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山谷剛史の「アジアIT小話」 第3回

7万円の高級グラボが中国でバカ売れしている理由

2011年08月23日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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「ネット鉱夫」の登場で売れるビデオカード

 Bitcoinの用途のひとつとして、「依頼者がデータ群から潜在的な顧客のニーズを採掘(マイニング)する『データマイニング』をネット上で依頼し、その作業を代行したユーザーは対価としてBitcoinを貰う」というアウトソーシング仲介ソフトがいくつも登場した。

Bitcoinを両替する淘宝網の店。多くの利用者がいる

 たとえば、「GUI Miner」で検索するとこの類のソフトがあることが確認できる。さらにBitcoinは一般的にはオンラインコンテンツの購入に使えると言われているが、中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」では、早速Bitcoinとリアルマネーの私設両替所が登場。かくしてPCを稼働させるだけで“ながら”でリアルマネーを稼ぐ地盤が完全に出来上がったわけだ。

 つまり「最強グラボを装着したハイスペックPCを起動させて、家に居ながらにしてデータマイニングを請負い、Bitcoinを稼ぎ現金と交換する」ことが最近のトレンドとなっている。

 庶民の所得が高い先進国の人々が安価でデータマイニングを依頼し、所得が低い地域の人々がこれを請け負う。

 中国では、金持ちが依頼するオンラインゲームの経験値やゴールド稼ぎの代行を請け負う人々を「ゴールドファーマー」というが、今回のケースでは「鉱山を採掘」と中国では呼ばれることからさしずめ「ゴールドマイナー」か「ネット鉱夫」と名付けるべきか。

 ゴールドファーマーは中国で主に見られた職業だけに、「ゴールドマイナー/ネット鉱夫」も途上国全体ではなく中国で主に見られそうだ。

 「風が吹けば桶屋が儲かる」でいうならば、Bitcoinとそれ専用のデータマイニングソフトの登場により、中国で今まで売れなかったハイエンドなビデオカードが売れるようになった。

 消費者は「携えれば格好良く、様になる」とノートパソコンやスマートフォンへの傾倒が進んでいたが、「金稼ぎこそ第一」と考える人はハイエンドPCへとベクトルを変えるかもしれない。

経済誌や新聞でも投資的側面から、Bitcoinがここ数ヵ月紹介されている

経済誌や新聞でも投資的側面から、Bitcoinがここ数ヵ月紹介されている

 ここ数ヵ月で突然採掘の話題を中国のIT系メディアで見るようになった。今までは知る人ぞ知るサービスであったが、「ゴールドマイナー/ネット鉱夫」によるゴールドラッシュが起きた結果、データマイニング代行の低価格化が起きそうだ。

 データマイニングが多数絡む業務に従事している人は、一度Bitcoinでデータマイニングをアウトソーシングする最近のトレンドに目を通してみるべきだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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