国内のIaaSサービスとしては他社に先駆けてスタートしたニフティクラウドだが、昨年からの好調ぶりを維持し、8月末で顧客は900社を突破したという。1000社を超える顧客を獲得すべく新機能を次々と拡充している。
「イメージ配布機能」投入の裏側にあるもの
ニフティクラウドは8月に機能の大幅な拡張を行なった。新機能の目玉となるのが、イメージ配布機能だ。ニフティはIaaSとして提供していたが、「サーバーの立ち上げは5分でできるようになった。しかし、それ以降のお客様のセットアップを短くしたいというニーズがありました。また、パートナーからも自社のミドルウェアをサーバーとセットで提供できないかという希望がありました」(クラウド営業部 新井直樹氏)。とはいえ、ミドルウェアやOSのレベルはニフティだけでは提供できないので、パートナーとの協業でビジネスを進めていくという。
イメージ配布機能の活用シーンは、自社内の開発環境を別プロジェクトで横展開するパターン、クラウドのテンプレートを他社案件にも流用するパターン、そしてカスタマイズされた仮想アプライアンスやミドルウェア、パッケージを販売するパターンという大きく3つのビジネス活用を想定しているという。「環境構築だけではなく、テストの手間も省きます」(新井氏)ということで、スピーディなビジネス展開にはもってこい。マーケットプレイス的な展開の3つめのパターンは、アーク情報システム「SpamSniper on NIFTY Cloud」とディアイピィの「MailArhivaパブリックイメージ For NIFTY Cloud」が登録されており、現在も10社程度と交渉しているという。
「ニフティクラウドも基本機能は揃いつつあるので、IaaSより上の付加価値を提供するために、お客様の安心を高めていくという方向性です」(クラウドビジネス部 渡邊太郎氏)。イメージの作成とイメージの保存で料金が発生することになるが、パートナー経由での配布には料金がかからない。また、パートナーは再配布防止機能も利用できる。
このようにニフティがパートナー戦略を重視するのは、ISPとしての限界を認識していることに加え、多くの顧客とふれあう中で市場のニーズをキャッチしたからだという。すなわち社内のサーバーを一気にクラウドへというニーズより、既存のパートナーがシステム構築のインフラの一部として徐々に導入していくというコンサバティブな需要の方が高いと見ているわけだ。先日発表されたSo-net(ソネットエンタテインメント)へのニフティクラウドOEM供給の話も、こうしたパートナー戦略の1つといえる。
8月の更新では、ほかにも開発生産性の高いSDK for Rubyやカスタマイズやトラブル解決に役立つサーバーコンソールの提供、物理ホスト障害による再起動やディスク障害の通知、ログイン時のパターン認証オプションの追加、CentOS 5.6の提供などを行なっている。また、ユーザーのライセンスを用いて、Oracle Databeseをニフティクラウドで利用できる環境も整えた。
開始した当初はソーシャルアプリのプロバイダーやベンチャーが多かったが、昨今はスマートフォン向けのサービスや情報活用系のSaaSなどを展開するところも増えている。いずれにせよ、インターネットビジネスを展開する企業の現実的なクラウドの選択肢として、顧客をつかんでいるのは確かだ。IaaSとしての基本機能がかなり充実したことで、今年の後半は現在β版のクラウドストレージの展開に焦点を移すという。