タブレットはあきらめない?
そして、「もうひとつ誤解しないでもらいたいのは、今回の発表で、ヒューレット・パッカードが、スマートフォンやタブレット端末をやめるという発表をしたわけではない。この市場は今後の成長が期待される領域。他のOSを搭載したスマートフォンやタブレット端末を販売することになるだろう」とする。
もちろん今回のwebOS搭載のタブレット端末からの撤退は、第1号製品であるHP TouchPadの不振が影響している。
「コンシューマ製品は、発売直後の売れ行きが大きく左右する。その点でみても、見込んだ水準に達したなかったのは確かだった。次の製品を投入するのではなく、webOSそのもののビジネスの仕方、タブレット端末のビジネスの仕方を変えるという選択をした」とする。
PC事業の分離=撤退や売却ではない
一方、PC事業の分離という見方についても誤解があると説明する。
「PC事業を担当しているPersonal Systems Group(PSG)を今後成長させるためにはどうするか。一番いい選択肢はなにか、というなかで、事業分離を選択する可能性についてを述べたもの。ヒューレット・パッカードがPC事業から撤退するというものではなく、HPのなかで継続的に事業を進める可能性もまだ残っている。これからも現在のPC事業に対する投資は継続し、ロードマップにも変更はない」と語る。
PC事業の責任者である米ヒューレット・パッカードのトッド・ブラッドリーエグゼクティブバイスプレジデントは、取引先や顧客に対する文書を送付。このなかで、「すべてのお客様に、HPが提供すべきすべての保証義務を守ることを約束する」、「PSGの将来の事業戦略の再考と、位置づけ判断に関係なく、PC製品、サービスに対する保証を継続する」、「今後もPSGはお客様により満足いただける製品、サービスとサポートを提供し続ける」という3点を明確に打ち出している。
利益率が悪い? それなら国産大手メーカーはやっていけなくなる
また、PC事業の収益性の課題を指摘する声には、2桁台を維持している他の事業との直接比較だけで捉えるべきものではないとの見方を示す。
「米ヒューレット・パッカードの第3四半期(2011年5月~2011年7月)のPSGの営業利益率は5.9%。他のPCメーカーと比べても2倍以上という圧倒的な利益率であり、日本の企業でも、売上高が3兆円規模の会社で、5%以上の営業利益率の会社は少ない」と反論する。
確かに電機大手の決算をみても、営業利益率で5%を下回っている企業が続出している。例えば、パナソニックの大坪文雄社長は、三洋電機およびパナソニック電工との事業再編のなかで、営業利益率5%を事業を存続させるかどうかのガイドラインにすると語っていおり、それに当てはめれば十分合格ラインに達している。
その点では、ヒューレット・パッカードのPC事業は、決して採算悪化に苦しんでいるわけではないというのだ。
ちなみに、日本ヒューレット・パッカードのPC事業の利益率については具体的には言及しなかったものの、「世界のなかでも、健全にビジネスを行っていると評価されている」とコメント。「だからこそ、2011年8月8日から、日本国内におけるノートPCの生産を行えることになったともいえる。ローカルで生産する体制を作っているのは、世界中でも日本だけ」とする。
だが、可能性とはいえ、経営トップから、選択肢のひとつとして「事業分離」という言葉が出たことは、その方向に向けて検討が進む可能性が大きいということの証でもある。
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