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ネットに生きる現代の匠“CTO・エンジニア”に聞く 第7回

選手名鑑片手にサーバの負荷分散を徹底する、モブキャスト・北田幸弘氏

疲れないゲーム「モバプロ」を支えるプログラマー

2011年08月31日 09時00分更新

文● 古田雄介

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課金アイテムの焼き畑農業はやらない

── では少しさかのぼって、和智さんにモバプロ誕生の流れを聞かせてもらっていいですか?

モバプロのプロデューサーとして指揮を執る和智信治氏。野球ということで、サッカーよりも若干高めの年齢層をメインターゲットに想定したが、「実際は20歳前後のお客さんもすごく多いです」という

和智 そうですね。まず2010年2月に「Webサッカー」(関連サイト)というソーシャルゲームを公開していまして、その流れで「サッカーの次は野球だろう」と考えました。なので、モバプロの細部には、Webサッカーの運営ノウハウがけっこう活かされていると思います。ただ、スポーツの性質がまったく違うので、システムは一から組み直す必要がありましたね。

 そこから選手の実名を使わせてもらうために各方面と調整したりして、プログラムを組み始めたのは秋口頃。北田が入社する前にいた担当者の戸川というプログラマーが3ヶ月みっちりと作っていきました。

── なるほど。サービスの前例があると、会員数の伸びがある程度具体的に予想できそうですね。

和智 実際のシーズンに連動して3~4月にユーザーが増えることは予想していましたが、ここまでのペースは期待していませんでしたね。ペナントレースの開幕前後に、サービスのほうも会員数が20万人を越えまして、既存ユーザーが新規のユーザーを紹介する動きも強まり、相乗効果的に伸びるようになりました。4~5月は1日で1万人弱のペースで会員が増えた日もありましたね。

Webサッカーの公式ページ。ユーザーはチームオーナーとして、監督と選手、フォーメーションを編成し、各種リーグ戦を戦う

── モバプロは課金率やお友達の紹介率もかなり高いと言われていますが、これは予想どおり?

和智 そこは、我々が「ゲムッパ! ソーシャルエンジン(GSE)」と呼んでいる、長続きするソーシャルゲームの運営ノウハウによる効果があるのかなと考えています。  基本は無料のソーシャルゲームでも、実際は課金で入手したアイテムに太刀打ちできないから、上のレベルを目指すなら有料ユーザーにならざえるを得ないものはけっこうあるじゃないですか。その仕組みだとユーザーは次第に疲れてくるから、1年と経たずにアクティブユーザーが激減するんです。

 そういう焼き畑農業みたいな方向ではなく、無料でもずっと気楽に楽しめて、たまに課金サービスも試してみたくなるような仕組みなら、1年2年経っても付き合ってもらいやすく、結果的に課金サービスを利用してくれるお客さんも増えるのかなと考えているんですよ。実際、Webサッカーは1年半以上提供していますが、現在もアクティブユーザー数に急激な落ち込みはありません。

北田 モバプロは逆に制限を設けているので、課金サービスでチート化するみたいなことはできない仕組みなんですよ。それに、課金サービスを使っても、必ず有力な選手が手に入るとは限りませんし、無料オンリーでチーム編成しているユーザーに勝てるとも限らないんです。采配如何で勝負できるところと、試合自体は結果をチェックするだけという距離感が、長く遊んでもらえる秘訣なのかなあと。そして、アクティブユーザーが多いから、課金してくれる方や友達を紹介してくれる方も増えてくれるのかなと思います。


サーバへのアクセス集中と戦いながら合理化を進めた

── アクティブユーザーが多いと、サーバの負荷を分散したり、ユーザーの要望が多数届いたりと、北田さんの負担がきつそうですが、実際はどうですか?

北田 サーバの負荷は4月が大変でしたね。「そろそろユーザーが増えるのかなー」くらいは考えていましたが、前触れもなく一気に負荷が急増したりするので、なかなか事前対策もできなかったんですよ。当時は入社後まもなくで勉強中だったんですけど、そのトラブルを終息させながらシステムを把握していくみたいな感じで、とにかく右往左往していました。そのおかげで勉強は早かったですけど(笑)

 モバプロは、選手データやリーグの情報などを貯めているデータベース(DB)サーバと、ユーザーのアクションに対応するフロントサーバの二層構造になっているんですが、どちらも複数台に分散させて冗長性を持たせています。それでも想定を上回るアクセスが来てしまって、ユーザーさんがアクセスしても応答に時間がかかるということが当時何度かありまして。

── どんな対応策を打ったんですか? サーバを増やしたり?

北田 サーバを増やすのは一番単純で早い解決策なんですけど、幹線道路も車線を増やすだけでは渋滞が解消しないのと同じで、やはりプログラムもチューンアップしないとトータルの改善にはならないんですよね。

 とりあえず、サーバは当時合計で4台くらいだったのが、現在はユーザーの快適性を重視してDBで12台とフロントで14台の計26台になっていますが、細かいところはインフラの担当者に任せています。私のほうは、それだけハードを増強してもらったぶん、いかに無駄のないアクセスの流れを作るか、トラブルが起きたときにボトルネックを見つけて解決するかというところに意識を集中しています。

── 具体的には、どんなチューニングが多いのでしょう。

北田 なるべくDBサーバにアクセスせずに済む流れにすることですね。これまでで一番多いのはDBへのアクセス集中なんですよ。アクセスが集中しないようにDBの設計には特に気を配った。

 たとえば、モバプロでは、公式試合となるリーグ戦と、ユーザーが好きな時間に実行できるオープン戦があります。このうちリーグ戦はスケジュールを決めて実行しているので、DBサーバの空いた時間を利用して計算させています。でもオープン戦は予測できないので、フロントサーバで処理するようにしました。見た目同じような処理をしているんですけど、実はデータの流れがまったく違うんですよね。

── なるほど。あとはユーザーからの要望ではどんな対応をしているんですか?

北田 一番多いのは、各選手の設定値についてですね。やっぱり、人によって各選手に対しての思い入れが違いますし、本物の選手も時期によって調子の上下がありますから。こういうゲームを好む人は、実際のプロ野球もよく観ていますし、我々よりも圧倒的に詳しい人もいっぱいいます。だから、本当にそこは大変ですね。

 我々としては、定期的なものではないですけど、能力値の見直しは随時検討しています。そのために、最新の選手名鑑は手放せないです(笑)

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