トラブルを起こさないクライマーが競技を制する
3日目には、4機で参戦した神奈川大学チームのうち、江上研Aクライマーが約300mを1分11秒25で走行しゴール。これでも「最高速度ではなかった」という安定した動作を見せ、昨年は参加者を苦しめた300m昇降もクリアできることとなった。
東京電機大学工学部機械工学科藤田研究室、チーム奥澤が同様の条件で次々と昇降し、150~190mの目標を達成した。第1回大会からチャレンジしている社会人チーム、チーム奥澤のクライマー「momonGa-3」はよじれやすいベルトテザーを、伸ばして噛み込みを防ぐ構造を採用。
4段階に分けて丁寧によじれを直していく機能は、「アイロンクライマー」と呼ばれ、基本性能のひとつとして高く評価されると共に「チーム奥澤の次にトライしたい」と他チームの熱い視線を浴びた。
しかし、トライによっては三重折になってしまったテザーを噛んで中途でのスタック(途中停止)もあるなど、基本性能を丁寧に作りこんだクライマーでも今年は厳しかった印象だ。
ロープテザー競技では、日本大学理工学部精密機械工学科 青木研究室プラスがまず昇降を開始。約135mのテスト走行を1分56秒07でこなし、秒速約1.16mという記録を見せた。競技4日目には、450mまで4分19秒とスピードアップ。ロープテザーが今年は好調か、と思わせた。
そして、初参加となる社会人チーム「Aquarius」が540mの昇降で39秒08を記録した。チームリーダー、松本宇音さんの設計したクライマーは、スピードを重視したバランスのよい軽量の機体。1500Wモーターを2機搭載し、自動制御で昇降できる。シリコンゴムローラー6輪のうち4輪が駆動輪、残りが従動輪という構成だ。
全長1400mmという速さを感じさせるデザインでロープテザーへの取り付けも高速にできる。この日、バルーン高度580mと最も高い競技走路を実現した環境で、500mを超える初の高速昇降が実現したことに、参加者一同の期待がふくらんだ。
2回目の昇降では、450mの設定でゴールまで27秒06の好成績を上げ、秒速約16.7m、時速でほぼ60kmという脅威のスピードを見せた。これは、昨年の300m競技に参加したサスカッチュワン大学のロープクライマーを超えるスピードだ。今年度の優勝は、誰もが確信したとおり、チームAquariusが獲得した。
チームAquariusクライマーがスピード記録を達成した際、クライマーに搭載したカメラから撮影した映像。地上が見る間に点になる。風の影響でよじれやすいベルトテザーに比べ、ロープテザーは揺れが少ないのも特徴だ。見ていても酔わないので安心してご覧頂きたい。映像提供:松本宇音/チームAquarius