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【追悼】「スティーブ・ジョブズ」の軌跡 第2回

新CEOとなったティム・クック氏とは?

ジョブズ氏がCEO退任—アップルはどうなる?

2011年08月25日 18時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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業界各方面の反応

 さて、米国時間で24日の夕方から夜の入りにかけて出た本ニュースだが、各メディアは速報と同時にジョブズ氏CEO退任に関して、過去の実績を振り返る記事を多数掲載している。

 なにせジョブズ氏は、アップル創業者の1人という、シリコンバレーのサクセスストーリーの体現者という枠だけには収まらない。一度離れた後、倒産寸前のアップルに戻ってきて、時価総額で世界最大の企業にまで育て直した生きる伝説ともいえる人物だからだ。数々の逸話とともに、その実績について誰もが多くを語りたくなるだろう。

 例えばWall Street Journalでは、「What Was Steve Jobs’s Most Influential Product?」(最も影響力を与えた、スティーブ・ジョブズによる製品は何か?)と題して、過去30年以上の歴史における最大の功績とは何かについて考察している。ここでは2つ、GUIとモバイルコンピューティングがその筆頭として紹介されているようだ。

 またジョブズ氏へのインタビューをたびたび行ない、ITガジェットの評論家として著名なWalt Mossberg氏は、コラム「Jobs Leaves a Legacy of Changed Industries」(ジョブズは業界の変革という遺産を残した)を執筆しており、その引退直前に「ポストPC」時代の旗手として果たした役割について触れている。

 多くの方が知っているように、いわゆる「パーソナルコンピューター(PC)」という個人が使えるコンピューター製品の時代を切り開いたプロダクトは、スティーブ・ジョブズ氏とスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏という“2人のスティーブ”が開発した「Apple II」というマシンだ。

 そのPC時代をスタートさせたジョブズ氏自らがPC時代に幕を引き、iPhoneやiPadといった「誰もがアイデアを持ちながら、ヒット商品として一般に浸透させられなかった商品」を成功させ、次に続く「ポストPC」時代を切り開いたというのは、感動的ですらある。だからこそジョブズ氏が伝説であり、このポストPC時代の申し子たちが遺産となるのだ。

 また同氏は数多く出版されている自身の伝記について、その内容に不満を持っていることが知られている。だがそんな同氏が昨年2010年初頭ごろから、本人公認で伝記執筆に精力的に動いていることが伝わってきて話題となった。

 伝記の執筆者はWalter Isaacson氏で、TIME誌のエディターやCNNの会長などを歴任してきたジャーナリスト界の大御所として知られる人物。最近では、日本でも話題になったアインシュタインの伝記を執筆するなど、数多くの伝記の執筆でも有名となっている。

 この執筆活動はすでに終了しており、間もなく「Steve Jobs: A Biography」のタイトルでSimon & Schusterから出版されることになるという。

 つい先日には、この本の出版時期が2012年3月より数ヵ月ほど前倒しするというニュースが報じられており、「今回のCEO退任に合わせての措置だったのか」とつい勘ぐってしまう。いずれにせよ、間もなく登場する本人公認の伝記は間違いなくベストセラーになることだろう。

 問題は、同氏のCEO退任後のアップルだろう。いくらクック氏が優秀な人物としても、アイコン的存在の人物がいなければアップルの価値が一段低く見られるのは避けられないと考えられる。事実、この発表を受けて24日の株式取引終了後のアップル株価は、時間外取引で5%以上落ち込んでいる。

 また、ジョブズ氏の有無が製品開発で大きな変化をもたらさなくても、これで製品購入をためらい、アップルから離れていくユーザーは少なからずいるとみられる。同様のテーマで、ZDNetのRachel King氏は「Jobs' departure won't diminish Apple's brand」(ジョブズ氏の退任はアップルブランドを低下させない)というエントリーを執筆している。

 大勢が分かるのは今後1年以上先だとみられるが、そのときジョブズ氏はどうしていて、アップルの業界における位置付けはどう変化しているだろうか?


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