居ビル自体も安全確認が取れるまで立ち入り禁止でした。結局、本体は無事だったのですが、搬入までは10日もかかってしまいましたね。

NetApp 石渡:ほかのお客様でもそういった「想定外」が数多く起こって、結局BCPを作り直しという会社が多いようです。

石川:そうだと思います。改めて考えると、今回は想定リスクの見直しが必要だと思っています。そもそもデータセンターが使えないことも想定しないといけないし、電力供給の問題についても対応する必要があります。とにかく重要な業務データに関しては、確実に遠隔地に保護しないといけないと考えています(図2)。ただ、どこから手を付けていいのかわからないんですよ。とかくBCPというと、技術面とビジネス面で要件が違うし、私のようなインフラ管理者がDRに対してどう取り組めばよいか、なかなか手がかりがないんです。

図2 今回の震災で顕在化したリスク

NetApp 小林:では、弊社が現在無償で提供している「災害対策無償アセスメント提供プログラム」を試してみてはいかがですか? 弊社が用意した30問程度のヒアリングシートに書き込んでもらうと、DRの現状や改善点をレポートさせてもらうというものです。何件かやらせていただきましたが、現状がわかってよかったというお声も頂戴しています。

石川:それはぜひ試してみたいです。お恥ずかしい結果になりそうですが、まずは現状をきちんと把握しない限り、先は進めないと思っていますので。

NetApp 小林:では、さっそくヒアリングシートの方、送付させていただきます。石川さんのように、DRに対して前向きに取り組んでいる方であれば、必ず役立つと思います。

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 ということで、石川はさっそく無償アセスメントを受けてみることにした。商社AのDRは果たしてどのような評価なのか? そして現在で最適なDRはどんな形なのか? 第2回に続く。

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